ライモンシティに住むものなら誰だって知っているだろうバトルサブウェイ。廃人収容施設なんて揶揄されることもあるが私には関係のないことである。私はバトルとは無縁。ポケモンだって持っていないただの一般ピープルなのだ。バトル狂のバトル狂によるバトル狂のための地下鉄なんて、カナワ行きのトレインにしか乗った覚えはない。

なのに

「っお、おはようございます。#なまえ#さま」

どうしてサブウェイマスターのノボリと毎朝レベルで出くわすのだろうか。これがサブウェイクオリティー…?ノボリといったらポケモンバトルがくそ強い(らしい)バトルサブウェイのボスではないのか。なんでそんな、私とは無縁そうな人が、こんな朝っぱらから私に構ってる暇があるなら仕事しろよとか思う。ていうかなんで私の名前知ってるんだ。ぶっちゃけ怖いのが本音である。いや、そんなもじもじされても…無表情なんで逆にホラーです。

「おはようございますノボリさん。それじゃあ」
「あっ、ま、待ってくださいまし」
「…なんですか」
「あの……」
「………」
「えー……」
「……………」
「い、良い天気ですね」

思いついたようにそう言ったノボリさん。だが残念ながら空は雲に覆われ今にも雨が降ってきそうな天気だった。
洗濯物入れてこようかなーなんて呑気なことを考えていると、ノボリさんが気まずそうに切りだした。

「良い天気…ではなさそうですね…すみません…」
「あ、いやいや、謝らないでください。べつに怒ってませんから」
「!なんてお広いお心の持ち主……!」
「えっいやあの…」
「わたくしめは、さらに貴女様を…」

そう言ってぽっと頬を赤らめるノボリさん。私苦笑。だから無表情が通常運転(らしい)ノボリさんが頬赤らめたりしてもぜんぜん可愛くない。むしろ不気味である。言わないけど。
目線を逸らそうと空を見上げると本当に雨が降ってきそうだったので、私は家に入ろうとノボリさんに会釈だけして踵を返そうとした。しかし、

「…ノボリさん?」

私の腕をノボリさんの腕ががっしと掴んでいた。先ほどとは打って変わった真剣な表情。
え、ナニコレ。何フラグこれ。いらないよこんなフラグ。

「わたくし、カナワタウン行きのトレインに貴方様が乗っているのを拝見したときより#なまえ#さまをお慕い申し上げております…!日々この思いは募るばかり」
「えっ、お慕い、え?」

「わたくしと、結婚を前提にお付き合いして下さいまし!」

そう言って、ノボリさんは全速力で走ってコートをはためかせながらどこかへ行ってしまった。
ていうか…え?今のなに。私まだなにも言ってないんだけど。

(クダリ、やりました!ついに告白してきました!)
(やったねノボリ!今日はお赤飯だね!)

(どうやって断ろう………)