リップケア 1

空気の乾燥する季節ですね。中学生って男の子の方が色めき立つような気がします。女の子はもう小学校高学年頃からそんな気がある気がしますが。
細々した、香水とかなんだとか財布にコンドームとか言うおしゃれに目覚めますが、リップクリームなんかもその1つではないでしょうか。中坊キッドくんなんかは特にローさんとのチューなんてものにも気を使いたいので冬場はしっかり持っておくと思います。
メンターム系のスースーしたり、臭いなんてのもローさんとのちゅーにはちょっとだけ甘さに欠けるので、無味無香料か、柑橘系か、はちみつの〜って感じのをチョイスしていそうですね。

「ただいまー」
「おう」
「あ、親父今日早いな」
キッドくんが学校から帰ってくると鰐もすでに帰宅していました。
「お前の方こそ早くねェか?」
「今日、先生たちの会議で5時間目までだったから。顧問いないから部活の奴らも今日は休みだって」
「そうか」
「親父は?」
「リストラ」
「えー?親父社長だろ??ダズ怒らせたのかよ」
なんだかんだと、鰐渾身のジョークも交えながらこの時間には珍しく団欒とした時を過ごします。
「なんだ。リストラじゃねーじゃん…じゃあ今日の夜もいねぇのかよ」
「なんだとはなんだ。夜中にゃ帰ってくる…テメェは寝てろ」
「ローに乗っ取られたらローにまた親父使ってもらう様におれが頼んでやるから心配すんなよな」
「クハハ。言うじゃねェか…だが、野郎にゃまだ遠い話だな。返り討ちだ」
キッドが帰宅後、学校の鞄も傍らに投げっぱなしで話し込んでいましたが、そろそろ鰐は出掛けの用があります。
ソファに落ち着けていた腰を上げようとする鰐にキッドはあ、と声を掛けます。
「親父、唇がさがさしてそう」
「…気にならねぇがな」
キッドにそう言われ自分の唇に触れてみる。多少、指にかかる気もするけど無骨な指もまた多少の荒れが見られるのでその感触も不確かで。
「おれリップ持ってるぜ?」
「…いらねェ」
「なんでだよ。社長なのに不健康そうだ」
「なんだァ、そりゃあ」
「動くなよっ」
「おい、こら」
リップスティックを手にキッドが鰐の膝に乗り上げて無理やり唇に塗り(たくり)ました。
鰐も怒るでなくため息を我慢しされるまま。
「…チッ」
「これ、やるな」
「…」
手に握らされたそれに、今度こそため息をつきます。こう変に押しの強いところはピンクの馬鹿鳥を思い出させますが、今更育てから云々は嘆けません。
「ロー、仕事何時終わるかなぁ」
「おれがいねぇからって行くなよ」
「いかねーもん。来てもらうんだッ!親父まだ行かなくていいのか?」
「…行く」
もう、なんだか仕事も行きたくないくらい一瞬で疲れた気がするけど鰐は重い腰を上げます。キッドはソファーにかかってた鰐のコートを広げ、鰐に袖を通させます。
「いってらっしゃい」
「……‥ああ」
玄関まで見送られて、戸を閉めると盛大な溜息。撫でつけていた髪が一房額に落ちました。手に握ったリップスティックをどうしようかと思うも、葉巻を取り出すついでにポケットに放り込み葉巻を咥えました。
(…ベトつくな…)
と思いながら、拭おうとはしない鰐なのでした。

*たまには親子物語。親父もたじたじになるよ。
ダズ(社長の唇が心なしかシットリしているように見える…)
社長のことならすぐにわかる右腕でした。一番最初に風邪も気が付くよ。さすがだね

因みに、鰐は家長であり、社長であり誰よりも地位が高いです。
なので鰐に対して御付きの真似事をするのは当たり前。そう暗黙に決まっています。
キッドは教えられたというよりも周りの反応をみてそうするものなんだと覚えました。
鰐が帰ればコートを受け取るし、立ち上がればコートを着せます。ドフラだって、鰐にコートを渡されれば当然のように受け取って型崩れしない程度に適当な場所にかけておきます。自分のピンクはそこらへんに脱ぎ捨てたりもするけど。
鰐のワイングラスがあけば、当然一緒に飲んでいるドフラは継ぎ足します。鰐が要らないそぶりをすれば適当に鰐が好みそうな酒を他に持ってこさせるなり用意するなりする。
基本ドフラは手酌だけど、鰐が勿論ドフラに酌をすることもある。
そういうのを見ているキッドは勿論小さい時から真似っ子します。ちびっこいのがわくわくした顔で両手をだして、コートお預かりのポーズ。もちろんお子ちゃまキッドには抱えきれないので引きずったりして残念なことになるけど、まぁ…許しちゃうよ。仕方ないよ。かわいいんだもん。
お酒も、瓶を落とさないように扱えるようになったらキッドくんのお酌も珍しいものではなくなります。親父達+ローが集まればローが一番若輩なのでそういう位置になりますが、キッドが中学生くらいになればもうおつまみの用意からなにからしてくれるのではないでしょうか。
親父達の酒の好みも覚えて、そろそろ酒の種類変えようかなって時にグラスを酒の種類に合わせて変えてボトルを持ってくるんだ。ホストキッドくん…親父達専用です。

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