あれからというもの、私はしょっちゅう幸村くんの病室へ遊びにいっている。なぜ基本学校が無い日はたとえ病院でも引きこもりな私が、普段使ってないせいで重い体を引きずってまで彼のもとへ訪れるのかは、会話が楽しいと思えたからだった。この、対人能力が壊滅的な私が、しかも、相手は苦手意識がいまだ取り除けられていない異性である。そう、私はぶっちゃけ男子が苦手だったりするが、なぜか幸村くんとは楽しく会話ができている。それは彼の持つおだやかな雰囲気と、顔が女の子みたいだからということにしておこうと思う。本人に言ったら確実に(メンタル面的な意味で)死ぬ思いをするだろう。幸村精市という男は怒らせたらものすごく怖いタイプだというのがこの短期間で得た見解である。



「また真くんが君に負けたって泣きついてきたよ」
「まあね、今日も私調子いいよ」
「大人げないよ。たまには負けてあげないと」
「勝負は勝負。この程度で泣きごとを言うなんてたるんどるよ」
「ぶっ」



よく幸村くんの話にでてくる人のまねをしてみたら、ツボにはいったようでシーツに顔をうずめて肩を震わせる幸村くん。相変わらず彼のツボは浅いようで、よく分からない所で爆笑してくれる。彼はどうやら笑い上戸のようだった。

幸村くんの部活のメンバーの話はとても面白かった。今でも特徴的なことは覚えていますよ。たるんどる人と糸目とブタくんとハゲとプリでピヨなひとと逆光眼鏡さんとワカメの子。こうやって並べてみれば見るほど面妖すぎる濃いキャラの集まりである。こんなんで皆さんテニス部らしい。ワカメとかブタなのにアクティブとかすごいウケるんですけどとか思ったのはつい最近のことである。



「テニスかあ…」
「なに?テニスに興味あるの?」
「まああるけど……楽しそうだよね、テニス」
「…?」



そう言えば幸村くんはなぜか不思議そうな顔をして、考え込むような仕草を見せた。私はなんとなくなにも言ってはいけないような気がして、黙った。



「そうだね…楽しいよ」