「ちくしょー!今日もいっかいもかてなかったー!」
「あはは、いやいや強くなってるよ。うん」
「うそだ!オレしってるんだぞ!そういうの大人げないっていうんだ!」
「違うよマコトくん私は君に強くなってほしいから本気を出しているんだよ」
「え?そうなの……?」
「うん」
「さっすがねーちゃん!」
「はは、もっと褒めていいんだよ」



最近になってはもう例の少年マコトくんとのバトルが日課となっていた。そして毎回結果は私の圧勝。まあ年齢の差も経験の差もあるわけで、当り前といっちゃあ当り前なんだが、私も満更ではないようで、マコトくんとのやり取りを毎日楽しみにしている。なんでもかんでも純粋に吸収していってくれるマコトくんは素直でいい子だし、年が離れている分気を使うこともなく(本当は私が使わなければならないはずだけど)普通に楽しめている。決して、私の精神年齢が低い訳じゃなく。違うからね。まあさておき、そんなこんなで案外充実した毎日を送っているわけだが、マコトくんは毎日お昼時になるとどこかへ出かけていく。マコトくんくらいの年齢の子供たちはその時間帯はお昼寝の時間と決まっているはずなのに、だ。そして今日もいつもと同じように、お昼を告げる放送がはいった。マコトくんははっとしたように立ち上がって、焦り出す。



「やべっ!はやくせーいちにいちゃんのところ行かなきゃ!」
「せーいち兄ちゃん?ああ、あのみんなの優しいお兄ちゃんか…」
「そう!おひるねのじかんになったら、おしゃべりしてくれるんだ!」



すごいんだよ!せーいちにいちゃんは!とかなんとか言いながらマコトくんは病室をとびだしていってしまった。それよりもそんな大声あげながら走って行ったら、ナースさんに見つかって病室に連行されてしまうんじゃないか…?と思った矢先に外でマコトくんの駄々をこねる声が響き渡っていた。ああつかまったな。と私は苦笑する。と同時に、私だったらもっとうまくやるのになんて思った。だから、明日マコトくんにナースさんに見つからずに「せーいち兄ちゃん」の所へ行ける上手いやり方を教えてやろうと思って、さっそく今から明日が楽しみになった。というのは秘密である。