そう、たまたま。
おれが隣りに住んでて、少し面倒みてやっただけ。
それを優しいとか、頼れるとかどう感じようとトラファルガーの自由だ
ただ、勘違いとか錯覚を起してるのだとしたら…



「それは違う、ユースタス屋」
「どうだかな」
「いい加減傷付くぞ…なぁまだか?」
「そろそろ良いんじゃねーか?」
「おし、…よ、と」
「下手くそ」

じゅー、なんて焼きの良い音と香ばしい匂いがする
遅い昼飯に入ったお好み焼き屋は昼時間を過ぎたことと平日と言う事もあってか客も他に2組みくらいしか居なかった

花見に来れば花は咲いてなくて、水族館に行けば休館日。
これがデートだって言うなら散々すぎるだろ

「ユースタス屋が好きだってのは本当だ。それに、んな真っ赤な髪で寝てる時でも眉間に皺寄せてるような奴を母親みたいだとか思わねぇよ」
「話の腰を折りたくねぇから殴らないでおくけどな、今は」
「ユースタス屋がおれのことちゃんと考えてくれるんならいくらでも殴られてやるさ」

ソースの焼ける音と匂いが緊張感も真面目さも吹っ飛ばして行く中、一番真面目もへったくれもないのはトラファルガーのにやけ面だろう

「さて、」
「マヨネーズでおれの名前でも書いてみろ…テメェの顔を鉄板に押し付けてソース塗ってマヨネーズ掛けんぞ」
「…やだなァ、ユースタス屋…おれはただファンシーなキャラクターを描きたいだけだ」

トラファルガーは痣の残る頬を引きつらせて笑い器用にも歪な楕円をしている生地に何かを描いて行く

「見ろユースタス屋、ベポ」
「……」

半端にリアルな白熊を描き上げ満足そうなトラファルガーを見て思う。取り柄ってのは誰しも一つは持ってるもんなんだと

「じゃ、食うか」
「躊躇いもなく…っ」

ざっくりと切り分けるとトラファルガーが肩を落とすが構わず食った

「でも、ユースタス屋」
「あ?」
「頭ごなしに否定したりしねぇのな」
「……」
「ユースタス屋の優しいとこなんだろうけどおれは付け上がるぜ?ユースタス屋と一緒で、おれだってユースタス屋に弟だとか母親代わりしてやってるだとか思われたくねぇからさ」
「…んな風に思ったことねぇよ」
「ならいいけどな。あと、おれはユースタス屋とキラー屋みたいにはなりたくねぇ」
「キラー?」

なぜこの話題でキラーが出てくるのかと首を傾げるとトラファルガー深くは喋る気がないのか話は続けずに肩を竦めるだけだった

「あーあ、ユースタス屋の作った味噌汁毎日飲みてぇなァ」
「…飲んでるだろ、ほぼ毎日」
「フフ、ユースタス屋のそーいうとこにもやもやするんだ」
「どういう意味だ?」
「そう言う意味だ。…ごちそうさま」

また話を逸され、いい加減に濁される話に胸にムカつきが付く。
睨んで見ても目を逸らし続けるトラファルガーに舌打ちをして残ったお好み焼きを頬張った

「…なぁ、ユースタス屋」
「…?」
「母親代わりでなくて、兄弟みてぇなノリでもないおれにさ…ほぼ毎日飯食わせて、面倒見たりしてくれんのはただ友達だからか?」
「…」

口に含んだお好み焼きを漸く飲み込んだ頃にはトラファルガーは丁寧にも伝票を持って先に店を出た後だった
鉄板には野菜やソースが焦げ付いていて、まるで…
まるで、あいつが言い残して言った言葉のようで

おれとキラーのような関係にはなりたくないと言ったトラファルガーの言葉の意味が少しわかった気がした

そして、おれについてもやもやすると言ったトラファルガーの言葉の意味も…

「軽はずみに言うもんじゃねぇな…」


それでもあいつが食いたいって言うなら
味噌汁でもなんでも作ってやろうと思ったのは確かだ。

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