好きだと告げたらはにかみながら頷いてくれました。嬉しかったです。
彼と付き合って1年が経ちました。
おれも男です。彼も男です。でも、そんなのは関係なく幸せに過ごしてきました。
そんな彼が、言いました。正直驚きでいっぱいです。


「え…例えば?」
「荒くされんのは勿論だけど…首絞めとか、痛いのとか…」

ユースタス屋は2つ下の恋人だ。バイト先で知り合っておれは彼に一目惚れをしてしまった。
同じ男とか、おれよりも…一般的な成人の男の中でも体格が良いけれど魅かれるものがあった。
ダメ元での告白を受け取ってくれたユースタス屋と1年ちょっと付き合って、飽きるどころかおれはもうユースタス屋の事しか考えられないでいる。
そんな日々を送る中ユースタス屋から「自称マゾヒスト」をカミングアウトされた。びっくりした。

「首絞め…」
「目の前真っ白になる瞬間ってすっげー気持ちいんだよ」
「え、でもお前…去年の夏に旅行行ったとき帯で軽く縛ったらめちゃくちゃ抵抗しただろ?」
「その方が燃えンだろうが…おれ興奮してたんだけどお前すぐやめっちまうし、縛り方も緩かったし……」

聞くところによると。
付き合って初めての旅行の夜。酒も入ってちょっとバカになったおれはユースタス屋の浴衣姿とかにむらむらしてついつい普段やらないような趣向に走った。長い帯をユースタス屋の手に巻きつけて一括りにして押さえつけると自分の中の加虐心が擽られて腹の底がムズムズした。
だが、ユースタス屋が涙目でおれの身体の下でもがくのを見た瞬間、酔いが飛んでしまい罪悪感が芽生えてきて謝りながらユースタス屋の手を解放した。そのあと、慰める様に優しく抱いたのだが。
その時のユースタス屋は恐怖や嫌悪で嫌がった訳ではなく、むしろ豹変したおれに悦び興奮し、期待に逸る躰をくねらせていたのだと言う。

「……」
「あ、違がうぞ!お前とヤるのに満足してねぇ訳じゃねェんだよ…その…ちゃんと、好きだし、満たされてるし、トラファルガーに優しく抱かれんのも好きだ」

ただ、自分がマゾであるのでそっちの趣向があり、好きだからこそトラファルガーに理解してほしかった。そしてもっと満たして欲しい。おれを縛った時のお前のことが忘れられない。
そんなことを訥々と語り、ユースタス屋はだんだんと俯いた。
ユースタス屋の嫌がることはしないようにと、少しでも優しくしてやろうと努力したおれはなんだったのだろうか…。
そんな風に思うけれども。

「善処、しようと思う…」
「…トラファルガー……」
「おれはユースタス屋が好きだから、別れようとか思わねェ」

真赤な髪を撫でるとユースタス屋は嬉しそうに笑った。
自分の趣向と合わないから別れてくれと言われるのだと一瞬思いもしたが、逆に理解を求められたということは本当におれを好いて求めてくれているんだろう。
それに、あの晩に芽生えた加虐心がおれの中にも少なからず存在していた。

「ユースタス屋…」
「トラファルガー……ン、う…っ」

手始めに、絡めた舌を少し強く噛むことから始めてみよう。





「おれの前にも付き合ってた奴は居るのか?…男とか」
「ああ…高校の時で、相手先生だったんだけどよ…結構いろいろしてくれて良かったんだけど……逃げられっちまって」
「…逃げられた?」
「小便したりってのは嬉しそうに見ててくれたんだけど、顔殴ってくれっつったらそれっきり……」
「……」
「お前と付き合う前はS嬢いたんだけど、おれが男もイケるって知ったら途端に冷められちまった」
「………そうか」

これから何をしてやればユースタス屋が満足できるのか…それを探るつもりで聞いたのに。
思いのほかディープな世界におれの心は折れそうになった。

小便くらいは普通に見てやらなきゃいけないみたいです。




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