語る夢は一歩ずつ、着実に
 



「お前、今バイトとか学校忙しいか?」




バイト帰りの20時過ぎ。ユースタス屋の部屋で遅めの晩飯を食おうとしている時だった。
ユースタス屋もおれに合わせまだ食っていなかったようで、2人分の食事がテーブルに乗って行く。
おれもせめてばかりの手伝いをする…ユースタス屋が注いだ汁椀を運んだりとか。
そうしながら、ふと思い出したようにユースタス屋が聞いてきたのだ

「バイトとか学校忙しいか?」
「いや?別に…普通?」

食卓が調って俺は向かいにユースタス屋が座ってから手を合わせて頂きますをする。ユースタス屋が飯を作ってくれたときには欠かさない。これは俺なりのルールだったりするわけで。
具沢山の味噌汁に生姜焼きなどなど…ほんとに美味い。

「ドレッドの奴が店の内装を変えてぇって言っててな」
「へぇ?」
「つっても壁ぶち壊すとか言う大掛かりなもんじゃなくて、壁の色変えたり少しだけ弄ったりしたいんだと」

ドレッドとは、ユースタス屋の一つ下の後輩で美容師をしてる男だ。そう言う縁もあってユースタス屋もキラー屋も行きつけにしている美容室は、自然と俺もペンギンもシャチも利用し顔馴染みだ。
そんなドレッド屋の店がこの度少しだけ大掛かりな模様替えを考えているとユースタス屋に話したらしい。
ユースタス屋の会社が内装リフォームやデザイン関係の仕事してるからこその話題だったのだろう。

「別にウチで引き受けるのは簡単だけどよ…お前、バイトしねぇか?」
「…は?」
「いくら小せぇ会社でも俺んとこに丸投げするとデザイン料から何から見積もりだけでも実際結構すんだよ。けどお前がやれば格安で出来んだろ」
「ちょ、おいおいユースタス屋…本気か?」
「ドレッド達が気に入れば通る案ではある…けど、やってみて損はねェと思うがな。出来ねぇことはないだろ?」

ニッ、と少しだけ意地悪を含んだ笑みに俺は肩を竦めた。
これはユースタス屋がくれたチャンスと受け取って良いんだろう。
確かにやりたかった事の一つだ。前に、何の話の流れだったかは忘れたが、店内の雰囲気も造りも惹かれるカフェに入った時、「こんな店を作ってみてェかな…」なんて言った事があった。
ユースタス屋は多分…覚えててくれたんだろう。
漠然とした俺の夢の一歩を今のうちに測るチャンスだと。

「……明日、ドレッド屋んとこ寄ってくる」
「あぁ。そうしろ」


素っ気無い言葉で唇は笑みを象らせてそっと背中を押された、俺は




(ユースタス屋)
(ん?)
(すげぇ、楽しくなってきた)



   

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