彼に会って初めてマコトくんの名前は「真くん」と書くのだと知った。



「真くんから君の話はよく聞いてたよ」
「へ、へえーそうなんですかあ」
「大人げないって」



そう言って彼は大変楽しそうに笑うもんだから、私はわざと言っているのかと錯覚した。
しかしこんな儚げな彼に限ってそんなことはないだろうと思うので、笑って流した。笑顔って超便利。



「君は中学生?」
「あ、はい。中三です」
「なんだ、俺と一緒じゃないか」
「え?!」



それなら別に敬語じゃなくてもいいのに、とくすくす笑っている彼はとても同じ中学三年生とは思えないほどに大人びていて、私は思わず大きな声をだしてしまい、しまったと口を押さえる。失礼ではなかっただろうか。いや老けてるとかではなくて…と思いながら彼を盗み見ると、相変わらず笑っていた。なにがそんなに面白いのだろうか。不思議に思ってみていると、不意に目があった。うわやっぱ美しいです。



「ねえ」
「はい」
「俺って人見知りなんだ」
「へえ」
「だからさ、また遊びに来てよ。真くんといっしょでも、君一人だけでも」
「……え」



「こら!また君たちは精市くんの病室に来て!もう、だめでしょう!」



ナースさんが怒りの形相で病室に入ってきたと思えば、それまで私のことをほっぽって他の子供たちと遊んでいた真くんは「やべっ」とか言いながら私の方へ来て、手をひっつかみ逃亡を計った。そして堰を切ったように病室から走って出ていく子供たち。今までなけなしのコミュ力を振り絞って会話に集中していたせいで気付かなかったけど、このたくさんの子供たちが、幸村くんの人間性を示していた。子供たちの群れに押されながら振り向くと、「待ってるから」と言われ、今日という日私は見事イケメンに無料で会いに行ける権利をゲットしたのである。



まあ、あのときの点滴のことで文句を言えるくらい仲良くなれたらいいなと思った。