それはお前が恋人だから

愛しの小悪魔の没部分です。
キッドくんが自身の通う中学校の女子の制服着ています。そして現在ロー運転する車の中。
ローに似合う、可愛いと褒められて気分は浮かれモードのキッドくん。
ローとこの格好でデートしたいなぁと思いつつ。


「なぁ、この格好でシャッキーの…」
「ダメだ」
「…まだなんも言ってないっ」
「ダメ」
「むーっ。ワイヤーと話したかったのにッ」

足を組み、腕も組んでフン、と窓の方に顔を背ける恋人を横目に見る。シャッキーの店とは、昼間は喫茶、夜は酒を出す店だ。個性的な従業員の揃う中、今出たワイヤーと言う従業員はなかなか奇抜な格好をした男だ。キッドはワイヤーがエナメルのホットパンツに網タイツと言う出で立ちでいた時に会っているせいか、キッドはワイヤーのことをよく覚えていた。

「約束しただろ?シャッキーの店に行くのは?」
「……」
「キッド」
「昼間だけ、だろ…面白くないじゃんか」
「お前があの店を夜に楽しむのはまだ早い。どうしても行きたいならお前の親父に連れてってもらえ」
「そんなの絶対連れてってくれねぇしっ」
「そうだろう?お前の親父が連れていかねェ場所に、おれも連れては行けねェな。ドフラミンゴが連れていかねェんだから尚更だ」
「…なんでダメなんだよ…えっちな店じゃねェのに」
「あそこは夜になれば酒を楽しむ店だ。酒を飲めない奴が行くのはマナー違反」
「前(幼少期)は行ってたのに…」
「お前が小さくて分別もつかねぇ頃だったからだ。いまは違うだろ?そんな格好もしてるんだから何があっても文句言えねぇぞ」
「でもっ」
「どうしても行きたいなら、おれの恋人をやめてからにしろ。そしたらいくらでもお前の好きな店に連れて行ってやるし、お前の親父達もきっと文句は言わねぇさ」
「…ッ!?」
つい強い口調で吐き捨ててしまったローは広い路肩に車を止め、少し苛立った様子で煙草を咥え火を灯す。
一口吸い込むとふーっとため息とともに紫煙を吐き出した。
「……。一つは、お前がまだ大人じゃないから連れて行きたくない」
苛立ちを押さえながら、ローは言い含めるように言葉を繋ぐ。
「確かにな…シャッキーや顔見知りが店に来いって言ってくれるのは本心かもしれねェ。けどな、他にも客はいるんだ…酔って気の大きくなってる奴も飲みに来てる場所にお前が居てみろ。そういう店じゃなくても勘違いして手を出してくる奴がいるかもしれねいだろ?」
「…っ…ふ…ぅ」
「手は出さなくても、もの珍しそうにお前を見る視線にもおれは耐えられねぇな。だがお前を連れて歩く以上は見せつけてるのと一緒だ…見るなと言ったところでそういう場所にいるおれたちが悪いんだ」
キッドを見れば、恋人をやめろと言ったのが効いたのか目に涙を溜めてうつむいている。
「……悪い。行き成り言う言葉じゃなかったよ…だけどな、おれだって恋人のお前がやらしい目で見られたりするのは嫌なんだ。だからお前がおれの恋人である以上は夜の店には連れて行きたくない…意地悪したくて言ってるんじゃねえんだよ」
ついに頬を伝い始めた雫をローは困った顔をしながら指の腹で拭ってやる。静かな車内にキッドのしゃくりあげる小さな声。
「お前が酒を飲めるようになったらシャッキーの店でも、洒落たバーでも…どこにでも連れて行く…それは約束するよ。でも、今は我慢してくれないか…?おれはお前と恋人をやめたくない」
「ロっ…ぅうー…っひ…ぅ」
「悪かった…そんなに泣かないでくれ…」
「っく…ぅ…ロぉ゛…ごめっなさ…やめるのっやだぁ…ふ、ぇ…ぐずっ」
「…うん。おれも嫌だよ…わかった。今のはなしにしような。シャッキーの店に行こうってのは、おれは聞かなかったことにする。だからもう泣き止め」
キッドの頭を抱えるようにして抱きしめ、背中を撫でながら宥める。キッドの手が背に回り、ローのスーツをくしゃくしゃにしながらしがみついた。


「子供だからだめ…って、ローも、親父たちも言うからいじわるだと思ったんだ」
ローの住むマンションの駐車場から、キッドはローに抱かれ部屋までの道のりを運ばれていた。泣き止んだものの、まだぐずついているキッドを見かねたローが、機嫌とりにと甘やかして抱っこしているのだ。
キッドはローの肩に頬を埋めながら、涙でぬれた声でぽつぽつと話した。
「おれだって…ローが、一人でそーゆー店に行くの…やだ」
ぎゅっと握られた襟元。ローは恋人の言い分ももっともだと理解して、そして静かに笑った。
「行ってないぞ?」
「…?」
「シャッキーの店には何度か行ったけど、仕事の話ついでに飯食っただけだ。車で行くから飲めねェし…キャバクラとか接待くらいでしかいかねえ。バーも、1人じゃいかない…勿論、女と行くこともねェよ」
「……ほんと?」
「嘘ついてどうする。おれには恋人(お前)がいるんだぜ…それに、煩いところじゃ飲んだ気にならねぇし、気に入りもバーもあるがそこはお前の親父もたまに来る」
「……そっか」
「安心したか?」
「…少しだけ」
「フフ…それならいい」
帰宅した部屋でも、まだ離れようとしないキッドをそのままに、ローはキッドを抱きながら小さな子にするように体を揺らした。
「今度、昼間にシャッキーの店に行こう。気に入りのバーもおれの知り合いがやってる店だ…頼めば昼もやってくれるし、ノンアルコールのカクテルもある。一度行こう…おれも、あの店には通いたいんだ」
「うん」
少しずつ、機嫌の戻るキッドの頬にキスし約束をした。



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なんて言う、話でございました。
没部分と言っても、「あそこは夜になれば酒を楽しむ店だ。酒を飲めない奴が行くのはマナー違反」の所までしかありませんでした。
以降はいま付け足して書いて行ったものです(構想はあった)。
で、お分かりのように女装関係なくなっています。本編でもこのいざこざ話を書くと女装の意味がなくなるので…カットに。
恋人だから、みすみす危ないところに連れて行きたくないローさんでした。18歳くらいになればちょっと早めですが連れて行ってくれるようになるかもしれません。
それに、どう見たって子供だからいくらローの恋人だと言ったところで「まだ子供じゃない」って言われて傷つくのはキッドなんですよね。そんなキッドもローは見たくないし…。なので、キッドが見た目にもちゃんとした男になったらいいんです。
他の男に力負けしないくらいのキッドだったら、ローだってどこへでも恋人を自慢しに連れだすよ。ローは悪い大人だからキッド酔わせたりもするよ。ローの前だから酔ってもいいんだよキッド。友達同士で飲酒して酔っ払いでもしたらもう大変なことになるからね。ローに軟禁されるかもしれないよ。

でも、キッドが夜に行きたがるのもわかるローです。恋人が夜にお酒を出す店に行くって言うのは気になるもんね。
どんなところだろうって、特にキッドくんはまだ未成年だから余計にそう思うのかもしれない。
だから、ローは夜はダメだけど昼間は連れて行ってくれると思う。ローの譲歩だね。

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