恋人とマンネリしてる訳じゃねェ。
でも誘われたら軽く返事をしちまうんだ。男の性だと言ったら袋叩きにされそうだが。

女特有の柔らかさ。低い背、甘えた声…ねぇねぇ、と構われたがる身体を荒っぽく引き寄せて化粧独特の匂いのする頬に唇を寄せて思うのは、柔らかくもねぇし俺よりガタイも良い、あまり甘えた事を言わない声が 一番好き だってこと。

嘘吐いて女遊びをして、やっぱりあいつが良いと思い直して、俺のあいつへ対する愛は深まるばかり。
そろそろ適当な理由を付けて帰ろうか。その前に赤く潤む女の唇にでもキスしてから…赤い色はやっぱり目をひく。俺のお気に入り。

しかし、あぁ…なんて最悪。
大好きな赤と視線が交じり合う。
なんてタイミングで、こんな言い訳出来ない状態で。
責められ殴られる覚悟で呼んだ名前。しかしユースタス屋は何ともなしに挨拶して、俺が連れてた女へと…。
ねっとり。公道で人目も憚らず、女の赤く艶っぽい唇を堪能するあいつ。
俺は血の気が引いたり上がったり。あいつの唇が俺以外の唇に触れた、目の前がクラクラする。
「ハッ…、悪ぃな…そいつが本命だったか?」
「んなわけねェだろ」
馬鹿を言うな。こんな女が俺の本命な訳があるか。
第一、俺の本命はお前だって。馬鹿みたいに自分が本命だと信じて疑ってなかった女が腕にすがりついてくる。邪魔だ…いや、邪魔とも思えない程にもう興味もない。
「ふん…なら、精々本命に逃げられねェよう忠告しといてやらぁ」
女のグロスが移った唇が弧を書いて艶を出す。
その唇が出す言葉は、誰に向けて言ってるんだ?
「誰でも、テメェだけが本命だって思うもんだ…そうだろ?トラファルガー」
「ッ…待て、キッド!」
隣りで啜り泣く女を優しげな目で見てユースタス屋が一歩一歩遠ざかる。
「そうとは限らねぇのに、なァ…?」

滑稽にも俺だけは、と


思い上がった当然の酬いだとうなだれる。



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