俺が頑張ろうお前の為に
 



「似ている奴がいるだろう」
あー。
まぁ、確かに…ね。




実家からクール便で送られてきた発泡スチロールの箱を抱えユースタス屋の部屋を訪ねた。程なくして出て来たユースタス屋に差し出す。

「なんだ?」
「実家から。カニ」
「…丸ままか?」
「丸まま…?ああ、そうそう。丸ままの奴」
「いらね」
「え」
「いらねー。テメェで食えよ。それかキラーでも誘えっ」

蓋を開けて見せてやろうとしたらユースタス屋はすかさず蓋を押さえ付け口早にいらないと告げて、俺は入りかけた玄関を追い出され、バタン!とドアを締められた。

「…なんで?」



立ち尽くしていたユースタス屋の部屋の玄関先から漸く動き自分の部屋に戻ってきた。
ユースタスに追い返されたことがもの凄くショックで堪らない。
ユースタス屋を怒らせるような事を何かしたっけか。
音沙汰しないユースタス屋の部屋に接する壁を半泣きで見ながらキラー屋へと電話をかけた。

「キッドはカニが苦手だからな」

説明した後に返ってきたキラー屋の言葉に「ハァ?」と声が出た。

「苦手って…ユースタス屋、寿司屋行ってカニの握り普通に喰ってたじゃねェか。カニ缶もスティックもむしろ好んで喰ってんだろ」
「良く見てるな」
「そりゃ当たりま…じゃねーよキラー屋」

当たり前だけど、…それにユースタス屋は食いもんって好き嫌いねぇはずだ。
キラー屋に言った通り、普通にカニも喰ってたはず。

「持って行ったのは一杯丸ままだったんだろ?」
「丸…あぁ、丸ごとな。」
「だからだ」
「…だから?」
「キッドは蟹や海老の丸ままの姿が苦手なんだ。海老は大分克服したらしいけどな」
「……はぁ?」
「似てるだろ、キッドが嫌いな奴等に」
「ん?………まさか」
「キッドが言うには似てるんだそうだ。足が多くて硬くて…虫っぽいんだと」

思わず蓋を開け、確認してしまった。
足が多くて硬い、ね…

「ちなみに腹側は耐えられないくらい気持ち悪いんだそうだぞ」
「…」

それなりの大きさで身の詰まった蟹を持ち上げて腹側を見てみた。
あぁ、まぁ気持ち悪いかもな。

「キラー屋は今日暇じゃねェの?」
「悪いが生憎」
「仕方ねぇな…」


なら、俺が頑張ろう。





(ユースタス屋、カニ茹でたぞ)
(…テメェが?)
(ああ。キラー屋は来れねぇって言ったからな。茹で方とか電話で聞きながら…鍋にギリギリ過ぎてすげぇ苦労したぜ。足、もいで来た…これならまだ平気だろ?)







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足、いっぱいある生物って怖いよね…。私は海老が怖い。食べる分には好きだけど。

ローはキッドが(食べる分には)カニが好きってことを知った上で実家から送ってもらったので意地でも食わせてやりたかったらしいよ。
カニ茹でスキルが身についたローさん。愛の力ってすげぇ

   

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