気づけ、最初からおれは…


「好きなんだ」
溢れた言葉に目の前の男は驚いたように目を見開いた。
「好きなんだ…」
「泣くくらい?」
「え?」
「泣くくらいにおれが好き?」
伸びてきた手が頬にふれる。触れられるなんて思ってなくて、びっくりして目を閉じたら何かが頬を滑っていった。
また驚くことにおれは泣いていた。
「あ…」
「なんで泣く?」
「……好き、なのに…」
「うん」
「お前には好きになってもらえねぇから…?」
「なんで好きになってくれねェなんて決めつけるんだ?」
「だって…おれ、男だし…こんなのきめぇし……叶いっこねぇし…」
「好きになってもらえるように努力はしねぇのか?」
「だから、男が男に…いくら努力したって……ちくしょう…」
もう、友人として側にいることも叶わなくなった。
そう思うとまた涙が溢れてくる。
いつからか好きになってた。側にいるだけでよかったのに、それだけじゃ足りなくなった。
好きと言わずにはいられなかった。

「トラファルガー」

「好き」

「好きだ」

「好き、好き、好き」


「おれのこと、何も知らねぇのにそんなに好きって言うな」
「……ッ…」
「おれは意外と涙に弱いんだ」
「……?」
「好きって言われたら嬉しいし、好きって言われ続けたら好きになる」
「え…」
「でも、ユースタス屋にだけだ」

トラファルガーの声に耳を傾けていたら自然と涙が引っ込んだ。

「泣くほどおれが好きか?」
「うん…好きだ」
「おれは好きだって言われる程お前を好きになるぞ」
「ッん、いっぱい、言う…から…れを、好き、なって…」
「じゃあ、おれもお前に好きって言うからさ…おれを大好きになれよ」
「ん、ん…!」
「いつかおれのこと、笑顔(わら)って大好きって言ってくれ」
「わ、がった…!」
「ユースタス屋。大好きだ」

トラファルガー好きって言って言うたびに嬉しくて涙がまた溢れだした。
泣いてるのに、おれは嬉しくて笑っていた。






「トラファルガー!!大好きだっ」

ユースタス屋が満面の笑顔で言った。
泣くほど俺を好きだと言ったユースタス屋にほだされたあの日。
おれは涙に弱いと教えてやった。好きだと言われれば言われるほど好きになるってことも教えた。

「ユースタス屋、愛してるっ」

今日は、もうひとつ教えてやろうと思う。
ユースタス屋が大好きだった。いつも側で見てた笑顔が大好きだった。
でもおれのせいで泣くユースタス屋が愛しいと思った。だからおれがユースタス屋を笑わせてやりたかった。
ユースタス屋が好きと言ってくれる分大好きと言って伝えた。

笑顔って大好きと言ってくれた今日、おれの中の大好きと言う気持ちは振り切れた。

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