「船長」
「…なんだ。ペンギン…おれは、今、超絶に、不機嫌なんだがバラされたくて来たのか?わざわざ?」
「違う。船長…いや、ロー。幼馴染みとして今日は一つ言いたい」
「フン…なんだ?」
「単刀直入に言おう。これを提供してやるからその不機嫌を撒き散らすのは止めろ」
「ア゛ァ゛?…!お前ッ……それは………!」

偉大なる海を航海中の我々、ハートの海賊団は船長のフヌケっぷりと傍若無人さにほとほと困り果てていたある日である。船員の1人、ペンギンが意を決して取り出した秘蔵物に、おれ達は明るい明日を見出すしかなかった。

「お前…どうしてこんなものっ!おれは全てを捨ててこの海へ…っ」
「勘違いしないでください。おれが自分の思い出を抱えていようがそれは勝手でしよう?」

日焼けして古びた厚い冊子をめくって見せ、ペンギンはその中から数枚を引き抜く。

「まさか…ペンギン…お前もそっちの趣味が」
「ちげぇよ!…コホン…家族ぐるみの付き合いをしているとあるもんなんですよ。こう言ったものは」
「………」
「その疑うような目ェ止めろってんだよ。今すぐ海に投げてもいいのか?船長」
「すみませんでした。それを譲ってくださいペンギン様」

……明るい明日を見出すしかなかった…(遠い目)

そんなこんなで意気揚々+若干の照れ+不本意を織り交ぜてあそこに見つけるはキッド海賊団の船。
凄く言いたくはないが…説明しよう。うちの船長ことトラファルガー・ローはモーホーだった。そしてその船長が相手に選んだのが寄りにも寄って敵船である、キッド海賊団が船長、ユースタス・"キャプテン"キッドだった。
もう数を数えるのも馬鹿らしい程にアタックしてはバッサリと切られ、それでもめげずにアプローチをかまして行くうちの船長はある意味すげぇと思う。
でもある意味凄かったのはうちの船長だけじゃなかった。

「ん?キッド、9時の方向に…あれはトラファルガーの潜水艦だな」
「…なァ…キラー。潜水艦ってのは鉄か?リペッていいよな?リペるべきだよな」
「潜水艦は海に浸かってるが能力は通じるものなのか?」
「そういや知らねぇな…試したことねェ」
「ユースタス屋ァ!」
「リペ「ちょっとでいいから話をしよう!?」
「うるせェクソ野郎。16年前に来い…!」
「!!(俺の歳を覚えているだと…!?)」
キラー:(トラファルガーは確か26と言っていたか…この間)
キャス:(16年…?そういや船長って今26?)
キラー:(10才だな)
ハートの船員達:(て、言うと…10?)
ハートの船員達:(10才か…)

お分かりであろうか。今の台詞のおかしさが。

「フフ…ユースタス屋。お前の趣味は良く分かった」
「あぁ?」
「ユースタス屋はおれがイケメンだってことは認めてるんだな?」
「はぁ?」

ここで、ユースタス・"キャプテン"キッドと言う男を説明すると、(懸賞額やらは割愛して)美少年愛好の趣味を持つのが何を隠そう彼だった。
下は定かではないが上は15才までを守備範囲として、腋、すね毛は無いのが当たり前の下の毛がまだ生え揃わないような美少年が好きらしい。
それを聞いたのは前回キッド海賊団にお邪魔した時だったが、ホモでちょっとガイキチを患ったうちの船長のがまだ…まだ、幾分…マシなのではと思えるから不思議だ。

「おれの幼少期を想像したことがあるか?ユースタス屋」
「ある…!」(ドン)
キラー:(したのか…想像)
ハートの船員達:(されてたんだ想像…!!)
「(してくれてたのかユースタス屋ァ…!)…これをみたいか?」
「なんだ?」

ユースタスの堂々とした口振りに驚き慄き引いていると、船長が尻ポケットに忍ばせていた数枚の紙を掲げる。
俺たちが明るい明日を託した『秘蔵☆トラファルガー・ロー(9才)ベポと一緒シリーズ』だった。

「これは俺が9〜10才くら」
「トラファルガー」
「いの頃の…な、なんだ?」
ガツガツ、とヒールの高いブーツを甲板に響かせてユースタスは船長に歩み寄った。

「少し見せろ…いや、見せて、くれ…見せてください」
「ッ、み、みみみみるだけならら!」

喋れてねぇっす、船長…
ユースタスの丁寧な口調と近い距離にどきまぎする船長を余所に、突出された写真を指一本触れずにユースタスはじっと見つめていた。ほう、と惚けるような…若干頬が赤い気がするが目の錯覚だと信じたい。

「トラファルガー」
「な、なんだ!?」
「それはいくらだ」
「キッド!」
「うっせェ!だぁってろ!…トラファルガー。言い値で買う。額を言え」
「………」
「…トラファルガー?」
「か、金…の話じゃ…ねぇだろ?ユースタス屋…へへ…」

うわ…船長…。ユースタスもユースタスだけど、自分のガキの頃の写真チラつかせてすげぇ汚いこと考えてやがる。でも流石にユースタスは乗らねぇんじゃ…

「金じゃねェのか…なら、こっちか?」
「ブッ!!」

ユースタスが船長の手首を掴みはだけさせたコートの下の生乳(言っても男の筋肉質な胸板)にペタリと導いた。
噴出した船長の鼻血がユースタスの頬に飛ぶがユースタスは気にする事もなく、しかも冷静に写真に鼻血が飛ばないように手でガードしていた。

「ゆ、ゆゆゆゆゆぅすたふや…!?」
「ん…」
「ッンン!?」

鼻血が垂れて唇どころか口の中にまで血の伝う船長は凄く間抜けだが、ユースタスは船長の両頬に手を添えてそのマヌケな顔に躊躇いなく深々と口付けた。
もぐもぐと口を動かしながら濃厚な奴をブチかますと卑猥な水気を連想させる音を鳴して合わさりを解く。
船長の顔は鼻血塗れで、ユースタスの唇や頬にもそれは付いていた。

「…、…」
「トラファルガー、それを譲ってくれ」
「…はい…」
「ハァー…可愛いな…」

夢見心地の船長から写真を受け取るとユースタスはうっとりと熱い溜め息を付いた。
幼き日のトラファルガー・ローがシロクマ(本物)を抱えて写る数枚の写真。
それに託したおれたち明日は…

disappointed tomorrow



(野郎共。あいつにはもう用はねぇ!目障りだ、海にでも何処へでも捨てちまえ!)
(せ、せせんちょおお!逃げましょうっユースタスは写真だけにしか興味もってないっすよ!)
(待て…少し時間をやるから鼻血を拭いて帰ってくれないか)
(死の外科医が不憫過ぎて攻撃もできねぇな…うちの頭もあれさえなきゃアな…)





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