小学校高学年の時、オナニーを教えてやると言って近所の兄ちゃんにペニスを扱かれた。
そこがおれの人生の狂い始まりだったのか今となってはどうでもいいが、その兄ちゃんには中学まで所謂性的な悪戯をされた。
いつの間にか姿を見かけなくなったのは、多分就職とかそんなので家を出たんだろう。
機を狙っていたようだが、その兄ちゃんに突っ込まれることは終ぞなかった。良いように身体を手懐けられっぱなしとなったおれは、尻の穴を弄られる快感を覚えこんでいた。
その近所の兄ちゃんはやっぱ、年上ってのもあっておれには怖い対象であり従順にしていたつもりだが、兄ちゃんが気に入らなければ叩かれたり、抓られたりもしていた。
痛くて身体を竦ませて泣いて、でもそんなおれを見て一層興奮する兄ちゃんのことを知っていた。
最後にはよくできた、頑張ったと褒めてもらうのは嬉しかった。

そんな身体を持て余して高校に入ると、ある教師に目を付けられた。素行がいいつもりではなかったから、最初その教師がやけに絡んでくるのは『馬鹿な生徒ほど可愛い』みたいなもんだと思っていた。気に入られるのは悪くないし、冗談交じりに素行の悪さは身だしなみの悪さを躱してしまえるのは楽だし。
だが、その日…「お前は年上の男の前だと発情期の猫のようだ」そんなことを言われた。
「先生にはわかる…隠さなくていい『先生も一緒だから』」
遠まわしに、お前男が好きなんだろう、と言われたらしい。女の経験がないわけじゃなったし、彼女になりそうなやつもいたけど、その教師に腰を撫でられれば、それこそ猫のようにすり寄ってしまった。
無意識だったが、でも待ち望んでいた覚えもある…。あっという間にキスをしながら服を肌蹴させられ、教師の机の上で初めて尻の穴にペニスを突っ込まれた。
キスの合間にあれこれ聞かれたが、素直に答えた。尻の穴は触られてたけどチンコは突っ込まれたことはない…そう話すおれを教師は手揉みでもしそうなやらしい笑みを浮かべておれの尻を舐め回し、指を突っ込んで掻きまわす。
あの近所の兄ちゃんの拙い愛撫ではなく、男の身体を知り尽くした巧みさにおれは直ぐ情けない声でよがり、精液を噴き上げた。素質があると褒めちぎられて嬉しくなったおれは、バックから初めて串刺しにされた。
3本纏まった指よりも、丸々とした肉筒が直腸を扱き、括約筋を開く違和感と生の肉の熱さが何倍も気持ちよくておれはすっかり落ちた。
痛みが全くなかったわけじゃなかった。教師に痛い、無理だと弱音を吐いたのは忘れられない。10を超えてからあんなに泣きじゃくったのはあれきりだろう。それほど痛くて、一時切痔にもなった。
でも行為が終わってしまえばじんじんと火照って痛む尻の穴が淋しくて、直腸を揺すられる違和感と、痛みがないことに焦れた。
教師が切れた部分に丁寧に薬を塗りこんでくれたがその度に傷を触られる度におれは漏らしそうな程快感を感じでいた。痛みの所為ではない涙を浮かべるおれを見て教師は「マゾなんだね」と言った。
痛いのが好きかと問われた。少し違うことをするのが好きだと自分でも自覚した。
尻の穴を、両手の人差し指を突っ込んで左右に開くのが好きだった。治りかけの傷がピリリと開くその痛みが堪らなかった。
教師からはいろんな玩具を買ってもらったし、ホテルにも連れてってもらった。所謂恋人ごっこもしてくれたしメールや電話での指示とかおれを喜ばせることは上手かった。
ただ、その教師は、教師だからか単に趣味ではなかったのか、傷になるようなことはしなかった。
切痔になってもまず先に完治させることを促してきた。まぁ悪化して最悪なことになればセックスもできないし本末転倒になるから傷は早く治すに越したことはないが、近所の兄ちゃんのように頬を叩くことも手荒にすることもしなかった。
軽く、その場の盛り上がりで尻を叩かれることはあっても、おれが大丈夫だといっても精々乳首を強く引っ張る程度だった。
教師のくれる痛みは、全部尻の拡張の時とか、尿道に棒突っ込むときに生じるものだけ。おれの小便するとこを、ケツから汚ェ汁漏らすとこも悦んで見て、させてたのに。
頬を叩いて、たまには腕とか縛ってくれても構わないって強請ったらあっさりと捨てられた。おれも3年になって受験とかそういう時期だったし、もしかしたら新しい生徒を見つけたのかもしれない。
色に染まりきったおれよりも、汚したいキャンバスがあったんだろう。
おれは教師のことは好きだったが、あっけないくらいに割り切った。その頃には十分なほど教師から与えられた玩具もあったことだし。

それからおれは巷で言われる馬鹿大学に行き、バイトや遊びの日々を過ごした。バイトは深夜のバーとか、キャッチ紛いとかいろいろ手をだし、その関係でS嬢と知り合った。
おれの容姿は女には受ける方で、誘われればさして選り好みなく一夜でも付き合ったがそのS嬢は最初からおれに「マゾっぽい」と声を掛けてきた。
SMクラブで働いてるらしい彼女は、店に来るのはイケメンでもかなりの変態か、あとは豚男か痩せぎすのネズミ男だと笑っておれに聞かせた。
SMクラブでは台本通りや、ごっこ遊びの範疇なのでよっぽどの真性は稀で日々退屈してると言った。
「だからペットを飼おうと思ったのだけど」煙草を吹かし、S嬢はケバイ目元を笑わせた。
おれは女に飼われる日々を過ごすことにした。上からの態度や、高圧的な言葉尻に相手が女だと言っても恐怖が湧いた。逆らってはいけないと教え込まされ、おれは従順になる。
彼女は稼いでいるらしく、家はマンションの最上部に近く煌びやかな部屋に住んでいた。おれはそこで一切の着衣は許されず、首輪をされ鎖で引っ張りまわされた。
尻を見られた時に一人遊びをしていることを直ぐに言い当てられた。「貴方、自分でケツ穴遊びしてるの?」長い付け爪をした指で尻の肉を鷲掴みにされ左右に広げられる。
久々の他人の手におれは直ぐに犬のように鼻を鳴らした。尻に吐きつけられた唾を塗りこまれ、細い指が2本突き立てられる。濡れの不十分な粘膜を無理やり摩られるのは不快なのだが、おれはそれが好きだった。
S嬢には、器官が締まるほど首輪を引かれ、煙草の火を押し付けられたり、当たり前のようにぺ二バンで侵された。
ゴルフ球程度なら入るおれの尻に2個も3個も球を突っ込んでひり出すさまを見られた。ワインビネガーを注がれ悶絶するおれを煩いと腹を踏んで詰る。
責め苦にヒィヒィ言って最後には啜り泣くような状態のおれに、赤ん坊を甘やかすような幼児言葉で宥めながら、女の細い拳を手首の向こう側までおれの尻の穴にずっぷりと突っ込んで抜き差しをした。
S嬢曰く、そうなったおれは女のようにか弱くて可愛いのだという。そんなおれで満たされるのだと言った。
そんな日々も、割と早く終わった。おれが男もイケると知られたからだった。別に隠していたつもりはない。過去を語ることは互いになかったし、S嬢がゲイ嫌いだと思わなかったからだ。
おれはゲイのつもりはなかった。S嬢とも生活した様に、自分の身体が満たされればどっちでもよかったのだ。
しかし、おれの尻が『男の使用済み孔』とわかってからすっかりおれに興味を失ったらしかった。悪い女ではない様で、別のS嬢を紹介しようかとも言ってくれたがおれは断った。



「っ…は…」

太さ3.5cmほどのディルドを舐めてしゃぶり、おれは自分の乳首を捻った。
細い方に入るディルドだ…ただ、長さは長いのを選んだ。底には吸盤がついていて凹凸のない平らな場所に張り付けて自分で腰を振れば割と気持ちい。太さで楽しめない分、長さでS字結腸の奥まで食らえる。

「んっ、ふ…」

一人の時には声は出さない。と言うかでない…妄想に浸りながら自分を侵すことに専念するからだ。
今日は、懐かしいことを思い出していた。思えば、良いように遊ばれていただけで恋人と呼べる相手はいなかったのだと思う。
ディルドの吸盤を床に張り付けて、膝立をしてその上に座る。長くて素材が柔らかいので入れる途中でまだ入っていないところがぐにゃぐにゃ曲がって入れにくいのだが、うまい具合に尻を動かすとあとはおのずと直腸運動でずるずる飲み込んでいく。結腸を押し上げ、ずん、と軽いつっかえの後には全てが入った満足感に溜息が漏れた。

「あ…トラファルガー…ッ」

一人遊びも嫌いではない。いや、嫌いではなかったが、最近では1人遊び中も、そのあとも寂しさが募るばかりだ。
恋人と、なかなか会えていない。彼はこの春就職してバタバタと慌ただしい日々を送っていた。それでも電話やメールをくれるし、ほったらかしなわけではないが。
懐かしいことを思い出していたのは、これが理由だったりする。以前ならば、こうして相手と会えなくとも平気だし、その都度相手からはオナ禁を言い渡されたり、会えない時間さえもプレイの一環だった。身体が疼いて寂しくはあっても、心が…なんてことはなかったのに。

「ぅ…くっ…は、はっ…ぁー・・」

恋人は、トラファルガーは普通に格好いい。女だって選り取り見取りだっただろうに何故か、あいつの方からおれに告ってきた。なにかの罰ゲームでもさせられてるのかと思ったがそうではなく、本当におれを好いてくれたらしい。
おれは断ることはせず、頷いた。それからは幸せの日々しか来なかった…普通の、話に聞くような恋人同志の日常を送った。
おれに男の経験があるなんて知らないトラファルガーは優しく、トラファルガーも男相手は初めてなようで何もかも手探りだった。おれは演技ではなく、抱かれたことが初めてでもないのに処女のように緊張して、慣れてるはずの尻の穴はトラファルガーに慣らしてもらっても痛みがあった。
トラファルガーが下手だったわけではなく、おれの緊張が本当にすごかったからだ。ガチガチになるおれを、トラファルガーだって余裕がねェだろうに宥めてるのに必死になってた。
旅行だって行って、付き合って1年があっという間に過ぎていた。おれもやっと普通の恋人ってやつが味わえて嬉しかったが、身体に染みついたマゾヒズムは消えなかった。
トラファルガーは良くおれを見ている。優しげな眼だが、それはペットを見る様なそれでもあって、観察している…と言うのか。
とにかくおれを見るその視線が、おれの身体を疼かせた。

「んんっ…も、っと…ッ」

トラファルガーの視線を思い出すだけでゾクゾクとしたものが込み上げてくる。トラファルガーの癖や、声や、吐息を思い出しながら必死で腰を揺らした。ずるずると長いストロークで直腸を犯していく。
おれは、幸せな日々を送る傍ら、トラファルガーに酷く犯してほしいとも思った。思うたびに自己嫌悪してトラファルガーに申し訳なく思った。トラファルガーは大事におれを扱ってくれるのに。
トラファルガーに、嫌われたくないと思った。だがおれの被虐趣味はこのままでは必ず最悪な形でトラファルガーにばれると思った。
どうせ、別れるなら…少しでも痛みの少ない方がいい。だからおれは決心してトラファルガーに自分から、マゾであるとカミングアウトしたのだ。

ピルルル…、とスマホが着信を知らせ、そのけたたましい音に驚き腰の動きを止めた。億劫だと思いながら、尻に長いディルドを銜え込んだまま少し身体を伸ばして放り投げていたスマホを引き寄せる。

「ッ、は…トラ、ファルガー…?」

嬉しさと、今までの行為で上ずった声で電話に出る。からかうように笑う声が耳を擽った。おれの声で、今何をしてたかわかったんだろう。
こんなおれで呆れないのだろうか。

「ん、ぅ…まだ、1度もイってねェよ…」

「1人、じゃ…イきにく…トラ…っ、ふ…っ、ぅ」

「あ、でも…電話…あっ、あ…ちが、バカ…」


『善処、しようと思う…』あの日、別れを告げられる覚悟でおれはどこか淡々と話していたと思う。やっぱりというか、動揺するトラファルガーだったが、確かにそうい言ったのだ。
『おれはユースタス屋が好きだから、別れようとか思わねェ』と、今までにないくらい荒いキスをくれた。

「トラファルガーっ、も、出るっ…あ、やだっ…がまん、やだ…出来ねェ…や、ぁ…っ」

電話越しに、トラファルガーの落ち着いた声が届く。もう声聞いてるだけで頭も身体も沸騰してどうにかなりそうなのに、「イクのを我慢してみろ」なんて言う。
そんなのしたくないのに、逆らってあられもない声上げながら出したいのに、おれは達することは出来ずに、腰だけ狂ったように揺らしていた。
トラファルガーがこの場にいるわけじゃないのに、トラファルガーがおれの状況を聞いてくるたびに、トラファルガーの視線を感じてしまう。
いつものように、じっと観察するようなあの視線でおれの身体を舐め見ている様な気がする。

「たのむっ…も、イかせて…」

掠れて音にならない声で懇願すると、少しの呆れと、優しさの含んだ声が許しを告げる。

「〜〜〜っ!!」

スマホを耳に押し付けたまま、目の前がスパークする程の絶頂に達する。へたりと床に寝そべると直腸運動でディルドが吐き出されぶりんっと尻から飛び出た。ローションや直腸液が床にこぼれるが今さら気にしない。後片付けの時に残念な気持ちにはなるが、今はまだ高揚感は続いていた。
同じ液体に塗れ、床に転がったディルドを引き寄せるとまだ自分の胎内の温もりが残っていた。

「ハァ…ん、すげぇでた……やってねぇよ…今日だけ。ほんとだって!だって、この間お前と外で会ったくらいだし…」

ぺろ、とディルドの先に舌を這わす。ディルド独特のシリコンの臭いと直腸液の匂いがするがこれも気にならない。自分の尻に入ったものくらいどうと思うことはない。
電話の向こうのトラファルガーは、毎日オナってるのかと聞いてきたが俺だって自分の意志で我慢位するんだと言ってやった。
当たり前に、トラファルガーに抱かれた方が気持ちいし我慢の後だと更にいいのだ。
ディルドだって、トラファルガーのチンコより小さいのを選んでいる。トラファルガーと恋人になってから、特に最近では太いディルドは入れていない。
トラファルガーがおれに入れるときに太いのを使えばそれは入れるが…。

「あのさ…」

次、いつ会えそうかと聞きたくなった。勿論会って、会えばセックスしたくなるけどそうじゃなくて。
歯がゆくなって、口元に当てていただけのディルドの先をガジガジとかじる。本物のペニスにやったら悶絶くらいでは済まないだろうけど、本物ではないから遠慮はしない。
殺したような笑い声がスピーカーから伝わってきた。

『それ、おれのチンコだと思ってるならやめてくれ…想像しただけで痛い』
「ふぁにあ?」
『ディルド噛んでるんだろ?口に含んでる音が聞こえてる』
「フェラの音?」
『ステーキ肉食ってるみたいな咀嚼してる音だったけどな』

『もう落ち着いたから平日は定時に帰れるし、日曜は当分用もねェよ』
「…ん」

ディルドを吐き出して、おれは嬉しさで口元が緩んだ。オナニーしながら、電話して、汚れた下半身もそのままに床に寝そべってニヤつくおれを他の誰かが見たら相当頭がいかれてると思うんだろうが構わねェ。
トラファルガーの暫くかまえなかったこと詫びる声を聞きながら、おれは幸せに浸るのだった。


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