恋を教えて


14〜16歳のキッドちゃんとローさん28歳


キッドも知らん間に許嫁とか出来てて戸惑う話です。14、5歳の時にお前の結婚相手…とか言われてローさんと会わされるキッド。
何度か見たことある顔のローを目の前にいきなりそんなことを言われて「はぁ!?」となるキッド。
キッドは初恋もまだだし、気になる相手もいないけどでもこんなことてない!ってな心情なわけで。確かにローは顔はいいし大人だけど…つーか自分はまだ14だし!!
だからこそ結婚できる年まで練習だと思って付き合ってみろとか言われてさらにムカムカ。ローは政略結婚的なものになんの抵抗も感じていないようにみえるし、淡々としていて、目上の指示に従ってるだけに見えてなんか嫌だ。
勉強が好きなわけじゃないけど、漠然と高校には行くつもりのキッドは16で嫁に、なんて進学できるかも怪しい。いろいろ悩みが出来てこんがらがる。

と、後日からローが家に訪ねてきたりいつの間にやら知られてしまったメールなどでご機嫌伺いが始まる。でもなんだかんだあって(そこを端折るのか)ちょっとずつ打ち解けて。
実はローの方はキッドのことをもっと小さい時から見ていてよく知っているので、縁談には満更ではなかった。嫁を…と言われた時にはどんな美人で出来のいいお嬢の写真を貰っても即断ろうと思っていたくらいだったけど、キッドだと言われたらその断りの言葉も即飲み込んでしまいました。でも相手は高校生にもなってない少女だし、彼女にも彼女の人生がある。断られれば身を引くけども、今この話を断ったらまた次の話が自分には来て、キッドは別な人の手に渡るかもしれません。
そう考えたら、キッドがせめて自分で決断できるようになるまで自分が許嫁であった方が守ってやれるのではないか。そんな風に考えていました。
なので取りあえずはキッドから良い返事はなくとも、メールが返ってこなくてもローの方からアプローチを掛けていさえすれば周りに親父どもは大人しいはず。
こんな思惑も過ごすうちに、キッドに知れることになってキッドもローに対して考えが変わってきます。ただの言いなりではなかったんだ…むしろ自分を気遣っていてくれたのだから、少女の胸はときめくわけです。
こうして距離を縮める間も、ローは一切手を出しません。そんな雰囲気にさえ持っていかない。デートと言って2人で遊びにも行きましたがあくまでも兄妹のように。ローとしてはキッドを好きだと早々に自覚するのですが、キッドにその気がないし、いまはキッドの自由を守るために許嫁でいます。極力恋愛感情はかくしてどことなく義務的です。

ローはキッドを大切にしたいので長期戦、あるいは敗戦覚悟で臨んでいますが、キッドにはそれが分かりません。少女漫画やラブロマンスの映画や小説を見たってちょっと相手に気があれは甘い雰囲気になるし、それなりのアピールとか、手繋ぐとか、キスするとかあるはず。
そうじゃなくとも男女が二人でいれば何かしらがあるはずだ。
でもローはそれをしてこないからキッドは自分たちの明確な関係が分からないと悩みを抱えます。
ローを少しずつ知ることはできたけど、この状態で結婚するかしないかなんてきめられるはずもなく。
そして、そのもやもやのふくらみの大きさに比例し、キッドの高校進学の話と結婚の話は同じスピードで答えを迫ってきます。


「なにを悩んでるんだ?」
そんなときに声を掛けるのがロー。優しく、でも頭をなでるとかそんなずるいことはしません。
「…許嫁ってなに?絶対結婚しなきゃいけないの?」
「そう言うことじゃない。簡単に言えば結婚の約束をしてるってことだがあくまで口約束だ。必ず守らねぇといけないモンでもねぇさ。婚約したって、婚約の破棄はできるんだからな。…自分にそのつもりはないと言えばいいだけだ」
「トラファルガーは、いいの…?勝手に決められて」
「…嫌か?」
「…」
「本当に嫌なら…」
「トラファルガーのことは、嫌いじゃないの」
キッドの勝気な瞳がローを見る。
「でも、まだ…高校とか、やりたいことあるかもしれない」
「…わかるよ」
ローは笑って頷き言葉を続けます。
「高校は行けばいいし、やりたいことやったり探したりすればいい。そのくらいは待つし、そのあとも決めるのはお前だ」
「っ、…それで、いいの?」
「高校は行った方がいい。その先も行きたければ行けばいいし、なりたいものがあるなら頑張って目指せばいいんだ」
「ま、まだそこまで考えてないッ」
「フフ…考えるのはゆっくりでいい。だが、気づけばあっという間だぞ?3年なんて」
あっさりと手に入れた猶予期間とローが告げる先の物事にまだ先のことを見据えられていないキッドはムキになって言葉を返すが、もう一つ抱えていた疑問を思い出して途端に口を噤んで恥ずかしそうに言い淀んだ。
「〜…、あの…いいなずけ、ってなに…?」
「…?さっきも、」
「つ…。…付き合ってる、って言うこと?」
「ッ!」
「こいびと…どうしって、こと…?」
言葉と、ほんのりと赤く染まったキッドの頬と、いつもの勝気な瞳が揺らぐのを見てローは言葉につまり、つい口元を手で覆った。
相手は碌な恋愛経験のない十代半ばの少女だったことを思い出し、彼女が「許嫁」と言う言葉に引っ掛かりを覚えていたことの理由を悟る。
「そう…だな…」
ローは今、やっと恋愛と言う舞台に上ってきた許嫁≠前にして激しい萌えを見出していた。堪らなく可愛い、愛しいと思う感情が振り切れそうになる中、一つの決心をする。
「キッド…許嫁をやめよう」
「え?」
「好きだ。付き合ってくれないか」
「っ!?えっ?」
「恋人になろう。」
キッドの手を握り、ローは想いを告げる。
驚きに目を見開いて赤面する少女が返事をするまで、まだもう少しだけ掛かりそうだった。


勿論返事は「うん」だけど。
そんな、ねぇ。許嫁だよ、結婚しなよ。って言われてもさ。女の子はやっぱ恋愛したいんだもの。
それに至る工程が大事なのさ。結婚するって結果だけじゃね。ちゃんと告白を受けて、それなりのことをして、大好きだっつって結婚したい!そんな乙女キッドちゃんでした。


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