世間は狭い

乙男の心得と言う前の話で出てきた友達の付き合いで塾…の友達とは多分ご察しの通りだと思いますがペンギンで、ローにプレゼント送ったアホな友達はシャチです。
そして、実はこの塾の講師にキラーさんがいます。(掛け持ちの副業で講師やってる)勿論キッドの友人と言う設定ですが、キッドはキラーが塾講師もやってるのは知っていてもどこの塾でやってるのかは知りません。と言うか、キラーはちゃんとここでやってるよって教えたはずですけど覚えちゃいねェよそんなこと…ってな感じです。まぁキッドと関係ないもんね、今さら勉強するはずもないキッドですし。
で、ペンギンとキラーは密かにお付き合いをしています。キラペンです。
ペンギンは親に言われいやいや塾へ…苦し紛れに「一人じゃイヤだ!ローも行かなきゃおれも行かない」と親に反抗したけどなんやかんやでローも塾へ行くことになり渋々。
最初は本当に渋々で、ローと同じ月・火・木で通っていましたが、講師のキラー先生…教え上手で人見知りするきらいのあるペンギンにいい距離で接してくれ、好感が持てる先生でした。学校の先生よりキラー先生の授業がいい…そう思うまで時間はかかりませんでした。
恐らく、キッドとローのお付き合いよりも早くキラーとペンギンのお付き合いは始まっています。

ペンギンはなぜかヤンデレ気質にしたくなる…(ほんとなんでだろう?)言葉に出さずとも、キラー先生好き好きオーラは出ます。そしてキラーは察しがいいので初めは「まずい」と思いあくまでも生徒、みんな分け隔てなく接しているよ、と言うのを大げさにアピールして先に牽制を仕掛けます。
多分、女子生徒からのアプローチはこれまでも幾度となくあったけど上手く躱してたキラー。モテるのは自覚してるし、それなりに遊びもしますが先ず生徒には手は出さない良識ある男です。そもそも制服着た子って言うのは教え子でお客さんなので可愛いと思っても性とはまったく結びつきません。
でも、ペンギンは自分が特別じゃないってことに本当に腹を立てるし「ねぇ先生」「あのさ先生」「先生…」「先生」最初の人見知りはどうした!?ってほど自らキラーを訪ねてくるようになった。
で、いろいろあって…キラーは元から面倒くさいタイプの人間が何やかんやで好き(面倒見たくなる)なので折れます。ただし、塾に通ってる間はただの講師と教え子だぞ、と念押しの元。
ペンギンは心の支え的にも「キラーと恋人」って関係が欲しかったのでそれだけで結構満足です。受講中に一瞬だけ目が合う、それだけで満たされます。そんな関係の日々。
ペンギンもキラーも、誰とは言わずとも、恋人がいるってことさえ誰にも教えていませんでした。
ペンギンはローに言ったところで「ふーん」と興味なさげに言われるんだろうけど(でもローは内心では恋人羨ましい!こんなデートしてお揃いしてお弁当作ってってしたい!とかジタバタする)、秘密の恋愛って楽しい。そんなペンギン。
キラーはキッドに…言えない。教え子に唾付けてるとかそれが男の子だとか言えない…!絶対爆笑したあと「引くわー」とか言ってエロ教師呼ばわりしてくるに違いない!(偏見ではなく、教師の立場でとかエロ漫画かよワロスwwってからかわれるから)

と、ペンギンとキラーが思い思いに過ごす頃。
キッドとローが恋人になりました。ローは脳内お花畑で買い集めた少女マンガを見ては溜息をつきます。おれもユースタス屋とこんなことしたい…でも男がこんな漫画見て胸トキめかせてるとかユースタス屋が知ったら……と悩める日々。
キッドは高校生って男も女も夢見る時期だよなー。と先輩や後輩と付き合った自分の高校時代を思い返し青春万歳とか思ってんだろう。
そんで、キラーと飯に行ったときに「お前最近どーよ。おれ恋人できたぜェ」とかって煙草吹かしながら。
キラーはギクッとしながら
「まぁ…それなりに充実はしているが。今度はどんなタイプだ?」
「あー?それ恋人いるってことか?へへッ…それがよォお前ぜってー笑うぜ?こーこーせー。しかも男だ」
「…はあ!?」
「もーマジこれが可愛いんだわ…たぶんまだ童貞じゃねェかな?おれ、初恋の相手っぽい」
からからと笑いながら話すキッド。恋人(ロー)をバカにしているのではなく、高校生の男の子相手に真面目に恋愛しようとしている自分が可笑しいのです。
この時点で、キラーに自慢したいくらいにはローのことが可愛いキッド。
「…こ、高校生って…」
「まー…あいつにしたら若気の至り化もしんね―けどなァ。いいんじゃねぇ?今はお互い楽しいわけだし」
「お前から手を出したのか?」
「まだまだ。キスくらい…つーか向こうから告ってきたんだぜ」
「そうか……」
この頃、まだロキドは致していませんし、キッドさんはいずれローを抱く気でいます。ってか思うだろ…って感じです。ここから数週間後の大誤算をキッドはまだ知る由もありません。

一つ二つ、季節がめぐった頃。キラーもペンギンもちょっと気を抜いてしまいました…塾の最後の時間割が済み、大抵の生徒は直ぐに帰り支度をし帰って行きます。
ペンギンはちょっと居残りしてわからないところを教えてもらう(名目)と、キラー先生の所へ。怪しまれない程度に、少し向こう側にはまだ他の講師や生徒がいるけど…手を握り合って、コソコソと……。
見て、しまいました。そんなペンギンとキラー先生の姿を…ローくんが。
「…!!!(先生と禁断の恋!?)」
学校でペンギンに借りたノートを返すのを忘れてたので、一度ビルから出たのに思い出して引き返してきたロー。普段なら見て見ぬふりでそっと引き返すところですが友人の、しかもそんな乙女漫画チックなシチュエーション…観てるこっちが赤面ものです。狼狽えてしまったローが逃げる前にふと顔を上げたキラーの視界に入ってしまいました。
キラー「!」
ペンギン「!?」
ロー「!!!」
キラーがしまったと狼狽え、ペンギンがそれを察してばっと振り返りローと目があい、キラーとペンギンの視線を受けて逃げ遅れた猫の様に震えます。
あーー、と頭を抱える3人。ですが、ペンギンとキラーの行動の方が早いでした。2人でローを引っ張り囲みます。
「ロー!」
「いや…ノート返すの忘れたから…そういうつもりじゃ…」
「…はぁ…いや、ペンギン…おれ達が悪かったんだ。トラファルガーを責められない…寧ろ、トファルガーでよかった…」
羞恥心からか真っ赤のペンギンに襟元掴まれガクガク揺すられるロー。ペンギンに釣られて赤面しながら冷や汗のローの無意味な言い訳。大きなため息を零し、浅はかな行動だったと反省するキラー。
「〜…ロー、誰にも言うなよ」
「…言わねェよ…」
「すまないトラファルガー…」
微妙な空気が漂う中、これ以上残ってもいられないので外に出るペンギンとロー。
「……言わないから、安心しろ」
「…うん。…その、ごめん…ローは、そういう奴じゃねェよな」
帰路をとぼとぼ歩きながら、ちょっと照れくさくて…
「…いいと思う」
「え?」
「悪いことじゃねェよ……おれも、居るから…」
「恋人?」
「うん…。年上の」
「!…だから、最近休みの日付き合い悪いんだな」
「……」
お互い、カミングアウトをしてちょっとだけむず痒い。
「でも…塾ではやめとけよ…」
「うん…そうする。でも塾でしか会えないんだからしかたないだろ?」
「デートしねぇの?」
「他の生徒に合わなさそうなとことか…たまに連れてってもらうけど」
「まー、生徒と付き合ってる教師がいるってなったら都合悪いだろうしな」
「そうなんだよ…」
恋の悩みを相談しあえる友人になれて、まぁよかったよね。


一方…。
「急に呼び出すんだもんな」
「悪い…」
「ま、いーけど…どうしたよ?」
「…お前、高校生と付き合ってるとか言ってただろ…まだ続いてるのか?」
「おう。続いてる続いてる…もーすっげーラブラブ」
「気を使うことって多くないか?周りとか…」
「そーでもねェけどな…相手が気にしてねェみてーだし普通に手ェ繋いだりして歩くぜ?つーかそこの通りの○ビルあんじゃん。あそこの塾に通ってんだよなー。いま見てきたけどもう帰ってたっぽい」
「…知ってる。おれの行ってる塾じゃないか」
「へ?そーだっけ。つーか世間はせめぇなァ」
「そうだっけって…教えただろ」
「んなもんいちいち覚えてねえよおれ関係ねェし」
グビッとビールを飲みキッドは「あー、なら」と、
「ローって知ってる?お前の授業とか受けてんのかな…2年なんだけどよ」
「ロー…」
「トラファルガー・ローっての」
「トラファルガー・ロー!?」
「うお!?」
ガタッ、とテーブルが揺れ浅いさらに盛られた枝豆が幾つか零れ落ちました。長い前髪のせいで見えにくいが、その奥の目をかっぴらいている様が隙間から伺い見えてなかなかに怖い。キッドは「こえぇよ!」と突っ込みを入れながら、キラーの反応に首を傾げます。
「な、なんだよ…あいつ問題児かなんかか?」
そーは見えないけど…と、零れた枝豆を拾う。
「いや…本当にトラファルガーが相手なのか?」
「おう。…これ、こいつだろ?」
「……ああ…」
キッドはローの写メを見せてお互いの言うローが同一人物なのを確認する。
キラーは頭を抱えてテーブルに肘をつきました。
「おい…なんだよその反応」
「ほっとした……」
「はあ?」
「見られたんだ」
「なにを」
「トラファルガーに」
「ん?」
「……恋人といるとこ………」
「…ああ??」



「……お前………生徒に手ェだしてたの?」
「出してない!…まだ、…清い仲だ」
「へぇ…え、おれに感化されたとか言わねェよな?それだったら引くぜ」
「違う…お前が恋人できたと言う前から一応もう…」
「あん?なんだ…だからあんとき誤魔化してたのかよ」
なるほどねー、とキッドは唯頷きました。そりゃ言えねェわけだ…とつぶやきながら。
「まー、ローは多分言いふらさねぇぜ?」
「ああ…それは、わかってる。それに恋人とトラファルガーは仲の良い友人のようだから」
「え、マジかよ。すげーな…世間狭すぎ」
「ほんとうにな…」
「ローの友達…もしかして一緒に塾入ったって奴か?」
「多分そうだろうな。そんな話を聞いた」
「ふーん、ローにも話聞いてみっか」
キッドは楽しそうに笑って、ローの友達の顔を見たいと思っていたところに更にキラーの恋人でもあるとか、何が何でも見知っておきたいとか思いました。
「かわいー?」
「まぁ…。そう言えば、おれもトラファルガーと話をするがお前の言うような可愛い高校生とは違うような気がするけどな?彼はクールで格好いいと評判があるし…」
「それな」
「?」
「学校とかでのあいつって知らねェからさ…おれの前とではだいぶ違うんだろーなーって思うぜ」
「そんなものか」
「おう…確かに可愛いんだけどな。やっぱ男の子だった」
「は?」
「食われたもん」
「!!?」
この日居酒屋の営業時間いっぱいまで2人は延々と語り合ったと言います。



後日

「お前ペンギンくんってのと友達なんだろ?」
「なんでユースタス屋がペンギンを知ってるんだ?」
「おれ、キラー先生と友達だぜ」
「!!?」
「世間は狭いよなー」


4人で顔合わせとかもいつか書いておきたいね。

   

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