突然だが、私はいついかなるときも、いどまれた勝負には本気でいどんでやる。そうだ、私の永遠のライバルも「売られたバトルは買うしかないっしょ!」って言ってたし。だから私は間違ってない絶対に。真剣勝負に手抜きなんてできないし、したら相手にも失礼だと思っているし、そう、相手が誰でも。たとえ大人げないと言われたとしても、だ。決してこれは負けず嫌いなんてものでもなければ、私と向かい合って目を涙でいっぱいにしている少年への言い訳でもない。嘘つきました。私は負けず嫌いです。自分よりずっと年下の子供相手にたかがゲームで本気になってしまうくらいには。



「あ…あの、ごめん…?」
「あやまるな!オレがみじめになるだろ!」
「ああ…ごめん…」



なんて男らしい少年だろうかと私はすこし感動した。あとよく惨めなんて言葉を知っているなあとも思った。さて、なぜこうなったのかというと、いつものごとく病室でDSと遊んでいた私(変わったのは手首になおも刺さっているいまいましい点滴のせいで手が動かしづらく、なんかグロいということだった)だが、なぜか今日はどこで私のことを知ったのか、この少年が黒いDSを片手にいつかのナースさんのようにシャッときれいな音とともにカーテンをなんの戸惑いもなく開け放ったところからはじまった。そして開口一番にこう言った。「バトルしようぜ!」と。そんな言葉を聞いて誰が断れようか。もちろん私は一つ返事でオーケーした。もう認めるが、人一倍負けず嫌いである私はこのときもうすでに火がついてしまっていた。結果、手加減のてのじも知らないとでも言うふうに、シングルのフルバトルにて私のゼリー(ランクルス)が6タテかましたのであった。ちょっと優越感にひたっていた私が悪かったかもしれないっていうか完全に私が悪い。ここは年上の余裕的なものを見せてもよかったんでないだろうかっていうか、そうすべきだった。私、大人げない。



「ちくしょー!!!」
「(ビクッ)」
「オレはまことだ!いつかおまえをこえてやるからな!覚えてろよっ!」
「あ、はい」



まるでどこかの負け犬のような台詞を言ってどこかへ走って行ってしまったマコトくん。いやはや人生で初めてですあんなふうに言われたのは。越えてやるとか。先ほどのマコトくんの捨て台詞を思い出したら、自然に笑いがこみあげてきて、温かい気持ちになれた。この笑いは決して馬鹿にしたようなものではなくて、微笑ましいというのがぴったりとはまるような気がした。ああ、うん。たまにはこういうのもいいかもしいれないなあなんて思いながら、私はひと眠りしようとイヤホンを耳につけた。