私は現在進行形でマコトくんに手を引かれて、病院内のどこまでも白い廊下を歩いている。普段あまり動いてないせいでものすごくだるい。おまけに点滴も重い。たまにつまづきそうになるなるのに気を付けながら、私は前を歩くマコトくんの丸い頭をぼーっと見つめていた。丸いなあ…
どうしてマコトくんに腕を引かれているかなんて私にも分からない。しかしなんとなくこの子になにかを言っても無駄な気がしたので、されるがままになっている。適当になんとかなるだろうなんて思っていたら、マコトくんの足が不意に止まった。「ここだよ!せーいちにいちゃんの病室!」なん…だと…

ああもうなんとかならないかもしれない…なんて今更思っても遅すぎて、勢いよく病室の扉を開くマコトくんの猪突猛進を止める術なんて私は知るはずもなくて、そんな私の対人能力は校長のあるかないかわからない申し訳程度の髪の毛並みにいささかなものであって、つまりゲームオーバー…



「ふふ、真くんこんにちは」
「せーいちにいちゃん!こんにちはー!」



噂のせーいち兄ちゃんの姿が見えたかと思うと、マコトくんは私の手をするりと離して、せーいち兄ちゃんの方へとかけていった。おいおい連れてきたのはお前だろ放置しちゃうの?!なら私帰っていいかな…なんて思えたのは一瞬のうちだけで、私はせーいち兄ちゃんの声が最近聞いたことのあるような気がして、それはせーいち兄ちゃんがこちらを向いたことにより、はっきりした自信に変わった。



「あれ?君は…確か…」
「…あのときの」



幸村精市。それがせーいち兄ちゃんの正体だった。
ちなみに私は、あのときのことをまだ根に持っていたりする。