もう一度、もう一度。
確かめるように、忘れないように、覚えるように



ユースタス屋が帰って来て気まずかったが飯に誘ってもらえて泣きそうなくらい嬉しかった。
言われた通り情けないと言われた顔を洗って部屋へ行くといつものように手際よく料理をするユースタス屋がいて、おれは最近では定位置になりつつあるソファに座って待つ。
テレビも付いてない部屋にユースタス屋が料理を作る音だけが響く中、名前を呼ばれて返事をすればおれはもう
付け上がることしか知らなかった

「うまい。すげーうまい」
「良かったな」

時間短縮の為に薄く切られたニンジンとしめじの入った味噌汁はいつも以上に美味く感じた。
自惚れだろうとなんだろうと、面と向かってユースタス屋の作った味噌汁を毎日食いたいと言った意味が通じてないなんてことがあってたまるか

「ユースタス屋」

ぽつぽつと会話をしながら飯を食った。いつもと変わらないようででもやっぱなんか違う、そんな雰囲気で
食い終わってからお茶を出してくれたってことは、まだおれはここにいてもいいってことで
それに甘えながらユースタス屋に声を掛けた。
「ユースタス屋、おれはタマネギ入った味噌汁は好きだがジャガイモ入った味噌汁は好きじゃねェ」
「…おれはタマネギ入ったのはあんま好きじゃねェけどな…味噌汁が変に甘くなんだろ」
「あの甘さが美味いんだろ?ジャガイモはザリザリするから嫌だあと汁が土の味がする」
「ザリザリ…?土の味ってなんだよ」

心の底から理解できねぇって顔をするユースタス屋にゴボウも土味がする、と言ったら少し納得をしてくれた

「きんぴらゴボウは好きだ。」
「…お前面倒くせェな…なら肉じゃがとか食えねぇんだろ?」
「目茶苦茶煮込んだ肉じゃがは食える。もしくはニンジンと肉だけ食う」
「あぁ、お前んとこニンジン入れんのな」
「…普通は入れねぇのか?」
「風習で違うんじゃねーか?牛肉じゃなくて豚肉入れるとこもあるらしいしな」
「へー。糸コンニャクは?」
「おれは入れる」
「おれも入ってんのが好きだ」
「なら明日肉じゃがな」
「ああ」
「……」
「……ふふ」

会話が途切れてあからさまに顔を背けるユースタス屋に思わず笑ったら、ちっせー舌打ちをして顔を腕で覆っちまった。

「ユースタス屋」
「…うるせぇ」
「おれ、付け上がるぞって言ったよな?」
「…殴られる覚悟はあんだろうが」
「フフ…記憶が飛ばねぇ程度で頼む」

顔を隠す腕にぐいぐいと額を押しつけるとそろりとその腕が下がり面白くなさそうなしかめっ面が出て来る
おれが笑うと文句でも言おうとしたのかユースタス屋の唇が動くけど、音が出る前に塞いでやった
くっつけて直ぐに離すと目が合ってまた顔を近付けたらユースタス屋が目を閉じた。
唇を押しつけると少し押し返されて啄むとちょっとだけ啄み返してくれる。
角度を変えるとユースタス屋も合わせてくれて、頬に手を添えると背中に添う手に服を握られた

「…したりねぇ…」
「ガキが…」
「5歳も違ったらまぁガキだな…存分に甘えられるから気にしねぇけど」

ほっぺたに甘えるようにキスしたら調子に乗るなと耳を引っ張られた。
全然痛くないそれに笑いながら抱き付くと耳の側で溜め息が聞こえておれはとても幸せになった

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