頼りにしてる
聞き慣れた足音と鍵を取り出す音がしてユースタス屋が帰ってきたな、と寝ぼけた頭で考える
今に開錠とドアの開閉めする音がする筈と無意識に良くある日常を頭で追っているとドガンッ!と自分の家のドアに何かが激しくぶつかる音が聞こえた
「!!?」
アルミのような鉄製のドアはそれは良い音がしたが寝ぼけたおれの目を覚ますのには些か驚かされる。身体がビクッてなった
「な…なんだ…?」
ユースタス屋か?とドアスコープを覗くとなんと言うか…真っ赤だった。
ユースタス屋の髪の毛っぽいなァと見当を付けながら内側からコツコツとドアを叩くと弾かれたように赤が退く
やっぱりユースタス屋だった。
なんかすげぇ焦った顔をしてるのを可愛いなと思っているといつの間にか凄みのある形相変ったユースタス屋が荒々しくドアを開けてきた
「お、うおっ…ユースタス屋、どうした人ん家のドアにへばり付いて」
「トラッ…テメェ…!」
「え、…なんだ、ちょっユースタス屋!?」
いきなり胸倉を掴まれ玄関から引摺り出され何事だと目を白黒させる。裸足なんだけどおれ…
「あ、あれどうにかしやがれ…」
隠れ切れる訳もねぇのにおれの背後で腰の引けているユースタス屋が少し吃りながらユースタス屋の部屋の前を指差した
「…久々に見たな」
「なんでもいい早くヤれ…ッ」
「わかったわかった…取り敢えずなんか履かせろ。すぐ終わる」
ぐいぐいと背を押すユースタス屋に苦笑いをしながら踵を履き潰した靴を足に引っ掛けペッタペッタと鳴らして歩きユースタス屋が恐怖する対象と対峙した
怖いかね、これが。
「悪ィな、お前に怨みはねェがユースタス屋が怖がってるもんで」
だんっ。と軽く上げた右足を踏み下ろした。
クシャリと細やかな感触。
「ユースタス屋、ティッシュ持ってこい」
「……おう」
おれの部屋で待機中のユースタス屋に頼み箱ごとティッシュを受け取ると未だにおれの靴の下で足を数本ヒクヒクさせている奴を足の一つも残さないようにティッシュに包み拾い上げトイレに葬った
「終わったぞー」
「手ぇ洗えっ」
「…ユースタス屋の方が十分怖いんだがな…」
今し方対峙し、退治したゲジゲジよりも…と手を洗った
「まだいるかもしれねぇ…」「いねぇよ」
用心深く辺りを見るユースタス屋の先を歩き家主より先にユースタス屋の部屋に上がり込む
「奴等一匹いたら死ぬほどいるんだぞ」
「ゴキブリじゃねーんだから…」
しかし、虫をここまで怖がるとは。だが高々5cm程のゲジゲジに此所までびびるユースタス屋は正直可愛いし、頼られるのも悪くはない
しかもユースタス屋の方から部屋までついてこいと言うオプション付だ
「知らねぇだろうがユースタス屋」
「あぁ?」
「ゲジゲジは益虫とも言えるんだぞ」
「ハァ?」
適当こくんじゃねぇよ、そんな表情のユースタス屋をまぁまぁと宥めながら続けた
「ゲジはゴキを喰ってくれるんだぜ?」
「……」
「ゴキに比べちゃよっぽど可愛らしいじゃねぇかゲジなんて。奴等から悪さはしてこねェよ」
ゲジがゴキを始末しているのを想像したのかユースタス屋がものすごく複雑なあからさまに気持ち悪そうな顔をしたがおれはそれにムラ…いや、やっぱり可愛いと思った
「まぁ…今日は泊まってやる。安心しろ。ゴキでもゲジでも退治してやるさ」
「トラファルガー…」
「泥棒と幽霊はまかせたぞユースタス屋」
「……」
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日常の一コマ
少しの間拍手お礼に載せてました
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