ロマンチック・エンド


ユースタス屋は昔からロマンチストだった。
昔、ユースタス屋のことが大好きで彼もおれの事が大好きで、永遠とか夢見てたおれたちは一生を誓ったりしたんだ。

そんな彼は、今日結婚する。
おれではなく、違う女性と…。

「トラファルガー」
「よう…ユースタス屋」

式前に逢ったユースタス屋は白いタキシードを着てハニカンでた。

「来てくれてありがとうな」
「いや…似合ってるぜ。男前」

おれは、朗らかに笑って見せた。
ユースタス屋との約束を果たしに来たんだ…今日この日を、もう、何年待ち続けただろうか。

「奪って、行くからな」
「…トラファルガー……。…ロー」
「うん?」
「来てくれて」

すげぇ、嬉しいと言ったユースタス屋の腹に、深々とナイフを刺した。
外科医をやってるおれは、もう何人もの人の身体を切り開いてきたけど刃渡りが長く広い刃物を深く突き刺す感触は初めて知る。

しなだれ掛かってくるユースタス屋の身体を抱き留めながらゆっくり座り込み抱き締める。ユースタス屋の吐息が首筋に掛かってくすぐったかった。

「…は…ははっ…いてぇ」
「当たり前だ…でも、直に痛く無くなる。麻痺してくるからな」「んな、もんか……」

遠い日、おれ達は約束をした。
『なぁ、トラファルガー』
『なんだ?』
『もし、俺がお前じゃねぇ奴と結婚するってなったらさ』
『考えたくねェな……まぁいい。それで?』
『殺しに来い』
『…、ふふ…いいぜ。わかった…奪いに行くよ』
『お前を裏切ったおれを許すなよ』
『あぁ…恨んでやるよ。腹ぶっさして、抱き締めてやる』
『絶対だぜ?』
『約束する。』



ナイフを刺したその側を手で押さえながら一思いに引き抜いた。ドッと溢れて純白に染み込んで行く。

「ィ…て……はぁ…」
「ユースタス屋…キスしてもいい?」
「ん…誓いのやつ、な…」
「一生愛してる…誓うよ」
「…れ、も…誓う……して、る…ロー…っ」

ユースタス屋の左手の薬指に細っこい銀の輪を掛けて、おれの左手の薬指にも飾り気のないそれを掛けた。握り合ったユースタス屋の手は震えていたけど、幸せだと笑ってくれた。

「キッド…最期だかんな?中途半端にすんなよ?」
「…わかっ、てる……くそっ、いてぇまんまじゃねェか…ウソつき、やろー…」
「フフ…ま、人それぞれだな…症状なんてのは」
「目、かすんできた…カオ近付けろ…みえねぇ」
「ん…じゃあ、そろそろ…思い切りな。キッド…誓いのキスだ。…愛してる」
「ん…アイし、てる…」

ユースタス屋の開いた唇に唇を重ねて隙間から舌を滑らせた。
少しだけ互いの唾液を絡め合うように舌を遊ばせて、そして―――…

ガチッ、と勢いを付け過ぎたくらいの気前の良い音がした。流石に完全には千切れなかったが半分以上離れたそこから、面白いくらい血があふれ出る。
ユースタス屋のぎこちなく動く舌に遊ばれながら、おれは…おれたちは…


愛し続けることを
誓いました





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