はじめての○○ *
 



「ほんとに、いいのか?」
「…うるせぇよ!後悔しそうになるからそれ以上言うな」

キッドの長い前髪が揺れるのをローはじっと見つめていた。
風呂に入ったキッドの髪は軽そうにサラサラとしている。毛先の方へと緩く弧を描く癖毛は鮮やかな赤色。
それから香るシャンプーやトリートメントの香りがふわふわとローの鼻先に届いた。

ローも、キッドも仄かに頬を染めて、今から始まる戯れに気持ちを逸らせていた。





それは、週に幾度かある夜の営みをどちらともなく今日はするだろうと意識し始めた頃。
風呂も入り、夕食の時に話切らなかった会話をぽつぽつと交わして触れ合って、身体も心も距離が近くなった時にふと。

『ユースタス屋って、口で…って、嫌いか?』
『…は?』
『や、その…口で。俺も今までしたことなかったから…』

妙な会話だ、と話題を出したロー本人が苦笑を浮かべながら、以前から気になっていた事をついこのタイミングで切り出した。
もう幾度も身体を重ねた2人だが、極々普通のことしかしたことがなかった。
いや、身体を重ねることが出来る自体とても有り難いことだと常々ローは思ってはいるが…気持ちいいことへの探求心や憧れはあるのだ。
それに、キッドを気持ち良くさせたいと言う気持ちも大きい。
その極々普通のセックスに少しだけ刺激を加えたかったのだ。
オーソドックスではあるが、ローとしてはするもされるも未知のオーラルセックス。

『…フェラ?』
『ん、まぁ…そう』

言い淀むローに対し、キッドはストレートな言い方をする。
ローは初めての相手がキッドではないにしろ、色恋には興味がなかっただけに経験は浅かった。
キッドはそれなりに恋人は居たのと元より回りくどいのは嫌いな性格からか、はたまた、この関係においての羞恥や照れに割り切っているのか往々にして大胆だ。
ローが妙な気恥ずかしさに目を泳がせているのを見てついつい笑いを零しながらしばし考える。

『してほしいのか?』
『してほしい…けど、取りあえず今のはユースタス屋にしてもいいか、って確認のつもりだった』

お互いに触り合いはしたことはあるのだ。
ローは突っ込む方なのでいいが、キッドの方は直接刺激がなければ達するのが難しい。故にそれをローが促したりもした。
ローはキッドさえ良ければなんだって出来る覚悟はある。
ただ、いわゆる女役をしてくれているキッドに嫌がること、悪戯に羞恥を煽ることができずにいるのだ。
ヘタレと言われてしまえばそこまでだが、ローなりの気遣いでもあった。

『いいぜ。…シてやっても』

視線をローの下肢に落としながらキッドは自信無さげな顔で言う。

『イイかは、わかんねぇけどな』





今から致す、始めての行為に両者の頬が紅潮する。
じとりと汗が滲んで来るのを感じながらキッドはそろりとローの股間に手を這わした。
ローが心配そうに伺って来るが、腹を決めた手間キッドも後には引けない。
それもあるが、単純に。キッドもローと同じなのだ…悦ぶならシてやりたい。ただそれだけ。だからこそ。

キッドがローの寝巻のズボンと下着のゴムを一緒に引っ張りずりさげると、しっとりしたソレが現われる。
軽く開いた足の間に身体を屈ませているキッドは、邪魔になりそうだと無意識に目元や頬に落ちる髪を梳いて耳に掛けた。

「…、は……」

見やすくなった表情とその仕種を目の当たりにしてローは胸を弾ませ、熱い吐息を吐いた。
自身の近くにキッドの呼吸を感じ、見られていることで自身は頭を擡げ始める。

「さわ、るぞ…」
「っ…」

ゴクリと喉を鳴らし、キッドはまだ少し柔らかいソレをやんわりと掴み、指で揉み擦る。
掌に熱が籠り、摩擦音も徐々に早くなっていく。

「んン、ン」
「う、くっ」

適度な固さと張が出て来るとキッドは意を決し、はくりとその先を口に含んだ。
ひくっとローの腰が揺れ、キッドはチラリとローの表情を伺う。
余裕なく眉間に皺を寄せ、目を潤ませている顔があった。

「ふ、ふっ、…ふ、…っ…ん」
「は、ぁ…」

舌でツルリとした先を舐めて、肉を食む唇で扱く。
頭を上下する度にキッドの鼻から悩ましい吐息が抜けていった。
嘔吐いてしまいそうで中々置くまで含み切れず、根元は手で擦りながらキッドは懸命に頭と舌を動かしている。
次第に滲んでくる体液の味に刺激されてか唾液が口腔にあふれ、自身を伝いこぼれてしまそうなそれを思わずじゅる、と啜り飲み込む。

「んん。は、…ふ…」
「ィ…はぁ、は…あ…ユースタス屋…」

先を吸われローの腰は大袈裟に揺れた。
見上げてくるキッドに顔を見られたくなくて片手で顔を覆いながら、もう一方の手でキッドの頬や頭を撫でる。
気を紛わせたいのかほぼ無意識の行動だった。
そんな様子のローに目を細めるとキッドは頬をへこませながら、自身に吸い付いた。
ローの息を飲む焦った声が聞こえ、尿道に溜まる先走りを吸い出したかと思えば途端に口いっぱいにもったりとした液体があふれる。

「んっ!ん…ン…んぐッ」
「うあっ、ユゥッ…ううっ」
鼻に抜けた風味にキッドはグッと喉を詰まらせ自身から口を離す。ぼたぼたと零しながら口を手で押さえていた。
ローは余韻に浸るまでもなく、慌てて身体を起こしたキッドの様子を伺う。
自分の脱いだシャツを急いで引っ掴みキッドの口許にあてがおうとする。

「ユースタス屋っ…悪い、ほら早く吐け」
「ン…〜、んん、ぅ」

グッと顔をしかめ、相変わらず口を左手の甲で塞ぎながらも、待て、と右手の平を突出す。
ハラハラするローを余所に、ごくりとキッドの喉が上下する。2度、3度と。

「ごほっ、ンっ…ぅえ」
「!…飲んだのか?」
「ん、わるい…みず…」
「待ってろ」

喉に絡んですっきりしないのかキッドは頻りに喉を動かし、ローが持って来た水を二口飲むと漸く長いため息をついた。

「大丈夫か?」
「おう…平気だ」
「吐き出せよ…無理しなくていいんだぜ」
「案外イケるかもって思ったんだよ」

未だにローが掴んだままのローのシャツを取り、それで口許や顎、手を拭う。

「不味いんだろ?」
「美味くはねぇな…ま、喉元過ぎりゃあ…」

苦く笑うキッドだが、嫌がってる様子はない。
ローはキッドをギュッと抱き、肩口に顔を埋めた。
キッドはローの背に手を回し軽く叩く。

「気持ち良かったか?」
「ああ」
「ならいい。…次、するときゃもっとマシになってると思うぜ」
「……期待してるよ」

男らしく笑い誘ってくれるキッドにローは敵わないなとへらりと笑いながらいつものように身体を委ね合う。
身体に触れるローの手に身を捩らせるキッドの身体はもどかしい熱を持ったままだった。



END



------
初めてのフェラ。
ローは自分の欲望よりもキッドの気持ちを優先したい。


   

- 49 -

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -