ぎゅっぎゅ。


中坊キッドくん



「知ってたか?今日ハグの日だって」
「ハグ?」
「抱っこの日。…まぁ、関係ねェな」
明日が休日の前夜、キッドはローの自宅に泊まりに来ていた。
現在キッドはローの膝に座り、パソコンでネット検索をしている最中だ。ローはその間持ち帰った仕事を片手間に、キッドとのひと時を楽しんでいた。
ローは寝室と仕事部屋は分けているので、据え置き型のパソコンや本棚は仕事部屋にある。だから仕事部屋には立ち入り禁止、と言うわけではなくキッドにはいつでも開放していた。仕事中にキッドが入ってきても別段なんの問題もない。
「んー…」
「なんだ?」
キッドの腹部に手を回し、背中から抱きしめるローは首を傾げた。神妙な顔で唸るキッドが首を逸らしてローを見上げる。
「ローばっか抱っこしてる」
「不満か?」
「おれもー」
ニッとキッドが無邪気に笑い、ローの膝に跨り向かい合うように座りなおすとぎゅっとローに抱き着いた。
オフィスチェアがギシリと音を立て、ローは目を瞠る。すりすりと柔らかい頬が首にすり寄り、癖のある赤い髪が頬をくすぐった。
「…キッド、くすぐってーよ」
「ふふー…なんか、ちっせぇ時いっぱいこうした気がする」
ローもキッドをぎゅうっと抱きしめ、頭に頬を寄せた。キッドの甘えた声が胸元から聞こえてきて、そう言えばキッドが幼い時はしょっちゅうこうして抱きしめていたような気がする。
今でも抱きしめ合うことはするが、ただ抱きしめ合うのではなく情事の流れの中、大人の雰囲気で抱き合っていることが多かった。
「フフ…ちょっと前まであんなに小さかったんだけどな」
「なんだよ…おっさんみてェ」
「もうすぐおれも三十路だぜ…?」
「…おっさんだな」
「頼むから、三十路のおれにそれ言うなよ…傷つくからな」
「おれ、早く大人になりたい…」
「止めてくれ…お前が早く大人になったらおれはどうなる。鰐なんかあっという間に爺ィになるぞ?」
「そーじゃねーの!」
「ああ、わかってるよ…でも、焦んなよ。今でさえあっという間にお前が大きくなってんの感じてんだ。…よっと」
「わっ…」
キッドを抱っこしたまま立ち上がり、少しだけ目線が高くなったキッドを見つめる。
「いつまでもこうして抱っこして、甘やかしてやりてぇなァ」
「…おれが大人になったら抱っこしてくれねぇの…?」
「いや?お前が嫌がっても抱っこしてやる」
「おれもローぎゅってする」
「ふふ…ただハグすんのもいいもんだな」
キッドにぎゅうと抱き着かれ、ローはうれしそうに笑った。キッドが幼少の頃、自分もまだギリギリ10代の頃は無邪気な気持ちでいた気がする。
それを思い出したら、成長した年下の恋人に少しだけ甘えてみたくもなった。



年下だけど、日々成長しているキッドは出会ったころより大人になっているわけで。
社会人になったローはキッドと出会ったころの自分はやっぱ幼かったなと思う訳で。
19才くらいの気持ちになったローが14歳くらいのキッドに甘えたくなって、キッドがぎゅっと抱きしめてくれるその胸元にすり寄って和めばいいと思います。年下でも、恋人の腕の中ってやっぱ安心できると思うんです。


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