この愛を形にするとしたならきっと歪で複雑でとても美しい


既婚者三十路越えのキッドさんと大学生19歳ローさんの不倫話。

2人の出会いは所謂ハッテン場。
ローは初心からそろそろ一皮むけそうなホモで、タチ。外見からネコだと思われがちだけど、基本一夜で抱かせてくれ、かつ面倒を見てくれる年上狙い。
キッドさんはその日、ある事情からハッテン場へやってきたフツーの会社員。結婚5年目の1つ上の嫁持ち。
キッドが雰囲気に尻込みし、初心者丸出しでいるのを見つけたローが声を掛けます。声かけられる側が多かったローが、キッドの見目が好みだったのと自分よりも明らかに初心なのでこれでネコなら儲けものだし、初心者ならデート感覚でごはんとかおごってもらって話だけして〜…そんな計算をしつつ。
中略し、なんだかんだで恋人関係に。キッドは既婚だとはローに告げ、それでもいいと合意。
気軽な不倫関係となりました。

2月末、ホテルで若いツバメと熱い一夜を過ごします。キッドも仕事をしているし、家庭もあるしでしょっちゅうは会えません。
メールや電話のやり取りで日を決めて合い、ホテルになだれ込む。

「そうだ、これ」
「…?」
「バレンタインだったろ。過ぎちまったけど」

情事後の気怠い身体を起こして、キッドはブランドロゴの入った小さな紙袋をローに寄こします。

「…、まさか…用意してるとは思わなかった」
「ふっ…なんで?これも甲斐性だろ…若い恋人捕まえてんだからな」

ローはまさかと言う顔をして、嬉しすぎて、でも困惑の方が大きくて素直に喜べません。キッドもなんとなく心情がわかるのかただ、冗談めかして笑うだけでした。

「おい、これっ」
「別にお返しとか考えなくていいぜ。ま、お前なら同じようなの貰ってんだろうけど」
「ッ……」

時計でした。20〜30万はするだろうそれにローはますます素直に喜べません。
キッドは所謂不倫相手はローだけです。ローと遊びときにはすべての金をだしてローを可愛がっています。しかし恋人と言いセックスはするもののデートと称したそれらは歳の離れた兄弟のような感覚だとローは思っていました。
キッドは自分のわがままを聞いてくれるし、甘えれば甘やかし求めれば何もかも簡単にくれるのに、結婚している相手がいるからだろうかどこか踏み込めない部分がありました。
加えてキッドはローはきっと何人もパトロンめいた者がいて、自分もその一人だろうと思っているので言動にそれが出ます。
しかし、ローはキッドと出会ってから、キッドに執着するようになっていました。本気でキッドを好きになっていましたが勿論キッドは結婚していて自分たちは生産性のない不倫関係です。しかもローはまだ未成年。子供みたいに「構え」と言えても「おれを選んで」とは言えないでいます。

「…いいのかよ。おれにこんなのやって」
「不倫の代償ってやつだ」
「奥さん…には?もしかして奥さんにプレゼントとかしないくらい関係冷え切ってんの?」
「嫁?ああ…残念ながら夫婦仲は円満だぜ。勿論プレゼントもやったし、貰った」
「ふうん」
「その時計」
「!?」
「っくく…冗談に決まってんだろ?」

こんな感じでキッドさんは聞けば話してくれるようで、なにか肝心なところでいつもはぐらかすような人です。上手くもてあそばれてる気がするロー。
しかし、キッドのことを好きなので苦しくとも今の現状を続けるしかありません。好きだ愛してると言って、嬉しい、おれも好きだと返してくれるけど。
時計は勿論腕に付けています。キッドにも逢引を断られ一人の時は時計を耳元に時を刻む音をただ聞いてすごし、キッドが終業〜就寝するまでの時間にマメに送ってくれるメールや電話に縋る。
最初は割り切った関係のはずだったのに…と、思い、いっそ彼(キッド)の困ることをしでかしてもみたくなります。
キッドは嫁のことを愛している、気が強くていい女だと優しげな顔で語っていた。胸が締め付けられる。
ユースタス屋は、おれに抱かれた身体で嫁を抱くんだろうか。嫁はそんなにいいのだろうか。おれがネコになってみればいいんだろうか。自分が抱かれるなんて想像したくないけどユースタス屋になら。
ぐるぐる。ぐるぐる。この時計に見合うお返しは果たしてなんなのだろう。
きっと、ユースタス屋の気持ちは嫁に対するものの四分の一程度の気持ちしかないだろうにこんなおれには値段不相応の代物。

ホワイトデー。ダメ元で頼んでもその日はキッドと会えず。仕舞にはしばらく会えないかもと言われ。
(中略)
漸く、キッドと会える時間が出来る。少し疲労の見えるキッドも色気が増して見えてがっつくロー。荒い、激しい、少し落ち着けとちっとも感じてなさそうなキッドが言う。
若い気持ちを押さえることが難しいロー。

嫁が羨ましいとか散々言うローに、キッドはローは猫のような男だと思ってたのとはまったく真逆に自分に執着している様を見て「ごめんな」と謝ります。
キッドとしては自分のことばかり(心意は後々)でローを適当に遊んでいる奴だと思い込んで少しも考えてやらなかったことについて謝ったのですが、ローには脈なしだと告げられたと思いました。
(中略)
すれ違いなどありますが、あることが判明します。
キッドも嫁が居ながらローをそれなりに本気で好きでいました。それなりに…とは本気になれないジレンマもあって。
結婚してるっていうのを置いても歳の差があるけど平気か?ってキッドが聞くのには関係ない、気にしたことはないと言うロー。
「そもそも結婚しているってことだけが一番重要で置いておけないことだ」
ともっともなことを言うローに「そうだよな」ってなんだかおもしろそうに笑うキッド。
なんだよ、バカにしてんのかとローは思うけどキッドはじゃあ今度、日曜日にデートしようとキッドから誘われます。

日曜日。キッドは仕事が休みの日ですが、日曜日にローとありませんでした。なので驚くローだけど勿論断るはずもなく。

日曜日。会社帰りのスーツ姿ではない、何度か見たことある私服姿だけど日曜日の彼を見るのは初めてでキュンキュンドキドキのロー。どこにいくのか、今日はおごってもらうばかりではなく自分も何かキッドに!と意気込んでます。
ちょっと照れくさい(ローだけ)挨拶をして、連れて行きたい場所があると言うキッドに頷くロー。
並んで歩いて、どこに行くんだと聞いても笑ってはぐらかすキッドは花屋に立ち寄って花を買い、またローの半歩先を歩きます。困惑しながらついて行くと、そこは大きな総合病院。「え、ユースタス屋…」「いいから、ついてこい」優しく手を掴まれ引かれ、迷いのない足はある病室の前で止まりました。
病院特有の匂いにローは居心地悪そうにしキッドの横顔を見る。

「入るぞ」
「ええ、どうぞー」

コンコン、とドアを叩きキッドが声を掛けると中から女性の声が返事をします。扉を開けてキッドが足を踏み入れると。

「あー!キッドまたきたっ」
「なんだとこの野郎…おれが来ちゃわりぃのかよ」
「--ちゃんとお話ししてたのに!」
「ふふ…おはよう、キッド。来てくれたの」
「ああ。今日は顔色がいいな」


実は、ロキドの傍らでキッド夢をしようと思っていたものでした。とはいっても何か所か名前変換が使えて、キッドと夫婦関係だよ程度ものでしかないのですが。夢主死ぬ方向ですし…。
ネタバレ的に追っていくと、キッドと嫁さんは実は3.5年目くらいでやっぱ夫婦って気がしないって理由に別れようとしていました。似たような夫婦過ぎて友達でいた時と夫婦になった時のギャップになれず、セックスはしたもののなんか罪悪感ばかりで。
そうして別れようとしていた矢先、嫁さんの身体に悪性のものが見つかります。当初はキッドに黙っていたのですがそれもキッドの知ることとなり、そんな状態の嫁をほっぽりだせず、またそんな気もなく。
離婚はやめてキッドは嫁に尽くすことを決めました。
希望もあった頃だったということと、離婚手前まで言ったので夫婦と言うよりは仲間との共同生活と言う感じでした。
子作りしなきゃ、夫婦っぽくしなきゃと言うしがらみから解放されたのでとてもいい生活が出来ていたのですが、嫁さんは一向に良くならず。むしろ悪化していく一方で。
いろいろしては見たものの、嫁さんの方も子供がいるわけでもないし辛い治療を続けて死んでるような生活はしたくない、キッドにそんな私の看護なんてしてもらいたくない。
そんな思いから緩和ケアの方に変えて、病を抱えながら穏やかな生活をしています。
その、緩和の方に…って話をした時に、私の寿命は見えているしもうキッドに支えてもらわなくて平気。離婚しましょう。あなたはまだこれからいくらだってやり直せる。
そう言う風に嫁は言います。
でもキッドは、こうなってしまってから嫁のことは恋愛なのか友愛なのか未だ判断はできないけど嫁が好きで、最後まで面倒見させてほしいと言いました。最後までお前と馬鹿な話をしてたい。
嫁も、それが嬉しくないわけがなく。でも、好きな人が出来たら遠慮なくそっちにいってあげて。こっそりでいい、写真でいいからその人のこと教えて、明日からでも恋人を見つけて。そんな話をして。

キッドはやっぱり大事な人がこんなことになってしまって判断が鈍ったのか、嫁の言う通りにしなきゃと思ったのか…でも、女を思いうかべてもいまいち…嫁の顔しか出てこなくて、適当に遊べて、絶対のめり込まない男相手なら。
そんな考えに至りました。どこか混乱し。どこか冷静した思考。
それから、キッドは病院に通う度に嫁に近況を報告します。

「遊び相手が出来た。」
「どんな人?」
「男だっつったらキモいか?」
「そうなの、別に…ただあなたがどっちなのか気になる。」

私の方はいいから、恋人には甲斐性を見せなきゃ捨てられるわよ。悲しいことがあったら、恋人に慰めてもらわなきゃ。あなた偶に鈍いのよね…。


「なぁ、ちょっと悪ィけど嫁貸してくれ…話があるんだよ」
「ムー!」
「看護婦呼ぶぞコラ」
「!キッドいじわるー!!」

嫁の病室に遊びに来ていた6歳の男の子。骨の変形する病で入院していて嫁に懐いてしまい、男の子は一方的にキッドをライバル視しています。そんな男の子にはちょっと席を外してもらって。

「随分若いツバメだぜ…ツバメの雛か?」
「あはは。そう言うあなたのツバメさんは随分格好いいじゃない」

そして、ローと嫁の対面です。

「嫁だ。こいつがローな」ローには行先告げずにつれて来てしまったことをわびるキッド。ローは、当たり前だけどなんとも言えなくて。

「キッド。お花ありがとう…花瓶に活けて来てくれる?」
「…ああ」
「っ、あ、おれが」

キッドはローの時計のついた腕を撫で、花を活けに病室を出て行きました。個室なので洗面台もあるのですがわざと。

ここでお約束のように嫁とローとの邂逅話です。嫁の口から病状とキッドとの関係を全部ゆっくり話をして、キッドも漸く前に進めたから、気にするなと言っても無理だろうけど私のことは気にしないで。でも、気になるなら偶に顔を見せてね、なんていう。
ローはキッドって余裕そうに見えて実は…って言うのを知って、ますますキッドを手放したくなくなります。
でも、嫁は嫁で気風のいい女性で魅かれました。キッドが見計らったように時間をおいて戻ってきて3人で少し喋ってじゃあまた今度。病院を後にします。
今までは呼ぶことのなかったキッドの自宅へ「来るか、家」キッドが誘います。

(パターンとしては、ローがホワイトデー後あたりに情緒不安定になって、キッドが子供の機嫌取りをするように「じゃあおれん家来るか」って誘うのも考えてる。
で、嫁の気配はする家なのにしばらく嫁がいたような気はせず、『もしかして口では円満を語ってるけど関係は冷え切ってるのか?』と考えるロー。
しかしキッドの携帯が鳴り(病院から)キッドは慌ててローを帰し出て行く。
そして傷つくロー。すれ違うロキド、なんやかんやあって、実は嫁は〜っという風。)

キッド宅にきて、キッドの口からもあらましを語られ、キッドの話と嫁の話を聞いたローはキッドと嫁も含めて付き合って行くことに。

そんな感じで、ロキド、キド嫁をしつつ、嫁の最期をロキドで看取って、キッドはいい女だったって思いを語って泣いて…。そんな終わり。

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