あぁ、最悪だ。
俺もあいつもそんな顔をしてる。ただ、あいつに腰を抱かれ寄り添って歩く女だけは不意に足を止めた連れを見上げて不思議そうな顔。
休日返上で仕事だと言っていたのはどいつだったか。
…うんざりする。
買い物なんて、外になんて出なきゃよかった。
「ユースタス屋…」
「…よう」
いっそ、知らん振りして通り過ぎるなりすりゃあいいのに何声掛けてんだ。馬鹿だろ。
こんな状況に律義に腹を立てる俺も馬鹿。
俺とあいつを交互に見ながら「なに?トモダチ?」なんて俺に愛想よく彼女面をして笑顔を向ける女もきっと馬鹿だ。
「あぁ、そんなとこだ」
「ユースタス屋っ」
「やだ、ローってばなに大声出してんの?…ユースタスくんって言うんだ?」
「ユースタス・キッドだ」
女の腰から手を離して俺に近付くあいつを無視して連れの女に愛想良く答えつつ、見るからに尻の軽そうな女にふ、と鼻で笑うと怪訝そうに細い眉が吊り上がった。
「なぁ、あいつじゃなくて俺にしねェか?」
「えっ…」
「そのグロスの色、気に入った」
低い女の背丈に合せて腰をかがめ何やら言うトラファルガーを無視して女に深く口付けた。
強張る女の身体と目を見開くトラファルガーの顔に笑いが込み上げる。
「っ…キッド!」
俺と女を引き離して俺を睨むトラファルガーに腕を掴まれる。
「ハッ、悪ぃな…そいつが本命だったか?」
「んなわけねェだろ」
「はぁ!?ちょっとロー!」
低く唸るように否定する声に聞き捨てならないと女が割り込むがトラファルガーの視線は俺から離れない。
「ふん…なら、精々本命に逃げられねェよう忠告しといてやらぁ」
トラファルガーの手を払い女のグロスが移った唇もそのままに笑ってやる。
「もしかしたら、もう遅ェかもしれねェけどな」
「お前…それどう言う」
「誰でも、テメェだけが本命だって思うもんだ…そうだろ?トラファルガー」
「ッ…待て、キッド!」

哀れに啜り泣く女を一瞥して俺は少しだけ吹っ切れた気持ちで歩き出す。


「そうとは限らねぇのに、なァ…?」


勘違いして、馬鹿みたい




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