たった一度だけでいいから
バチン、と耳元に爆ぜる音。
開いた視界には光が眩しくて、そして吐き気がした
「ぁ…」
「ユースタス屋…気を飛ばすにはまだ早いぜ」
フフ、なんて耳に障る笑い方をしてトラファルガーの舌が鼻を舐めた。
不味いと言いながらもなにがおかしいのか楽しそうに笑っている。
咥内の唾液を嚥下しようと喉を動かせば鼻に溜まった血が降りてきた。
トラファルガーは俺の鼻血を舐めていたらしい…そりゃ不味いだろうよ。
俺の船、俺の部屋…敵船、敵のテリトリーにヅカヅカと入り込んできたと思ったら言葉を交わすことなく唇を奪われた。口腔を嘗め回す舌に嫌気が差してその舌を噛んでやる。
それで離れるかと思ってたのに口付けは深まり、更には奴の利き手が喉を掴んできて頚動脈を圧迫してきやがった。口の中は奴の血と唾液で溢れて散々だ。
「ッ…!、ッ、ッ!!」
文字通り気の遠くなるキスに脳がグラグラ揺れだして不自然に、無意識に手足がガクガグ震えて目一杯に奴の肩を掴み引き離そうと試みるとあっさりと奴の手の力は緩み塞がれていた口は解放される。
「ハッ…!!げほっ!はぁっか、は…っ…」
「あー、イテェな。噛むことはねェだろ、ユースタス屋」
舌を噛まれた直後にも平然とキスを仕掛けていた奴がなにを今更、と睨むと楽しそうに細まる瞳にぶつかった。
「と、…ファルガー…」
「フフ、久しぶりだなユースタス屋。首を絞められながらのキスはそんなに気持ちが良かったか?」
内股からスルリと手が這い履いているものの布越しに勃起を触られビクリと身が竦くむ。
「く、そ…!テメェ、いきなりなんなんだよ」
「なんだ、って…お前と俺が居てやることと言ったら殺ることとヤることしかねェだろ?」
「…クク、んだよ…殺り合おうってのか」
「フ、冗談…お前を愛しにきたんだよユースタス屋」
だからヤろう。なんて耳元で囁くトラファルガー薄い腹に軽く蹴りを入れ、それ以上の抵抗は諦めた。
逃げるには全てがもう遅い。下肢を弄る手に微かに身を捩りながらぼんやりと視線を宙に浮かせる。
愛されたいと思ってしまった。