Tooth fairy

中坊キッドくんとかの成長過程とか書いてて、他にどんなイベントあるっけ?と考えてたら歯の生え変わりとかありますね。
キッドくんは虫歯なさそうです。なんか3歳までに親と食べ物を一緒に(箸とか食べかけとかを共有)しなければ虫歯にはならないとか言われててキッドはそう言うのがなかったから虫歯菌を貰わなかったんだろう。
6歳ごろからだろうか?歯の生え変わりって。
キッドも歯がゆくなったりして口をうにうにさせたりするでしょうね…。


そんな、ある日。おやつ食べていたら前歯が抜けてびっくりのキッドくん。

「わにっ、わに!」
「なんだ」
「たいへんだ!『は』とれたっ」
「…はぁ?」
「『は』!」

小さな指につままれた小さなそれを見せられて、鰐が目を丸くします。

「口開けてみろ」
「あーっ」
「…前歯だな…」
「どうしよう!?」
「また生えてくる。放っとけ」
「はえる?」
「ああ」
「ケーキたべたら、は、とれたからびっくりした!」

本当にびっくりした顔で報告してくるキッドに、そりゃそうだろうな…と話を聞く鰐。

「よく飲みこまなかったな」
「(飲みこむまで)あとちょっとだった」
「ふっ(神妙な顔で言うキッドに笑いをこらえきれなかった)…その内他の歯も抜けてくるからな。注意しろよ」
「ちゃんと あたらしいの はえる?」
「すぐに生える」
「ん!」

前歯の1つが抜けたちょっとおまぬけな顔でにこっと笑うキッドくん。これはこれで愛しさが湧いてくるなと思いつつキッドの頭を撫でます。

「でも は どうしよう」抜けてしまった小さなそれを掌に乗せてキッドは首を傾げます。いらないのはごみ箱ポイすればいいのだろうか?
「……今日、枕の下にそいつを入れて寝てみろ」
「?」
「いいことがある」
「うんっ」


その晩。まだ小さいので鰐やドフラと一緒に寝るキッドくん。今日はドフラのベッドで寝ています。
ドフラと一緒に入ったベッド。鰐に言われた通り抜けてしまった乳歯を枕の下に入れてすよすよと今は深い眠りの中。
ひそひそと声を殺した囁きが暗がりに聞こえてくる。

「良く寝てるぜ…ちょっと触ったくらいじゃ起きねぇだろうよ」
「おい、頭支えてろ」
「フッフッフッ…こんな妖精がいたらたまらねぇなァ」
「……」

ドフラがキッドの頭を支えそっと枕を抜き取ると、小さな粒を見つけて失くさないように拾い上げた。

「いいか?」
「ああ」

枕を元通りに戻しキッドの頭をそっと枕に帰してもキッドは気づくことなく寝息をたてていた。


「起きろよー、キッド」
「ぅううん…」

翌朝。ドフラに起こされてうにゃうにゃ言いながら起きるキッドくん。寝癖で髪の毛の量が割増に見えます。
寝ぼけ眼をこしこししつつ、あ。そう言えば「は」どうなったかな?
「…!!!」ころん、と枕を転がせば昨夜置いた歯の代わりに王冠が。口をあんぐりと開けて、目を丸くしているキッドくん。

「『は』が おうかんに なってる!」

目をキラキラにさせて、キッドは小さな王冠を手に父親たちの元に行きます。

「わに!ドフィッ」
「どうした」
「いいことあったか?」
「あのね―…!」

朝陽に負けないキッドの笑顔を見て、親父達もやんわりと笑みを浮かべるのでした。



・その夜のこと。
「しかしよ…。妖精が歯を持っていくのは知ってても、その歯をどうするかまでは知らねぇんだよな」
「…ああ」
「どうすんだ、それ」
「……」

キッドをベッドに残し部屋をでた鰐とドフラ。妖精の役割を果たした親父達が眠るにはまだ少し早い時間です。
鰐の掌に乗るキッドの乳歯をどうすればいいのだろうかと酒を交わしながら考える。
昔から、抜けた乳歯は枕の下に入れて寝ると妖精がやってきて歯を持っていく代わりにお金やプレゼントを置いて行くと言われている。
初めは不思議な出来事に喜んだものだが、それも回数や歳を重ねるうちに妖精の正体はいずればれる。それは、いいのだが。
問題は新米妖精もその歯をどうするべきか悩むという点。

「取っとくか」
「全部生え変わったら、また祝いだな…」

取りあえずは小瓶に入れられたキッドの歯を酒の肴に、親父達の夜は更けていくのであった。

そして、専用のケースを誂えて鰐の書斎のどこかにずっと保管され続けるのである。


これから歯が抜けるたびに、妖精さんに変身する親父達です。どうしても贈りたいと思っているプレゼントはあらかじめ用意しておくだろうけど、お金だったり、不思議な物だったりいろんなものに交換されるのではないでしょうか。
今回、初めての乳歯の生え変わりには鰐が急いで用意しました「王冠」です。
でも大きなものではなく小さなチャーム。
王冠は「正義・名声・富・栄光・美」と言った意味が有り力を与え幸運と成功を呼び寄せてくれる…んだそうです。
それを含めて、鰐は一番最初のプレゼントを王冠に選んだのではないでしょうか。誕生日に親から子に与えるプレゼントではなく、妖精がキッドに与えたその品。
鰐にとっては様々な思いが込められてることだろうと思います。キッドには、鰐に拾われたと思わずに自分で勝ち取った運命だとそんな風に思っていて欲しい…そんな私の願いも込めつつ。


地域によって様々かと思いますが、よくある日本式の上の歯は下に、下の歯は上に投げるのではなく中坊シリーズはアメリカ・その他で行われるものを取り入れてみました。
一度考えたのは、上の歯が抜けたなら会社の屋上行って、そっから遥か下の地上に投げると言うすっごい勢いで永久歯がズバーン!と生えてきそうな(笑)のを考えていたのですが、彼らの生活を考えるとキッドの乳歯も大事にしそうだなぁとか思って。
キッドはこれから歯が抜けるたびにわくわくして寝るんだろう。お金に変わってたらきっと使わずに取っておくし、また何かのモチーフなら鰐に大事に保管しておく方法を教わって大事に大事にするはず。誕生日と同じ日に抜けたらメッセージカードになってて読みやすい文字で書かれたそれらに嬉しくなって、やっぱり大事にするんだろうな。
おもちゃのミニカーは遊ぶより、親父達の酒瓶が並ぶ棚にちょこんと並べて偶に眺めたりするんだろう。
親父達も言ってたけど、全部抜けて、全部の歯が生えそろったらお祝いだね。
その内にきっと妖精の正体はばれるだろうけどキッドは親父達妖精がなにをくれるのかと楽しみにしてただろうな。
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