キミの隣には 2
 



「お前らまだ帰えらねェのか」

ムスッとしたローのそんな声に俺とシャチはそれぞれ腕時計と携帯で時間を確認した。19時前…

「って、まだ7時前じゃん!?」
「もう、7時だ。さっさと帰れ」
「俺たち、晩飯も一緒に食うつもりで来たんだけどな…食いに行かねぇ?」
「…、いや…いい」
「…」
「…」
「ペンギン!これ絶対女がふべっ!!」
「うるせぇ、さっさと出ろ」

キャスケットの背中を蹴りながら俺たちを玄関へと追いやるローにはよほど俺らに紹介したくない誰かがいるらしい。
シャチじゃないが正直気にはなる。

「俺たちにくらい隠さなくてもいいと思うけどなァ、なぁペンギン」
「そうだな」
「…別に隠してるわけじゃねぇ…ただ、」

階段を下りながらシャチとローが恋人云々の言い合いをするが共同フロアなんだからもう少し静かにしてほしい。
そんなことを思って1人先を歩いているとアパートの住人だろうか。赤い髪をした人と鉢合わせた。

「…あ、すみません」
「いや」
「ユースタス屋!」
「なんだ…テメェか。あんまり階段で騒ぐなよ。声響いてんぞ」

ローと知り合いなのか、ローの顔を見た途端に苦笑混りに愛想笑いをする赤い髪の人がじゃあなと擦れ違って行く。

「…聞いてたか?」
「人聞き悪ィな…"聞こえた"んだ。気にしてねぇよ、じゃあな」
「ちょ、……と、…待って」

ぼそぼそと2人で話すロー達に俺とシャチは興味持たざるをえず、ついつい様子を伺ってしまう。
その内に赤髪の人の腕を引いてローは俺とシャチを見た。

「紹介する…俺の、恋人だ」
「は、」
「へ、」
「……」

はぁ、と赤髪の人が溜め息を吐いてローが頭を掻く。
俺とシャチはあんぐりと口を開けて間抜けな面を晒らしていた。

「…お前らメシ食まだだろ?」

どうリアクションしていいのかと迷って居ると赤髪の人が口を開いて、俺たち3人は馬鹿みたいに一回頷く。


「おし、メシ食いに行くぞ」




 

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