ドアが開き姿を見せたユースタス屋は目元を赤くさせていて、つい先ほどまで泣いていたことを伺わせた。
誰かの泣き顔なんて見慣れているのに。
泣かせた女も泣かした男も数え切れない程に見て来たのに。
まだ、痛む場所(こころ)が残ってた。
「キッド」
背後で荒々しく音を立ててドアが閉まる。
抱き寄せると無意識の抵抗からかのけ反る身体をけして逃がさないように被さるように、キツく強く抱き締めた。
「ぅ…っ……ふ、…」
「……」
殺しきれない嗚咽が静かな部屋に響く。
ごめんでは赦されない
愛してるじゃとても足りない。
「捨てないでくれ…」
「……」
「俺を…捨てるな…」
渇いて張り付く喉から無理矢理押し出した言葉も声も、俺の表情(かお)も情けなくて。
俺が嘲笑(わら)って捨てて来た奴等と同じだ。


俺を責めたりしないユースタス屋に縋るしかなかった。
責め立ててくれたらどんなに楽だろうか。
そしたら謝れるのに。口先だけだと思われたとしても愛してると言えるのに。
お前だけだと言えるのに。

でも、ただ。唯一の救いはユースタス屋が泣いていることだ。
胸は痛むのに、言葉の代わりに俺を責めているように流れる涙に安堵する。


謝る術がなく、ただただ


「テメェが…」
涙で濡れた声がぽつりと譲歩の言葉をくれる。
「テメェが俺だけなら、俺もお前だけだ」
「あぁ…。」
「そうじゃねぇなら…お前なんか、必要(いら)ねェ」






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