明日はどっちだ


*以前学パロでボクシング部ローと弓道部キッドの妄想垂れ流したもののキッド女体ver.




部室から出て、軽く体を慣らし縄跳びを始めたロー。耳にイヤホンつけて音楽聴きつつテッテッテッテッ…とその場で足踏みしながら何を考えるわけでもなく体力作り中。
と、今まで気にしたこともなかったけど顔を上げた瞬間、ネット越しに目に入った赤いそれに目を奪われ足が止まってしまう。そしてすごいスピードで射られたソレに飛んでいた意識が戻される。
事故防止で張り巡らされた緑のネットの向こう側。
距離があるので顔ははっきり見えないが、赤い髪をしたその子の動作1つ1つに目を奪われついつい見とれてしまったロー。弓道部か…とそれ以来部活中、外で体力作りをするときには気になるあの子を目で追うロー。
と、この日は矢を取りに出てきたその子がすぐ傍の矢取道を歩いている。縄跳びしながら目で追っていると、目があった。吊り上った猫のようなきつい目が、一瞬ジィっとローをみてすぐに逸らされる。
あぁ、好みの顔…と、ローは初めてまじまじとみた意中の子に更に入れ込む。しかし、声を掛けようにも…。
そして数日。スパーリング後、ローは目の上を切り鼻血も出て外の水道で顔を流しに行きました。
「って…」「…、わ…」「あ」
人の気配に、洗った側から血が流れてくる瞼の傷をぐぅっと押さえながら濡れた顔をあげると弓道部のあの子が。ローの顔を見て「うげっ」と言う顔をされます。
「使うのか?」「え、あ…あぁ」
ローは3つある蛇口の真ん中を左右気にせずに使っていたので邪魔になったかと場所をずらします。弓道部の子はキーパー(水)を抱えていて、水を継ぎ足しに来たようである。
「…」「おれの顔そんなに酷い?」「…だって、鼻血…」「え、洗ったんだけどな」
ちらちら視線を寄こしてくる弓道部の子にローは首にかけていたタオルで瞼を拭いつつ首をかしげる。指摘され、顔を洗い流して弓道部の子を見れば「落ちた」と困ったように笑われた。
「保健室、今日先生いねぇって言ってたけど」「ああ、平気…部室に血止めとかあるし」「ああ、そっか」「?」「茶飯事そうだから…」「ま、そうだな…保健室と往復してらんねぇし…弓道の人だよな」「…この前、目合った」「覚えてたんだな」「…なんか、よくこっちの方見てるから…気になって」「あ…」
見てたのばれてたのか、とローは罰の悪そうな顔をする。
「いつも外で縄跳びとかいろいろしてんのに今日みなかったけど…中で練習してたんだな」「他校との試合が近くて…今日からスパーリングをな」「スパーリング…」「実戦に近い練習試合…みてぇな」「ああ、だから…」「言っておくが一方的にやられたんじゃねェぞ」「え?」「…おれの相手はのびて部室でまだ寝てる」「え、あ…なんだ」「…」「え、ちがっ…弱そうに見えたとかじゃ」「…ふうん…」「あ、や、その…!」「フフ。土曜日なんだ…ウチの学校で合同試合」「え…と」「一応応援も入れるから」「……」「時間があれば。…2年のトラファルガーだ」「あ、おれも2年、…ユースタス」「ユースタス屋」「え、う…うん」
キッドが屋号呼びに驚きながら返事をするも、ローはキッドが躊躇うほど優しげな笑みを向けている。ローは漸くしれた意中の人の名を知れて嬉しかった。
「それ、途中まで持とうか」「え、いや…重いし、いいよ」「こっちのセリフだ…重いだろうからさ」
3.5Lの水が入るキーパーを指差しローは言う。水を入れたキーパーをキッドの手から取り、キッドの隣を歩くロー。
「あ、13時だから」「え?」「試合」「…」「じゃ…」結局、弓道場に近いところまでキーパーを運んだローは半ば言い逃げするように走って行く。

土曜日。練習のなかったキッドは、最後まで悩みつつ結局は試合を見に来た。13時半…友人とか連れてくれば良かったと思いながら、まばらに生徒が集まっているボクシング部の練習場へ。
で、興味がないので居心地悪く見ていると、リングに上がる、ローの姿が…。
「ロー、相手はスタミナねェし打たれ弱ぇ。一発強いの入れちまえばビビるぞ。そしたらあとはこっちのモンだ」「…ああ」「万が一ってこともねェだろうけど、気ィぬくなよ」「愚問だ」「あ、そ…ん?なんか、あの子お前のほうジッとみてるぜ?」「あ?」
あっち、と指差された方をローが見ると『ユースタス』の姿が。「…シャチ」「え?お、おう?」「K.O勝ちしてくる」「…はぁ!?」
一瞬、キッドに柔らかく笑うとシャチに向き直り、不敵な笑みでそう宣言する。始まった試合…と、いっても3R目。相手は3年でそれなりの強さはある…が、2R交えて次は仕掛ける、とローはゴングが鳴ると攻めていく。
その試合を、ジッと、ただジッと見ているユースタス。
試合終了のゴングが鳴り、ローのK.O勝ち。ボディを打たれ過ぎて足の立たなくなった相手選手をしり目にローは拳を上げ、ユースタスを見る。ハッとしてユースタスは顔を背ける。
「ロー!まさか本当にノックア…」「シャチ、早くグローブ外せ」「は?」マウスピースを自分で外しヘッドギアを脱ぎ捨てる。急かしてグローブを外してもらい、相手選手との挨拶もそこそこに着替えて駆けていく。目を離したすきにいなくなったユースタスにローは焦る。なんで帰ってしまったのかと必死に視線を動かし姿を探す。場外に出ても姿が見えなかった。
「ロー!いたっ…お前ェ…まだ練習試合終わってねェんだぞ!?」「ッ…シャチ!さっきのユースタス屋…赤い髪の!あの子見なかったか」「へ?や…知らねェけど…なに、彼女?」「…違ぇ…けど」「…ま、とにかく戻ろう」「…引かれっちまったと思うか?」「え…あー…。取り敢えず、汗とか拭けよ。顔も腫れてきてるし冷やそう」

試合やミーティングを終えた17時過ぎ…部室を出るローの目が、弓道場の傍で座っている赤い子を見つける。駆け寄ると、気配に気づいて見上げる顔。
「…顔…アザになってる」「今日は、マシな方だ…」「腹、殴られたな」「いいや、ガードしたからボディには入ってねェよ」「そうなんだ?」「そう」「じゃあ、相手のアザとかすげぇんだろうな」「…そうかもな」「…痛そうだった」「……引いたか?」
ローは先日切った瞼の上に絆創膏を貼っていた。少しだけ瞼の被さっている目をキッドは見て、首を振る。
「別に、引きはしなかったけど…TVで見るのとじゃ違うな」「プロとは全然違うけどな」「…格好、良かった。ちゃんと、強かったんだな」「…疑ってたとは酷いな」
ユースタスが笑い、ローも漸く笑みを零す。

2人の恋が始まった瞬間だった。


…なんつって。いやね、先日ボクシングをTVでやってて…試合終了後、勝った選手って家族をリングに上げて喜びを分かつではないか。
そのシーンをうっかりロキドで妄想しちまったから…さ。
プロんなって、ローがK.O勝ちして、普段のクールさなんて押しのけて拳突き上げて、シャチがキッドを無理やり引っ張りこんでリングに。ローは歓喜余ってキッドを抱き上げてぎゅー!!「勝ったぞ!ユースタス屋ッ」「お、おまっ…下ろせよ!…頼むから下ろしてっ」真っ赤になってじたばたするキッド。
「ユースタス屋…結婚してくれ!」「はなっ…はぁ!?」「決めてたんだ…これに勝ったら、言うって。ボクシングは止める…ユースタス屋…結婚してくれ」
奇しくも初優勝が引退試合となるわけだけどローは悔いのなく。元々ボクシングなんて長くやるつもりはなかったロー。ただ、リングで結婚申し込みたかった夢をかなえただけでした。
結構ギリギリな試合で、ローも出血が止まらない、ボコボコの顔で、でもすっごい笑顔で。
キッドはローの汗が染みこむのも、血が付くのも構わず抱きついて悪態付きながらOKするんだろうな。

ローは高校でボクシング止めてもいいんだけどこの、リング上でプロポーズ…ってのを入れたかった。
そうなると、高校の時付き合って、それ以降…大学に行くならなそれはそれだけど、多分プロを目指した段階でキッドとは一旦別れると思います。
ローだって超人ではないので負けたり引き分けたりもあって、漸くの優勝。んで結婚…とか、小説の中らしい流であり結末であるのではないでしょうか。
ローに別れようって言われてから、躊躇いなく頷くキッド。それからも一緒にいて、いろんな困難乗り越えるけど、周りから「あれ、彼女さん?」って言われても「いいや、友達だ」って普段と違う優しい顔して言うロー。キッドも「彼氏ボクシングやってるんでしょ?」「彼氏じゃねーよ。友達」って答えるだろう。
そういうのも、いいなぁ。
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