pranzo
 




「お前、なんか欲しいもんねェの?」

日中はまだ暖かいが、朝晩は肌寒く感じるようになったこの季節。
晩飯の仕度を手伝い、レタスを適当にむしっているとスパゲッティを茹でる鍋を構いながらユースタス屋が聞いてきた。

「…生ハム的な?」
「生ハムな。メロンにでも乗せて出してやるよ」
「冗談だ、ユースタス屋」

笑って返すと呆れたようにため息をつきながらユースタス屋は冷蔵庫から生ハムを出した。今日のサラダには本当に生ハムが付く予定だったらしい。

「俺の誕生日か?」
「悪いが、サプライズなんてもんは考えんのも面倒くせぇから欲しいもんありゃ先に言って」
「んー…つってもなァ」

レタスの作業を終えると次は大根とおろしがねを渡された。ユースタス屋は固めにゆで上がったスパゲッティをザルに上げてフライパンを温める。
俺はひたすら大根を下ろしながら暫し考えてみるが。

「ねぇなァ…別に」
「…」
「ユースタス屋だって欲しいもんあるか?」
「大根おろし」
「ふふ…少し待ってくれ。もう擦り終わるから」
「ほんとにねぇのか?欲しいもん」

なめこと大根おろしの和風スパゲッティと生ハムの乗ったサラダ。デザートは大学近くのケーキ屋で買ってきたミックスフルーツのロールケーキ。日に20本の限定だったりする。
そんな昼飯を一緒に仕度しながら、少し先に控えているおれの誕生日に欲しいものを考える。
欲しいもの。ないわけではない…気になっている映画のDVD…はレンタルでいいか(1回見れば気が済むし)絵具の欠けた色…は今度買い足そう。
擦り終え、みぞれ状となった大根をユースタス屋に渡すと先にパスタ他の具を炒めていたフライパンに豪快にだぱっと加えて和えた。
途端に香る大根の匂いに醤油の匂いが加わる。

「ねぇなァ…」
「……皿とって」
「ん。欲しいもん、なんていうか…もう持ってるんだよな」
「おれの顔見るんじゃねェよ……もう持ってんだろうが。これ以上やれねぇぞ」
「うん、もうもらえねェよな…それにさ」
「あ?あ、もうサラダ持ってって。フォークとかも」
「はいはい。こうやってさぁ、一緒に飯作ったりとか、なんか…すっげー贅沢な時間だよなァと思ったわけで」
「はぁ?なんもしねぇで飯が出てくる方が普通はいいだろ」

テーブルに皿を並べて、洗物は後でまとめてやるつもりで、スパゲティが冷める前にさっそく腰を下ろす。
向かい合って、一緒に作った昼飯を一緒に食って。この後はきっとおれがコーヒー淹れてユースタス屋がケーキを切ってまた一緒に食って、溜まった洗いモンを一緒に洗うんだろう。

「おれは、ユースタス屋と飯作んの好きだからさ」

普段作る機会はおれにはないし。(朝は起きれねぇし、夜は手早く作るユースタス屋の横でちょろちょろすると邪魔だって怒られるし。1人でなら料理なんてしたくねェし)
だからたまに休日にこうしてだらだらしたりせっつかれたり喋りながら料理するのが楽しみだったりするんだ。(時間あるから邪見にされないしたまにユースタス屋の料理まめ知識が聞けるしなにより傍に居れる)

「誕生日なんもいらねぇから今日みたいな日にしてくれよ」
「安上がりな奴…」
「いや、すっげー贅沢だと思うぞ?」

物を与えられて終わるよりも、ずっと。





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´12年のトラファル誕に、当初書こうと思っていたものをすっかり忘れてしまい急きょ用意しようと書き始めて書ききれず、終ぞ春まで持ち越した産物。
尻切れトンボ。

   

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