ちびっこにゃんこのおとどけもの屋さん


ちっさいキッドくんには夢が膨らみます。中坊キッドの幼少期。

黒いパーカーのフードには三角形の猫耳風飾り、後ろ裾には尻尾が付いたそれを着て、てってってとうろつくにゃんこキッドくん。
社内とか走り回ってたらほんわかしちゃうな。
鰐もにゃんこキッドの姿を見つけても怒るのも怒りきれずに「どこのノラネコだァ?」って諦めたように言えばいい。

「えへへ〜」
「ったく…」
「ワニ、これミポたんがワニにもってってってッ」
御届け物を持ってきた赤毛の目立つ黒猫さん。鰐はそれを受け取ってぽんぽんとにゃんこキッドの頭を撫でます。
「まだおてつだいなーいー?」
「あー?…あるぞ。ドフラミンゴはいねェだろうからヴェルゴにでいい。コレを渡して来い。それからニコのいる階が分かるか?」
「うんっ!このあいだロビンにおかしもらったんだーっ」
「…このあいだってのはいつだ?」
「あ!な、ないしょっ」
「……ニコにはこれを渡して、納期は15日だと伝えろ。覚えたか?」
「んっ!」

キッドの胴をすっぱり隠せるような大きな茶封筒とケースに入ったディスクを持たされ、キッドは鰐に小言を言われる前にお手伝いの旅(笑)に出ました。1つ下の階、フロア全体がドフラ直轄の部下が詰め、ドフラが仕切っているところです。
部署によりごちゃごちゃしてたり、きれいだったり、カオスなフロアですがキッドはずんずんと目的の場所を目指します。

「ん?」
「ヴェルゴー」
「ふむ。猫じゃらしはどこにやったんだったかな」首をかしげ
「ヴェルゴ、ねこじゃらしもってたの?」こてんと首を傾げ
「そういえば持っていなかったな」
「そっかぁ」
「そのようだ」
「ヴェルゴ」
「なんだ」
「フライドポテトおいしかった?」
「ああ、うまかった。どうしておれがフライドポテトを食ったのを知ってる?」
「ほっぺにね、ついてるよ」
「む」
「(もぐもぐ)それで、なにか用では?」
「あ!ワニが、これーって」
渡された封筒とディスクをそれぞれの手にもってなぜか万歳する
「ふむ。…おそらくこっちだな…ありがとう。確かに受け取ったよ」
「うん!」
「なにか飲んでいくかね?」
「こんど、ロビンのとこいくんだっ」
「そうか。ならエレベーターまで送ろう」
「いらない。おれひとりでいけるよっ」
「偉いな。ならばここで見送ろう」
「じゃーね」

ふりふりと手を振り、ついでにひよひよと尻尾を揺らしながらかけていくにゃんこキッドくん。
お次に向かうは、ロビンのところ。プロジェクトのチームが詰めている部署を目指します。
「ロビンっロビンッ」入ってすぐ高いカウンターがあるのでキッドから中は見えないし、中からキッドの姿も確認できません(ちびっこいので)。
ロビンは呼ばれて、その声の主にも気が付いて柔らかな笑みで迎えます…あら?

「ふふ…っ。可愛い猫さんね、いらっしゃい…どこから入ってきたのかしら?」
「ないしょーっ」
「怖い社長さんに見つからないようにね」
「ワニにもうみつかっちゃった」
「まぁ。そうなの」
「あのね、これワニがロビンにはいって」
「あら、お使いをしているのね。ありがとう、可愛いにゃんこさん」
「ふふー(照れ照れ)」
「他には何かなかったかしら?」
「んんー?」
「そうね、納期とか聞いてない?」
「あ!15日、だって!」
「そう。確かに受け取りました…社長にそう伝えてくれる?」
「うん!」
「時間があるなら、お茶でもいかが?」
「んー、んー、…ワニのとこ、かえる」
「じゃあ、これはお手伝いのご褒美に…」

茶菓子のパウンドケーキとマドレーヌをロビンが渡すと、嬉しそうにお腹のポッケ(カンガルーポッケ)にしまうにゃんこキッド。

「ありがとう!」
「エレベーターまで送るわ」
「いいよ!おれ1人でへーきっ」
「そう、気を付けてね。転んでお腹でお菓子を潰さないように」
「だいじょうぶっ、じゃあねー」

ととと…と消えていく三角形の黒い耳。

キッドがエレベーターに乗り込み、ドアが閉じるのを待っていると「おーっと待った、待った!」エレベーターに誰か駆け込んできました。

「ふー…お!まぁた来やがったのかァ?今日はあの人はいねェぞ?」
「ベラミーっ」

顔を合わせた瞬間キッドはピョン!と跳ねてベラミーの二の腕にしがみ付きます。ベラミーの慣れたもので、腕を90度にしてキッドをぶら下げました。

「クロコダイルさんに怒られるぜェ?」
「きょうは、おこられなかったんだぞ!おてつだいして、ヴェルゴとロビンのとこいったっ」
「んー?んー、あーそうかそうか」

詳しいことは伝わらないかったが、ようは今日は社長の許しがあって会社にいるのだということは理解したベラミー。

「お。おれはここで降りるぜェ。お前は上まで行くのか?」
「うん」
「じゃーな」
「あ!!」
「あ??」
「ベラミー、すきなのとっていいよっ」
ロビンからもらったお菓子を2つ見せる。
「お?くれんのか?んじゃこっち!あんがとよ!」
「へへっ」

がしがし、と耳付きのフードの上から頭を撫でられ、エレベーターが閉まるまでベラミーはキッドを見送ってくれました。

「ワーニー」
「ちゃんと伝えたか?」
「たしかにうけとりましたって、いってってロビンがいった」
「ご苦労だったな」
「ワニ、おれイスすわりたいっ」
「……はぁ。」

鰐の座る座り心地抜群の社長の椅子。キッドは来れば座りたがるのだが、ほとんどが無断で来るので中々座れません。なのでここぞとばかりにお願い攻撃。
やれやれ、と腰を上げ、キッドの腋に手を入れ抱き上げると椅子に降ろしてやる。(キッドには高いので、よじ登って靴跡を付けられる前に抱っこしました)

「ロビンにもらったの、たべていい?」
「…こぼすなよ…(とはいっても絶対こぼすだろうから机の上の書類をキッドから遠いところにまとめます)」
「2こもらったんだー。でもベラミーいたから、ベラミーに1こあげた」
「ほう…」
「よろこんだ!」
「だろうな」
キッドと何気ない会話をしていると、コンコンとドアをノック
「入れ」
「社長。しゃ…」
「おれ、しゃちょー!」
「…13日の定例会議のことですが」
「ダズ…まともに相手しなくていい」

ダズが社長室に入れば、机の脇に立つ社長と、机から、ちょびっとしか姿が見えていないちびっこ社長が目に入る。
お菓子のくずを口元にくっつけながら自らを社長と名乗るちびっこ相手に取りあえず合わせてみる。
子供の扱いがよくわからないのと、社長の息子だし無碍には出来ないことから仕方なく。

「むー!」
「大人しくしてろ…仕事の邪魔したら追い出すぞ」
「むー…」
「…それでは社長、改めて……」
「わかった。そっちはドフラミンゴにさせりゃあいい。あとは」

と、社長が仕事の話をする中、キッドはお菓子を食べ終えて足をプラプラ。
しかしキッドが邪魔になったのか鰐が椅子ごと脇に寄せ、引出を開けて朱肉と印章を取り出しました。

「あー!おれしたいっおれがしたいっ!」
「わかったわかった、ちょっと待っとけ」

キッドを抱き上げ、キッドを抱いたまま椅子に座ると書類にサインをし、キッドに印章を持たせ、その手を鰐が掴み誘導しながらしっかり捺しました。

「社長、それから鷹の目が突き返してきた例の…」
「ああ。あれは……キッド」「ん?」

後日、ミホークのところに小さな手形の捺され、へたくそな字でKIDと書かれた書類が行ったとか…行ったとか。


キッドくんの会社見学でした。
鰐やドフラの部下とか早く出したかったんだ。とくにヴェルゴ。


因みに、ヴェルゴと初めて出会った時にはキッドはものっすごい怯えました。
子供ながらに読めない相手が言いようのない怖さを醸し出しています。でも…
「…(ちらっ)」
「なにか?」
「ぅ…」
びくっとして目を逸らす、けれどももう一度ヴェルゴを見上げる。
「…?」首を傾げ
「……は…ハンバーグ、たべた?」
「ああ、ハンバーガーが好物だからな。昼に食べたが。なぜわかった?」
「ほ、ほっぺについてるよ」
「む」
「…ぎゃく…」
「ああ、こっちか」
「あ、あとね」
「うん?」
「ケチャップもついてる」
原作のモネとのように、キッドともこんなやり取りがあればいい。

ロビンはやさしいお姉さんですが、ベラミーは完全にキッドから舐められてます。
同等か、玩具か…キッドくんでさえ、ベラミーに施しをしてやりたくなる。ベラミーはローより年上ですがローより知能が劣り、他方から弄られキャラとして扱われています。ドフラのいい玩具です。
でもキッドはベラミーには早く懐いて一時はベラミー>ローだった筈。キッドと同じレベルで遊んであげられるベラミーと、親戚の息子くらいの扱いのローとではそりゃ差が生まれるだろうな。

だいぶ急ぎで書いたのでいつもよりとびとびに話が進みました。
キッドに可愛い服着せたいな…ちびっこパンクロックな服とかだろうか。かっこいいよりも可愛いくてかっこいい…みたいな感じになればいいと思うよ。

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