驚き!?月の魔法 @
 



すっかり朝晩問わず冷え込むようになってきたこの頃。昨夜は2人で鍋をつつき、同じベッドで夜を過ごした。
同じベッドで寝ることは珍しいことでもないが、寒さに弱いキッドはこの季節は積極的にこの狭いベッドで共に寝てくれるのでローにとってはとても嬉しい季節だ。
それにローは寒さには強いので苦も感じたことがないまさに最高だった。

今日は共に休みの日であり、昨夜の時点でキッドからは「午前中は寝て過ごす」のだと言われていた。その分、昨夜は随分長い夜を過ごしたような気がする。
そんなあくる日の朝、ローは深い眠りの底から浮上し薄らを瞼を持ち上げた。夜が明けるのもだんだん遅くなりつつあるがカーテンの明るさを見れば一般的な通勤、通学ラッシュの時間帯だろうか。
ローはそうアタリを付けるが、キッドにも言われているようにローも午前中は寝て過ごすつもりだ。温かい布団の中、恋人の温もりも傍にまだまだ目覚めそうにない穏やかな寝息も聞こえている。
こんな幸せを蹴って起きだそうだなんて不幸なことを選ぶはずもなく、二度寝をするべく目を閉じた。
どうやらキッドはローに背を向けているらしいので、背中から抱きしめるくらい眠りの妨げにもならないだろう。ローはそっとキッドの身体を抱きしめ肩に顔を埋めた。

「……?」

暫く恋人の身体を抱きしめてみて、ローは少し不思議になった。やけに腕に収まりがいい気がする。
キッドはこんなに小さいはずはないのだ。
眠たかった意識が完全に吹っ飛ぶが、閉じた目をまだ開けられずに、ローは妙な胸騒ぎを起こしつつキッドと思しき身体に手を滑らせる。異様に柔らかいものに触れ、思わず目を開け跳ね起きてしまった。

「ッ!?」
「っ………ん〜―…」

ベッドの揺れと布団のずれにキッドは目が覚めないまでも不満げに唸る。冷気が布団に入り込んだのを嫌ってか縮こまる様に手足を丸めて、聞き取れない文句を零した。
ローはそんなキッドの背中を静かに凝視した。表だっては見えないが、内心ではとんでもなく混乱し取り乱し過ぎて声を出すことも、行動を起こすこともできなかったのだ。

「……ユースタス屋…?」

そっと声を掛けるが寝ているキッドには届かない様で再び健やかな寝息を立てている。しかし、こうやって寝姿を観察しただけでもただ事ではないことが起こっていた。
キッドはこんなに肩は薄くなかったし、キッドの身体には大分余って見えるシャツから覗く首は細い。そしてそんなに縮こまっていると、大きさは普段のキッドの半分ほどだ。

「…ユースタス屋、おい、ユースタス屋…起きろ、起きてくれ」

恐る恐る、布団の上からキッドの身体を揺すって起こそうと試みる。惰眠をむさぼると決めているキッドは、起こすと不機嫌になるのだかそんなことを気にしている余裕はない。

「ユースタス屋起きろッ」
「んーっ…ンだよ…」

舌打ちと共にキッドはしぶしぶと返事をし、しかし煩いとばかりに布団の中に潜っていく。

「…ユースタス屋。自分の胸元触ってみろ」
「ぁー?……?……??」

むくりと起き上がったキッドは、寝起きのぼんやりとした表情だが多少困惑もしているらしい表情で言葉なくローと見合わせる。
キッドの左手は、自身の胸元の豊かなふくらみをわし掴んでいた。

「…あんだ…これ?」
「ユースタス屋、声も変わってるぞ…自分ではわかんねぇかもしれないけど身体も大分…」
「うそっ…」

掌や腕を見まわし、キッドは自分の身体の見える範囲を見て薄ら恐ろしくなったのか眠そうにしながらも慌ててベッドから立ち上がる。

「わっ、脱げる?!なんだこれっ」
「っ!?」

夕べは長袖のシャツと下穿きは下着一枚で寝ていたキッドは身体に合わない緩いシャツの襟ぐりに肩をはみ出させ、腰回りの合わない下着が脱げかかる。実際、キッドのフォローも速かったがローには適度な丸みを帯びた尻が一瞬でも見えてしまい思わず顔を反らしてしまった。

「…うっそ…どうなってんだァ…?」

衣服を押さえながら洗面所に駆け込んだキッドは鏡で自分の姿を確認し驚きを越して呆けたようにつぶやいた。その呟きはローにも聞こえていたがなんて返していいのかわからず口を噤んだままになる。
暫くすると、洗面台を使う水を流す音が聞こえキッドが重い足取りで出てきた。

「水が冷てぇ…」

歯磨きと洗顔を済ませたらしいキッドは首にタオルを掛けながらため息を吐いた。不思議な現象には驚いたらしいが、寒さの方が勝るのか暖房のスイッチを入れ薬缶を火にかける。

「…ユースタス屋」
「あー?」
「どうするんだ」
「どうって…どうすんだよ…お前、これ完全に女の身体だぞ?」

2つのマグカップを用意しながら、キッドは振り返り胸の膨らみを自らの手で寄せて上げて見せる。たぷんと揺れるそれにローはふいに触ってしまった先ほどの感触を思い出した。

「まぁ、今日が休みでよかったぜ…明日戻ればいいんだけどな」
「ンな楽観的な……」
「こういうのは『そう言う』モンだろ?驚きはするけどな」

項に掛かる髪を梳き、カリカリと掻きながらキッドはため息を吐いた。9時半を指す時計を見て、冷静になってくれば思わぬ早起きになってしまったことが悔やまれてくる。
これで居てキッドは意外と図太いのかもしれなかった。

「どこ行くんだ?」
「部屋戻って顔洗ってくる。それと着替え」
「コーヒー入れとくぜ?」
「ああ」

キッドは欠伸交じりの間延びした声を掛けながらインスタントコーヒーにお湯を注ぐが、なんとなくカフェオレが飲みたくなりローにはコーヒーを淹れ、自分はカフェオレにすべくマグカップになみなみと牛乳を注いで電子レンジに任せた。

「これならなんとか穿けないか?」
「ん?…ああ、ジーパン」

出来上がったカフェオレを一口飲んだところでローが戻ってきた。着替えと言う割にローは先ほどの寝巻と替りのない姿だったがどうやらキッドに合いそうな服を取りに行っていたようだ。
キッドも寝起きのまま、長袖を折り曲げて下着のボクサーパンツのあまりは髪をくくるゴムでとめているだけらしく素足を晒していた。
肩が出ているのはともかく、今は女の身体に男の下着を付けた下肢を晒しているキッドを見るのはローには結構な刺激物に見える。
キッドの衣服よりも、ローの物の方がまだサイズが小さいのでその中でも細身のジーンズならばなんとか着ることができそうだ。

「お、結構いいな…。女が男物の服着るのもわかるぜ」
「腰、本当に細いなユースタス屋」

腰は余るが尻や太腿にはサイズがいいようで足元の寒さがなくなりキッドはひと心地つく。最悪毛布でも巻いて過ごそうと思っていたがその必要もなさそうだった。
ローとの背丈の差があるので、ジーンズの裾も大分余ったのだが、足首でもたつかせるのも悪くない。そう言えば大分前に足元をくしゅくしゅさせるのが流行ったな、とキッドはぼんやりと思い出した。

「コーヒー冷めるぞ?朝飯、作らねェから腹減ったら昼まで菓子とかつまんで」
「ああ…」
「なに。座れよ」

キッドはソファに腰を下ろすとビスケットをつまみながら首を傾げる。突っ立ったままのローに怪訝そうにするとローは目を泳がせてからキッドの隣に腰を落ち着けた。

「あ、見たかったか?」
「?」
「胸。見せるか?」
「いいっ、いい、…」
「そういやお前おれを叩き起こしたときに」
「あれは!偶然手をやったら触っちまっただけでわかってて触ったわけじゃ」
「…すげー早口だな」
「…!」
「いや、気にしてねぇしそんな弁解しなくても……お前、女初めてじゃねェよな?」
「ちがう…」
「おれは気にしねェぞ?別に浮気じゃねぇんだからいつも通りにしろよ」

ローの挙動不審振りに、「女の身体のおれに欲情しないようにしてるんだろうな…」と察してやりながら、キッドはずい、とローへ身を乗り出した。

「おっ…」
「自分で言うのもなんだけどよ、悪くねェ身体だとおもうぞ?」
「な、んでそんな余裕なんだユースタス屋」
「余裕なわけじゃねーけど…」

自分よりも大変そうにしているローを見ると逆に冷静になってしまうというもので、キッドは苦笑しながら自らローに身を寄せて凭れかかる。

「今日一日だけのことかもしれねェだろ?今日は様子見て、明日戻んなかった時に慌てたって遅くはねェよ。大体戻り方もわからねぇのに慌てたって仕方ねェしな」
「……なんか…よくわかんねェけど流石だな、ユースタス屋」
「お前はいざとなった時ダメなのな…」

普段本や映画を見てこんな現象起こったらどうする?みたいな話もするというのにいざ起こってみればこうも取り乱すのかと、キッドはローについてどうでもいい発見をするのだった。

「…じゃあ、と言うか…」
「ん?」
「触ってもいいか?」
「…あのな。今はもう慣れたけどよ…初めて男(お前)に男(おれ)の身体弄られた時よりも全然抵抗はねェぞ」

どうぞ、とばかりに身体を無防備にローへ向けるキッドは、もとより恋人のローに今更触られようが何されようが構わない。一つのイベントだと思って今の不思議な現象も受け入れていた。

「後でやっぱ女がいいって言われてもおれはどうにもしれやれねぇけどな」
「言う訳ないだろ…おれはユースタス屋だから好きになったんだ」
「なら、尚のことじゃねえか」

キッドの不敵な笑みに押されるようにローはキッドの肩を抱き寄せ、いつもより低い視線を覗き見るように顔を近づけた。
ローの伏せられる目元を見届けながら重なった唇をキッドは啄み返し少しだけ長いキスを交わす。

「…唇の柔らかさは変わらねぇ気がする」
「ははっ。そうかよ」

鼻先が擦りあわさるほどの距離で見つめ合い、もう一度キスをした。





「痛くないか?」
「平気だけど……」

暫くもすると、キッドが言い包めたのが功を奏してローも現状に慣れたらしくいつものように過ごしていた。もしかしたらいつも以上に触れ合っている気もするが、キッドもこの機を楽しんでいるのか自らもローに触れ、甘い時を過ごしている。
あっという間に昼になり、二人で簡単な昼食を作り食べ終わった後もその時間は続き、いまはソファに座っているローにキッドは腰かけ凭れていた。
ローに抱っこさせてほしいと言われてこうなったわけだが、ローの鎖骨と首筋に頭を預け、深く腰掛けているキッドはその豊満な胸をローに揉まれている最中である。

「お前、胸好き?」
「…そういうわけじゃ…」
「ああ、お前帽子とか、タオルとか毛布とかふわふわした柔らかいのが好きだもんな…」

ふにふにとして、しっとり柔らかい二つの丘。キッドも朝自分で触ったのでその感触の良さは知っている。自分の身体ではあるのだが、悪くない大きさであり形だった。
ブラジャーなんていうものはないので、キッドの胸は何にも矯正されてはなくローの手と隔てるのは少し厚手のトレーナー一枚。今は女の身体であるキッドにしてみれば幾分大きく感じるローの掌で、たわわな胸を覆われ、やんわりと揉まれるのはキッドにとって初めての体験だが悪い気分ではなかった。
胸を触るローの手に自分の手を重ねながら、キッドはローの頬に頭を摺り寄せた。

「別に直に触っても構わねェんだけど…つーか、触って」
「胸、気持ちいいか?」
「ん…」

ローはキッドの扇情的な横顔を見て胸を高鳴らせながら、服の裾から両手を潜らせる。細く柔らかな線の腹部を撫でながら、素肌の胸を手で覆った。服越しでもわかっていたが直接掌や指に触れる胸の突起はツンと尖って芯をもつ。

「っ……」
「柔らかい…それに温かいな」

もぞりとキッドの身体が揺れ吐息を零す。ローの指が乳首を捉え転がすと甘い痺れが下腹部に走るような気がした。

「…トラファルガー…」
「ユースタス屋…、…」

細い手がローの頬に伸び、後ろに顔を反らすキッドがキスをねだる。求められるがままに唇を重ね、口付けを徐々に深いものにしていった。

「ふ…、ぁ…っ?」
「…ユースタス屋?」

キスの途中、キッドがふと我に返り重なった唇が疎かになった。つ…と糸を引く唾液をローが短いキスで断ち切ってどうしたのかと問いかける。

「あ……、と」
「?」

先ほどまではとくに恥ずかしとも思っていなかったが、キッドはほんのりと頬を赤くさせ始めた。みるみる内に、耳や首あたりまで赤みのさしていく様子にローが不思議に思っていると、キッドが首回りにぎゅうと抱きつく。
ふ、と耳を擽るキッドの吐息を感じながら、キッドの内緒話をするような小さな声を拾った。

「…ぬれたかも」
「…え?」
「何度も言わせんなよ…下、…なんか…」

キッドは下肢の違和感に身を捩る。サイズの緩い下着は肌に密着せず大分遊びができているからだろうか、キッドが心地よさを感じていたその時とろりと何かが零れた感覚があった。
女が悦びを感じた時にどうなるかは客観的には知っているキッドも、自らに起きると戸惑い以上に恥ずかしさがある。
男の場合自ら濡れることは殆どないので、その未知の感覚にキッドは興奮していることを自覚しながらローにすり寄った。

「ユースタス屋」
「ッ…ん…あ」

ローの唇がキッドの細い首筋を食み喉元を舐める。キッドは未だ胸を触っているローの手を掴んで、緩いウェスト部分まで導くと戸惑う指先が緩慢な動作でするりとジーンズに潜り込んで行った。

「ふ…ぅ…」

ジーンズのボタンとファスナーを開けて更に緩くなる下腹部でローの手が自由に動く。
緩い下着の裾から指を差し込んで何もない緩やかな丘を撫でる。尻の方まで走る亀裂の谷間を探ればしっとりと濡れそぼっていた。

「う…ゃ…ヘンなかんじ」
「…すごいな。痛くねェか?」
「あ、っ…平気。けど…音が…あ、はっ…」

浅い部分を行き来する指がくちゅくちゅと濡れた音を立て、キッドは恥ずかしさから困ったように笑う。こんなに素直に濡れる身体は良くも悪くも正直すぎて、これではやりたくて仕方がないみたいだとどこか他人事のように思った。

「は…ん…服、脱いだ方がいい…?」
「寒くねェか?捲ってくれるだけでもいいぜ」
「ん…待って、先…下脱ぐ。裾ひっぱってくれ」

少し考えるキッドだが、これからの行為には邪魔だからとズボンと下着を脱ぎ、上にトレーナー一枚を着るだけの格好になった。改めてローの膝を跨いでと向かい合い、膝立になる。
ぶかぶかなトレーナーの裾は尻まですっぽり隠れるほど長いが、キッドはその裾を胸元まで捲りローの前に晒した。

「綺麗だな…」
「だな…。自分の身体だけど触りたくなるぜ」
「触れよ…それも見てみたい」
「はは…お前だけすげぇ得すんな」

ローはキッドの身体に見惚れつつ胸元に唇を寄せる。柔軟剤の匂いだろうか、キッドの体温でふわりと甘く優しい香りが飛んだ。柔らかく吸い付くような肌に頬を寄せ、ふくらみを食む。確かに欲情もするのだが、それと同時に無性に甘えたくなるような気がした。胸にかぶり付き甘噛み程度に歯を当てて舌で芯を転がすとキッドの腕がそっとローの頭を抱いた。

「あ…、…は、…」

吐息に微かな喘ぎが混ざる。片方の胸を口に含まれて、もう片方の胸を大きな掌に揉まれた。太腿を摩る余った手が、徐々にまた今も濡れそぼるそこへ向かっていく。
キッドは胸を含んでいるローの横顔を見ながら、その髪を掻き上げたり耳を飾るピアスを撫でた。欲情した男の顔が、時折子供のように愛しげな表情になるのが嫌いではなかった。

「ん…も、あんま焦らさなくていいぞ…どうせ痛ェんだし。お前もあんま時間かけてると辛ぇだろ?」
「でも少しくらいは慣らした方がいいんじゃないのか?いくら濡れてるっつっても…」
「やっぱ、バージンだよな…お前の指入ると痛ェし」
「ベッド行くか?」
「ここでいい…けどおれが下になった方がいいな」

抱き寄せた身体を簡単に抱き上げて、ローはキッドと身体の位置を入れ替えた。ソファにキッドを下ろして軽いキスを交わす。

「こっち向きでいいか」
「おう…」
「…緊張してるなユースタス屋」
「まぁな…痛ェって先入観あるからよ…どうしても身構えっちまう」

正面から抱き合い、暫く他愛ないことを喋りながら愛撫を続けていく。女の身体では処女であるが、キッドは抱かれることに慣れているので身体は初心でも素直に反応を見せる。
指が深くまで入れば多少の痛みを伴うが、これも一度貫いてしまえば強い痛みはそれきりで後は慣れだ…キッドはそう自分に言い聞かせ、ローの肩を掴んだ。

「んっ…は…も、いいっ…」
「できるだけ、ゆっくりする」
「あんま時間かけられんのも嫌だけどな…」

開いたキッドの足の間に身体を挟ませて、ローはキッドに被さった。緩く肩に手を回したキッドはふぅ、と深呼吸をして深く息を吐いた。

「……、ゴム付けるのか?」
「まぁ…一応な。ローション付きだから気休めにもなるんじゃねェかと思って」

取り出した自身にゴムを被せ、ローは秘部に切っ先をあてがいローションを馴染ませるように絡めら。
いつもとは違う場所に熱い一物を感じてキッドはきゅっと唇を引き結んだ。

「…ふふ。力を入れると上手くいかないぞユースタス屋…おれも処女相手は初めてだからな」
「………へったくそだったな。最初」
「経験だってユースタス屋のが多いんだからリードしてくれよ」
「ばか野郎…抱いたことあっても、こっちの受け身はおれだって初めてなんだ…できるわけねぇだろ」
「そうか?」

ふっと、キッドが力を抜くのを見ると、ローはぐっと腰を進ませた。圧迫感にキッドは息を呑みぎゅっと目を閉じる。キッドの背を支えるロー手が優しく背を摩り、顔中、至る所にキスを降らせた。

「あッ…く、ゥ…」
「は…っ、狭いな…」

アナルとはまた違う道の狭さにローも低く呻いた。キッドは痛みを感じているらしく、その度に手足を振るわせていた。けれどそれも、もう少しで終わる。亀頭は埋まったのであと少し進めば完全に貫ける筈だ。
ローは苦しげに耐えるキッドの表情を見る。優しくしたいと思うのに、可哀想だと思うのにいつまでも見ていたい表情だと思うのは自分が歪んでいるからだろうかと、ローは自己嫌悪にも似たものを感じた。
歪む顔に愛しさが増すばかりだ…ローはキッドの口を自分の口で塞ぎ、最後は一思いに一気に腰を突いた。
塞ぎ合う口腔に飲まれるくぐもった悲鳴が直接骨を伝ってローの耳に流れ込む。

「っくぁ…!あぁッ!…ぁッ…ぅう…」
「は…大丈夫、今ので全部入った…」
「ッ…ぁ…はぁ…」

キッドの目尻から落ちる涙を指の腹で拭いながら、ローはキッドが落ち着くまでの間は動かずに待った。痛みを逃がそうと忙しない膣の動きを感じるが、一枚隔てている避妊具のおかげかローはなんとか我慢が出来ていた。

「…わるい…も、だいじょうぶだ」
「ほんとうか?」
「うん…」

自分でも濡れた目尻を擦りながらキッドは漸く身じろぎをした。膣壁全体に感じる圧迫感に腰が引けるが受け入れたものの熱さはいつもと変わらず、いつも以上に形をはっきりと感じられるような気がしていた。



   

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