乙女患い2

乙メンローの相手のキッドさん。ローと付き合ってローが身の回りのことをしてくれるのをいいことにすぐに合鍵渡してそのままです。
家に勝手にローが上がり込むのなんて気にしません。気にしないどころか数日のうちにもう帰ったらご飯用意されてるとか、掃除行き届いてるとか、洗濯がされてるとかが普通になってきました。
ローも恩着せがましく「やっておいた」とは言わないのでキッドさんはダメ男ぶりを発揮して何にも気づかないし、ローにも適当に「さんきゅー」ってなもんです。
休日の前の晩。キッドさんは同僚と遅くまで飲み歩き(姉ちゃん侍らすお店なんかにも行ってきた)、帰ってきて寝たのは午前様もいいところでした。
と、ローが朝9時くらいにやってきてもキッドさんは幸せな顔してぐっすりおねむ中です。
ああ、ユースタス屋ったらまた遅くまで飲んできたんだろうな…ベッドにはパン一で寝てるキッド。ちょっとむらっとするけど、脱ぎ散らかした服を拾い集めて洗濯します。
シーツも洗いたいけど2回目の洗濯でいいか、ユースタス屋寝てるし。と、キッドのための朝ごはんを作りつつ。
掃除機掛けるのはキッドの邪魔になりそうなので目に付くごみを拾ってコロコロを掛けつつ…

「…おう、来てたのか」
「おはようユースタス屋」
「はよ…あー…頭重いな…」
「そんなに飲んだのか?」
「店、3〜4件行ったしなァ」

と、何故かその場で最後の砦のパンツまで脱ぎだすキッドさん。何をしてらっしゃるんです?ああ、お風呂ですか…お風呂場で脱いだっていいのよ?脱衣籠にそのパンツを入れてくれたらよかったのよ?
そう思いつつ、言わないローは脱ぎたてほやほやほっかほかのキッドさんのパンツを拾っておきます。後で洗うために。
そんでタオルを首にかけたまま全裸で風呂場から出てくるキッドさん…ああ、気が利かなかったおれが悪い。
着替え出してなかったもんね…と着替えを出してやるロー。キッドさんは風呂上りだし暑いつって汗が引くまで服は着なかったけど。
「お前さ」「うん?」朝だか昼だかわからないご飯を用意するローにキッドは重たい頭をフラフラさせながら
「どっか遊びとかいかねェの?天気いいっつーのに」
「それはユースタス屋にも言いてェけどな」
「おらぁいいんだよ…つーか二日酔いには天気良すぎんのって辛すぎる」
なめこの味噌汁すすって、ああー…と親父くさく唸るキッド。胃に染み渡る…美味い。

「別におれの世話しに来なくとも…」
「おれが好きでやってんだけど…迷惑なのか?」
「それならいいんだけどよ…」

キッドがそうさせている、とも言えるけど通い妻よろしくやってるローにキッドもなんか心苦しいというか…いや、おれが悪いんだけど。わかってるんだけどそれくらいで心入れ替わるような奴だったら今のおれはまだもっとマシな男だった筈で。そんなことを胸の中でぶちぶち言いながら。
「味噌汁おかわり?」
「あ、ああ…くれ」
あー、もう…そんな味噌汁のおかわりくらいで嬉しそうにしないでくれよ。可愛いな…女だったらと思わなくもねェけど…。

「なんだこの音…洗濯機か?」
「自分の家の洗濯機の音もわからないのか?」

洗濯が終わったと告げる音。意識して聞いたのは久しぶりだ。自分でもたまにしなければ済まない洗濯なんて気づけば終わっているし、いつ終わったかもわからない。
ある日洗濯しようと蓋を開けたらいつ洗濯したのかわからない脱水が終わったまま干からびた洗濯物が入っていたことがもう何度だってある。
ローが丁寧に皺を伸ばしハンガーに干していく。「悪ィな」なんだか考えれば考えるほど、この場限りのことだが本当に罪悪感がわく。
「?別に…ユースタス屋の洗濯物やってるとき、おれ結構幸せっつーか…」
はにかんで言うローに、キッドは胸を打たれた。それがお前の幸せだと言うのか…!?もっと、もっとこうなにかあるだろ…!
漢キッドの沽券に響いたというかなんというか…おれのパンツを干すことくらいにしか幸せを感じられないとかおれの恋人カワイソ過ぎるくないかこれ…と、流石に胸が痛くなりました。

「ロー、来週も日曜は朝っぱらから家にくんのか?」
「そのつもりだが…」
「ネズミの国か?」
「…?」
「なんでもいい、どこでもいい…連れってやるから行きたい場所言え。デート行くぞ」「!」

デート!?その響きにきゅんっと胸がときめくローくんです。胸を両手で押さえてうれしくてにやけるのを堪えながら
「で、デート…」
「おう。来週の日曜」
「ほ、本当か?約束?」
「ああ、約束する。連れてってやる。どこがいいか考えとけ」
「ネ、ネズミーでいい!」
「おう。決まりだ」

あー!なんて嬉しいッうっかりキッドのパンツ(洗濯済)に顔を埋めて喜ぶローくん。キッドもそのローを見てやっと男の甲斐性を果たせた気分になります。本番は来週だけど。

「おい、早く洗濯物終わらせてこっち来い」
「洗濯終わったら掃除…」
「んなの今日くらいいいだろ」

ベッドにローを引っ張り込んで、あーもー健気で馬鹿可愛いと撫でまわしてキスして可愛がるキッドさん。
よしよし、今日は家ン中で出来うるだけの幸せをお前に見せてやるぞーと、もうローたんが蕩けるくらいのことをしたらいいよ。

ロキドですよ。


   

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