パン屋の彼女


キッドさんに街角のパン屋さんしててほしい。ローは朝、側の新聞屋に行くついでにパン屋に寄ってキッドさんを口説くんでしょう?
ローが軟派な奴だからツンケンするキッドさん。だからローはキッドさんって無愛想で可愛げのない女だって思ってるかもしれない。
でも違うんだ。他のお客には愛想がいいんだよ。おじいさんおばあさんとお天気の話して、小さい子にはビスケットをおまけして、妊婦さん(+老齢の方)が来たらドア開けて出迎え見送りしてくれるんだ。だた、にこっ!て笑顔はふりまけない子なんだ。
精一杯の笑顔が不器用可愛いので老若男女を虜にするよ。妊婦さんとお話して、こわごわとお腹撫でさせてもらうキッドさん。お腹の中の子が元気よくお腹蹴ってびっくりしたのちにふにゃっと笑うのがもう!もう!
なんてのを、たまたまローさんが見ちゃってて「赤毛のあの子…マジでかわいいな」ってドつぼにはまればいい。
翌日から硬派(紳士的)にアタックしていくローがいることだろう。

あれだねー、なんだかんだで漸くお食事にこぎつけてさ。その翌日のパン代は受け取らないよね、キッドさん。
「まだ時間があるなら…焼き立てを」って朝ごはんに誘ってくれるかもしれない。お店の隅にお年寄りが腰を下ろせるスペース(時間帯によっては憩いの場)で2人で。
はい、パン屋パン屋と言っておりますが勿論ローさんの「パンは嫌いだ」は忘れてないよ。
ローは無理してパン買ってました。
2人の雰囲気が良くなった頃に、「実はおれはパンが嫌いだ」って大真面目な顔で言うローに笑っちゃうキッドさん。
「なんで笑う」
「だって。今まで我慢して食べてたの?」
むーとしてるローをみて相変わらず笑ってるキッドだけど、今度食事でも?って誘うキッドさん。勿論断るはずもなくローさん。
どこのお店が良いかと尋ねるけど。
「明日、19時にここで」
って自分のお店を指すキッド。
「…ここ?」
「あんまりいいおもてなしはできないけれど」
「いや、ぜひ。19時だな…遅れずに来るよ」と約束を。
当日になって、そわそわのローさん18時半には店先に来てしまったローさん。パン屋は午後からおやすみの日でした。
closeの札のかかるお店の軒先でうろうろ。腕時計を見てはそわそわ。
「不審者みたいよ?来たなら声を掛ければいいのに」
って笑って出迎えるキッド。ローは背中側で開いたドアにびっくりしつつ、ちょっと格好がつかずにはにかんで。
「大分早く着いたから邪魔かと思って」
「店先でうろうろされるのも困るわ」
入って、と招いてくれるキッド。店の方の照明はほとんどついてなくて少し薄暗く。
「こっちよ」と初めて入るお店の奥。その脇の細い階段を上って。
「こんな風になってるのか…」
「下はお店と工房なの。私が住んでるのはここ…座って。すぐに用意するわ」
「あ、これを。何を土産にしようか迷ったんだが」
「ワイン?ありがとうっ。せっかくだから一緒に…あ、でも冷やした方が美味しい?」
「そうだな…食後にでも」
「わかった」
キッドの生活する部屋のダイニングキッチン。ただ広い間取りにキッチンとダイニングテーブルと椅子。壁沿いに棚。キッチンのカウンターにはバスケットに入ったパンと果物。瓶詰のいろいろ。その他様々。
テーブルに並ぶキッドの手料理。どれも家庭的で懐かしい。そして、リゾット。
「…パンかと思った?苦手な人にそんないやがらせはしないわ」
って意外そうに目を丸くしてるローに向かって楽しそうに笑って欲しい。きっと優しい笑顔。
「パンを作ってるけど、パンばかりを食べてるわけじゃないわ。お米だって好きよ?」
とかつってさ。

「君の炊いてくれた米を一生食べたい」「その一生の中で私の焼いたパンもたまには食べてよね」

とか、むず痒いやり取りをしてほしいです。
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