"とはいふものの、" おれは平和な日々を過したいわけであるのだよ。 「なのになぁ…」 狂犬云々なんて話した日の放課後にまさかフラグ回収とか夢にも 「思わないでしょうよ」 「あ?……あぁ゛?」 キャスケットが呟きキッドが怪訝そうに顔をしかめて前方を見れば、有象無象がずらりと並列していた。 どうしたもんか、と考えるシャチは「装備なしなんだけどなぁ、鞄の中はDSとiPodと男の聖書くらいしか入ってねぇし」などとブツブツと独りごちる。 「おい、あれユースタスじゃねぇのか…隣りに居る奴」 「あぁ…まさかつるんでるとはな」 「なにごちゃごちゃ言ってやがんだテメェら」 輩に好戦的な表情のキッドに対しにシャチは溜め息をつくと前方の多勢を一瞥する。 あーあー、もー。 おれは平和が好きだって言ってるのに そう胸の中で叫ぶと振りかぶった腕に持っていた学生鞄をぶん投げた。 「ユースタスも潰し…ンブへッ!?」 キッドの真横をすっ飛んでいった鞄が長物を振り上げて今にもキッドに攻撃せんとする歯抜け(前歯)男の顔にバンッ!と正面からぶつかる。 「……おい、シャチ…?」 「わーんわーんお!」 陽気な声を発し、シャチはゆるりと手を動かすと掛けていたメガネを外して胸ポケットに引っ掛ける。 「あー、もう。犬に咬み付かれたら、イタイぜェ…?」 べっ、と舌を出して笑うキャスケットは顔を押さえて蹲る歯抜け男の取り落とした長物を手にしてタッタッと軽く駆け出した。 「あてて。明日筋肉痛だなこりゃ」 コツ、と長物をごみ捨て場に立て掛けるとシャチは先程投げて地面に落したままだった鞄を拾い上げ軽く埃を払った。 「テメェ…」 「あ。」 背中に突き刺さる視線と地を這うような声にハタと振り返る。 「きゃ、きゃいん…」 「よぉし、俺が何を言いてぇか理解出来てるようだな…テメェ」 「…は、ハッハッハ!そうさ、何を隠そう…おれが狂犬だ…!」 「………」 「無言やめて!恥かしいからっ」 無駄な男前ヴォイスを作りシャチが何かを気取ってみるもシラッとした態度を返され羞恥が極まる。 大体にしてその"狂犬"と言う異名から"(笑)"のようなものだった。 (恥かしくねェのかお前) (正直、こっぱずかしくってたまんねぇよ!) |