戸惑いは優しい腕の所為


強く抱き締められるより
荒く扱われるより
頼りなく絡む腕が
腫物に触れるように優しくされることが
こんなにも苦しくて痛い


「おれを嫌うなよ…ユースタス屋」

笑いながらそう呟くトラファルガーに腹が立った


「トラファルガー…」

自分でも驚く程女々しい細い声
身動くと簡単に解けてしまいそうなトラファルガーの腕の中。それこそ簡単にこの腕から抜け出ることができるのにおれはそれができない

「…ラ、ファルガー」
「…」
「トラファルガー…ッ」
「…うん?なんだユースタス屋」

肩に顔を埋めているトラファルガーがなかなか返事をしないのに焦れてギュッと服を引っ張るといつもよりも低く囁くような声での返事が聞こえておれはそれに余計戸惑った

「っ…」
「離れた方がいいか?」

首筋に微かに唇を触れさせながらトラファルガーが問う
検討違いなこと言うなと耳元で叫んでやれたらどれ程気が楽になるだろうか
そうじゃねェんだ
おれが嫌なのは頼りなくおれを包む腕と、無性に泣きたくなっちまうような声
今にも離れて行きそうでどうしようもなく不安になる

「ユースタス屋?」



いっそおれが、お前を拒む言葉を吐き出す前にお前の腕で捩じ伏せて
その腕の中に閉じ込めてくれたらいいのに。


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