ローと煙草の話
 



(2013/03/15より)

連載してる限りではローはまだ二十歳を超えていないです。
可愛いことにローは律儀に二十歳の誕生日目前くらいになってから吸いはじめます。なんとなく煙草のことはキッドには内緒で。
別にキッドがタバコ吸って怒る、とかじゃないんです。ただ、なんかばれたくない…みたいな。でもやっぱヤニ臭いのはばれますよね。世間ではばれないように香水だとかで誤魔化そうとしますが、実際誤魔化されてるのは本人の鼻だけです。
ローも、匂いでばれます。ローはローの父親が喫煙者なのと映画とか見て妙に憧れていたのとやっぱ、思春期の頃に親父の煙草を拝借したときに「悪くない」と感じたこと。そんなのもありずっと、都会に出て1人暮らしするようになったら手をだそうとか思ってたら素敵な恋人はできるし、恋人の前では良い子でいたいし(ここがローの馬鹿可愛いところである)。
でもとうとう…大学で出来た友人とかも吸ってるし、おれも吸いたい。トラファルガーって吸わないの?そうだ、ね…おれもね。うん……ごめん、ユースタス屋…!みたいな(笑)
なんでキッドを気にする?と言うのも、昨今の禁煙、嫌煙ブーム。それにローの周りの大人の男はタバコを吸ってる人ばっかだったので、大人の男が煙草吸わない=嫌煙家みたいに思ってたんだといい。
わざわざキッドに煙草の話するのもなんかなーとか一人で変に考えちゃってね。ま、面と向かって「煙草、ダメ、絶対」って言われたらねぇ…まだ吸ってもいないのに。
煙草吸い初めて少しして。ローとすれ違ったりくっついたりしたときに ん? と思うキッド。どっかで匂い持ってきたのかな?とかいろいろ思うけど。だってロー、キッドの前じゃ吸わないし。
で、ローが1日家に籠ってた日にも煙たい匂いがするので決定的。ははーん。と思うけど特になんも言わないキッド。キッドの部屋に来て飴とかガムとか食べて口淋しいの我慢してるローも可愛くて。ついニヤニヤしちゃうキッド。「…ユースタス屋?」「なーんもねェ」訝しむロー(ばれてないつもり)

ある日。今日も口淋しいの我慢しつつ(煙草吸いたいけどキッドの側にいたい。勿論煙草よりキッド選ぶけど。意地でもキッド選ぶけど!)キッドの部屋のソファーに寝ころびつつ飴をカラコロ。
本日、キッドもお休みです。1日一緒にのんびり…ああ、でもどっかのタイミングで1本だけでも煙草吸いたいな…なんてローが思ってると、キッドがコーヒー入れて、ソファの足元に座り。トコン。コツッ。テーブルにマグカップが置かれる音とあともう1つ。
そして、シュボッ…と聞きなれているのにここでは聞きなれない音、コーヒーの匂いに交じるように揺蕩う紫煙。ロー、目をぱちくりしてバッと煙の元を辿ります。
何食わぬ顔で煙草を吹かしテレビのリモコンを触るキッド。
「……うそぉ…」
「なにが?」
「えー…?」
がっくり項垂れるローと面白くて仕方のないって顔でニヤニヤしながら煙草咥えるキッド。
「なんだよ…別に吸うなとも嫌いとも言ってねェだろ?」
「いや…吸ってねェみたいだから嫌いなのかと…」
「勝手に勘違いしてんなよ。お前がコソコソしてっからバレたくねーのかと思ってたんだぜ?」
「なんでわかった…?部屋、ヤニ臭かったか?」
「お前な。自分の匂いでばれるとか思わねェのか?」
「………匂わないつもりだったんだが」
自分の服の匂いを嗅ぎながら首を傾げるロー。
「別に、おれはお前の母ちゃんじゃねーし…成人どうこうなら酒の時点でうるさく言ってんだろ。お前に酒飲むなとか言った覚えねぇしな」
フィルターを叩き灰皿に灰を落とし、
「だってユースタス屋が嫌いだったらさぁ…吸うなとか部屋に入るなとか寄るなとか言いそうで」
「ああ…でもま、煙草嫌いではねーよ。高校ん時吸ってたし」
「高校!?」
「驚くことか?金がもったいねーし特にうまいもんでもねぇから続かなかったけどな」
「へぇ…」
「久々に吸ってもあんまよくわかんねーな」
吸いかけの煙草を一度まじまじと見てからローへ視線を移す。
「お…?」キッドの顔が近づいてきて嬉し驚きするローの唇にそれが重なる。リップ音と共に離れていくキッドと、ローの口元に差し出される吸いかけの煙草。
「空気清浄器、いい奴買って来いよな」
「……うん」
ローの口の中にあった飴は今やキッドの口の中。喋ると歯に当たりカラコロと。口からのぞく赤い舌とてらてら光る飴がちょっと、いや大分えろっちーなと思いながらローは差し出された煙草をぱくりと咥えた。
「…うまい」
「吸い過ぎんなよ」
キッドの側で煙草を吸える喜びをかみしめながらのローの一言に、キッドは苦笑しながらローの手前に灰皿を引き寄せてやるのでした。

ちゃんちゃん。



 

- 14 -

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -