レムレスとの出会い | ナノ

▽レムレスとの出会い


それはレムレスが学生ながらも魔導師として活躍をしはじめたころのお話。
レムレスの通う学校はエリート学校と呼ばれています。よって生徒たちの学力は平均よりはるかに上回っているものです。それゆえに生徒の中には皮肉っぽい者が多いようでしたが彼にとってはあまり気にならないものでした。なぜなら誰もが彼の前では人が変わったように優しく扱うからです。ついさっきまで喧嘩をしていた者も、人に罵倒の言葉を浴びせたりしていても、レムレスが通ると、一瞬でそれはやみます。―――ボクに取り入ればいいことあると思ってるのかなあ―――レムレスの心にはもう諦めしかありませんでした。人は目に見えるものしか信じない奴の方が多いものだ。そういう風にしか思いませんでした。ただ、そんな彼にも一つだけ不思議に思うことがあったのです。







「イロハさん!あなたはまだこんな魔導も使えないのですか?!」
「すいません」
「あなたはどうしてこの学校にいるのですか?!」
「すいません」



酷く見飽きた授業風景。クラスメイトの彼女、イロハが実技の授業で教師に叱られるのも酷く見飽きたものだった。レムレスからついつい欠伸が漏れてしまう。それを見た他のクラスメイトがはっとして、叱られている彼女を憎そうににらみつける。当の本人は慣れてしまったのか、視線は教師にむけられ、言葉で謝っていても、心はからっぽだった。レムレスは彼女を不思議そうに見つめる。いつものことだけど、毎回思う。どうして彼女はこの学校にいるのだろう。そこは教師と同じ思いだった。というか、魔力のない彼女が一体どうやってこのエリートと呼ばれる学校に入学できたのだろうか。レムレスは不思議でたまらなかった。入学と同時にそういうことは資料から分かるはずなのに。ただただ不思議で、しかし不思議なものでしかなかった。彼にとっては彼女もあのクラスメイトたちと同じ一人の、ただの人間であった。今日までは。







次の日も同じように魔導の実技の授業があった。実技の授業は毎日のようにあるのが常であった。イロハの順番が来た時、彼女は深い溜息をついて前に向かった。教師の目は鋭いが、相変わらず少しの諦めの念がうかがわれた。そりゃあ溜息もつきたくなるだろうなあとレムレスは頬杖をついて彼女の様子をなんとなく眺めていた。彼女は息を吸って、吐くように課題である呪文を唱える。するとどうだろう、他の生徒とは別のなにかが生み出された。光って、はじけて、まばゆかった。クラスメイトはもちろん教師もあんぐりとそれを眺めていて、なぜか彼女自身もおどろいていた。しかしそれは目にした誰もが「それは魔導だ」と言えるべきものだった。
その瞬間、レムレス自身にもよくわからないなにかが体中を駆け巡った。ただ一つ言えるとしたら、彼はその瞬間深い感動にのみこまれたのだ。すごい、すごい、すごい!いままでからっぽだった彼の世界は彼女で構成されていった。さながら少女漫画のような展開である。愛という名の依存におちて―――





「やあ、ボクはレムレス。ボクと友達になろうよ!」





授業が終わると彼はまっすぐ彼女のもとへと足を運ぶ。お得意の棒付きキャンデーを彼女に差し出しながら。
たとえそれが偶然の生んだ依存なのだとしても。彼女に出会えたきっかけとなったならば喜んで感謝しようとレムレスは思っているのだった。











「…レムレス?」
「え、なに、イロハ?どうしたの?」
「…いや、そっくりそのまま返すけど。珍しくぼーっとしてどうしたの?」
「……なんでもないんだよ、それにしても、イロハの方こそボクのこと心配するなんて珍しいじゃないか。うれしいなあ!」
「うぬぼれるなよ」
「いや」
「いやいや」
「いやいやいや」
「いやいやいやいや」



「…なにやってるんですか、センパイがた」
「まったく…やっぱりイロハは馬鹿なんだな!このボクとちがって!」
「いやいやいやいやいや」










……………
あとがき的な伏線回収
レムレスが感動に飲み込まれたのはイロハの「ばよえーん」でした。ちゃんちゃん。
呪文はちがうけど、その日から魔力が生まれたイロハは力の制御が分かんなかったんですねー
魔力が生まれた理由もしっかりありますよ^^
まあそれはおいおい…

でもレムレスは自分がイロハと出会えたきっかけが魔導のせいであろうとも、今があるからなんでもいいよって思ってるって話。
依存だけど。



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