あなたはだれですか?わたしはずるいニンゲンです。もうずるく生きることに疲れました。あなたはどうですか?







ここは電気石の洞窟。ここに生息している主なポケモンとしてバチュルなる黄色い体に青い瞳をもつポケモンがいるが、これが案外かわいいのである。それがデンチュラというポケモンの進化前で、そいつがいま私の前で、じっと、何かを見ている。きっと、私を見ているのだろうけど、なんだろうこの感じは。たくさんのバチュルにたかられながら、私は考える。それにしても体がちくちくする。きっとバチュルの静電気であろう。ついでに言えば体がくらくらして、動けない。私、電気を吸われているのか、なんて、冗談でも笑えない。デンチュラの大きなたくさんある瞳のすべてに私が映っているが、やはり、なかなかおかしな顔だった。私はどっかの漫画の主人公みたく、自嘲じみた笑みを浮かべる。



「あんたも、同じなんでしょう」



ターゲットの獲物を見つけては、正面から堂々と勝負をせずに、罠を貼り、賢い選択で勝利という名の生を勝ち取る。他者からエネルギーを吸って、自分は生きる。他者の損を、自分の得とする。まったく人間と同じではないか。もちろん、この私とも。親近感がわくと同時に、嫌気がさすではないか。
どうせこんな虫に、私の考えてることが分かるはずもないのだ。まあ、当り前だけれど。虫相手にこんなことを考えるなんてとうとう私の頭もいかれてしまったのかなと溜息が出る。捕らえてばかりの私だった、最後は私が捕らえられてあげようかな。



「どうせあんたと私の違いなんて、諦められるか諦められないかの違いだよ」



こんな間抜けな最後が、私にはお似合い。だって、最後くらいは、誰かのエネルギーになりたかったの。それって一生、生き続けられるってことでしょう?
最後に見えたのは電気石のきらめき。それらが責め立てるように、私は誰にも知られず、見つけられず、アンハッピーエンドに迎えられたのだ。



あなたはだれですか?私は諦めることができたニンゲンです。ずるい世界が嫌になりました。あなたはどうでしたか?