痛がっても平気だから止めずに続けてくれ。 基本ルールとしてそう言われた。自分では、おれは優しくない人間だと思っていたが、ユースタス屋に言わせれば「自分に付き合わせるのには申し訳ないくらい優しい人間」らしい。 なんだかユースタス屋に釣り合わないと言われた気がして、乳首を抓む指に力がこもった。 「ヒ、ィ…!」 「フフ…そんないい声で啼くんだなユースタス屋…」 本当に痛かったのだろう、涙を浮かべて躰を捩じらせたユースタス屋を笑ってやる。 ユースタス屋にマゾを告白されてから、おれはてっとり早く世界を知るためにネット検索を掛けた。 特に必要もなかったので、エロサイトすら検索したことがなかったおれがいきなりSM趣向のサイトへ飛び込む。目眩を起こしかけた。 適当にクリックしたそのページはオフで行ったイベントの写真などを載せるSM情報サイトだった。 ギャラリーページに、背中一面に返しのついた釣り針を刺し、それを糸で釣っている写真や、鍼灸針を性器のいたるところに刺しているものを見つけどん引きしてまう。 行き成りコアなものを見てしまい撃沈するが、おれは半ば意地になってギャラリーを網羅した。 見慣れて来るとそうでもなく思えるのが不思議だ。 それからいろいろなサイトを見て心構えはなんとなくできた。 「痛かったか?涙目になってる」 「う、う…トラ…あ、あ――…」 おれには元からの加虐心は多少あっても痛めつけて悦ぶ趣味はなかった。ただ、ユースタス屋の聞いたことのないような引き攣った声や顔を歪めて泣く様子を見ると愛しいと思う。 痛みに躰をくねらせるユースタス屋を見て笑ってしまったのは、けして嘲ているのではない。 なんというか…この状況でこの表現を出すのはどうかと思うが、公園で遊んでいる我が子を見守って微笑ましさ故…ついつい、顔が綻んだというような。 涙が滲んで濡れた下瞼に舌を這わせ、反射的に閉じる瞼の境を舌先で往復する。ざりざりと舌に触れる睫毛を感じてからゆっくり顔を離した。 おれ自身が、普段しない行為に興奮し、妙な背徳感に背中がぞくぞくする。それもユースタス屋が一瞬瞼を開いたので舌先が目玉を舐めた気がしたのだ。ユースタス屋は自らマゾと言うくらいだから自身に対して相当なS心を持っているのだろう。怖いものほど見たくなる質らしく、無意識に自分を追い込んで楽しんでいるようだ。 唾液に濡れた目をシパシパと瞬かせるユースタス屋は頬を染めて息を息を荒げている。 爪の先で乳首の先を押しつぶしてやるとまた引き攣った声が上がった。 爪の間に乳首の肉が挟まって妙な感覚が指先を刺激する。グリグリと指を回せば反り返る背中、一瞬逃げようとするそぶりを見せる足、それでいて健気にじっと耐える姿勢…。 とてもかわいいと思った。 「は…ぁ…」 「赤くなっちまったな…」 「平気…」 先ずは愛撫から。いつもの愛撫少しだけ変えて、痛みを伴わせるようにしたり荒くしたり、わざと言葉で煽ったり、そんなものを取り入れてみた。 やはり今までとは反応は違い、一層よがるし高揚していた。 だんだんとステップを上げていきたいと言うおれにユースタス屋はそれでいいと言ってくれ、愛撫以降はいたっていつも通りに抱いた。 気まぐれに、肩に軽く噛みついたら大袈裟なほど躰を跳ねさせて不意をつかれる形になったユースタス屋は恥ずかしそうにしていた。もっと過激なこともやったことがあるだろうに、意外にも新鮮な反応を見せられて燻っていたものが消えていく気がする。 「おれ…」 「うん?」 「お前の、観察するような目…好きだ」 そう言っておれの肩に顔を埋めたユースタス屋。 どうやらおれは、ユースタス屋曰く酷く加虐に染まった目をするらしい。酒でちょっとだけバカになったあの夜もだったそうだ。 どことなく満足そうにしているユースタス屋が愛しすぎて、おれはユースタス屋の真赤な髪を鷲掴みにして無理やり顔を上げさせた。 頭皮が引っ張られる痛みに喘ぐ唇を噛みつくように塞いでやる。 思わせぶりに触ってやった首の中央で、期待に息を飲む音が掌越しに伝わってきた。 |