はちみつリップ
 



寒い季節となってきました。キッドは乾燥肌を気にしてそうなので男性用化粧水等は使っていると思います。念入りにではなく、お風呂上りや洗顔後の突っ張りを解消するためにペペペ、と。リップクリームもカサカサが気になってきた頃に薬局でワゴン売りの89〜99円とか投げ売りの奴買うのではないしょうか。最初は使ってても使うのが面倒だったり、小さいので失くしたりして冬の間に2回くらい買いなおしそうですけど。冬以外の季節は特に使わないので、ワンシーズンだけですね。毎年冬に1個ないし2個リップを買うキッド。

「うわ、お前血ぃでてンぞ?」
「?」
「鼻じゃねェよ、口だ、下唇」
キッドが帰宅すると、先に帰宅していたローが。顔を見合わせた途端、ローの下唇に血が滲んでいることに気が付いたキッドは指摘してやりますが、ローは唇からだとは思わず、取りあえず鼻の下をこすりました。
「あ?あ、ほんとだな」
「乾燥して割れたんじゃねェか?」
「そうかもな…っ、て」
「舐めんなよ…余計荒れるぞ?」
舌で血を舐め唇の傷を触って見ると、ちょっと深く割れているようでピリリと痛みます。
キッドはごそごそとポケットを漁りますが、目的のものは見つかりません。
「会社に置いてきたな…」
「なんだ?」
「リップ。持ってたんだけど、多分会社に置きっぱなしだ」
「…そっか」
恋人同士ですが、ローはキッドのリップを借りて間接キスのチャンスを逃し少し残念そうです。
「ああ、いいのあるな」
「いいの?」
「んー…、これ」
調味やストックをまとめている棚からキッドは瓶を取りローに差し出します。
「蜂蜜だな」
「蜂蜜だ。しばらく唇に塗っとけ」
「……意味あるのか?」
「唇の蜂蜜パックとかあるらしいから気休めになるんじゃねーか?」
「うーん」
「物は試しだ。お前ほんっとがっさがさしてるぜ?唇…ほれ」
カパッと蓋を開け、キッドは薬指に少しだけ蜂蜜を掬いローの唇に(半ば無理やり)乗せました。
「甘いな…」
「舐めるなって、意味なくなんだろ」
指に残った蜂蜜を舐めながら、ローがまた唇を舐めようをするのを注意します。
「ふっ、お前…天ぷら食ったあとみてーな」
「べとべとする……」
ムッと顔を顰めたロー、ですがすぐに何か思いついたのか企てを思いついた顔をします。
「んっ」
「…べたべたするだろ?」
「お前…。意味なくなるっつってんだろ?」
蜂蜜の塗布されたローの唇がキッドのそれに重なりました。ぺっとりした感触が、少しだけ唇の重なりが解けるのを名残惜しそうに感じさせます。
「あま…」
「でも美味いだろ?」
「また唇荒れんぞ」
「明日はリップクリーム買ってくるよ」
ぺろりとローの舌がキッドの唇を這い蜂蜜を舐めとります。くすぐったように吐息で笑うキッドも、甘い味に誘われて口を開くのでした。


*ちょっとした蜂蜜プレイ。
この後、唇ヒリヒリするローとキッドです。仕方ないね。ちゅーのし過ぎだね。




 

- 28 -

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -