あ、また転んだ。

ボクが起きていられるたったの七日間。それは毎回つまらないものだったけれど、今回はなかなか面白い観察対象を見つけた。今もそいつを観察している最中である。そいつは草むらを散策していた。自分のポケモンももっていないくせにだ。すると必然的に野生のポケモンに襲われるのは分かりきっていることなのに、そいつは馬鹿みたいに笑って野生のポケモンとじゃれているではないか。いや、馬鹿なのか。と勝手に自己完結。あの野生たちみたいに、ボクも自由に生きられたら、なんて馬鹿なことは、思わない。思わない。







「じゃあジラーチくんは、一生七日間限りの生活を続けるの?」
「そうだよ」
「…つらくない?」
「そんなことないけど、ボクが自由を求めるのは馬鹿げてるだろう?」
「なんで?」
「だって…ボクがそういう星の下で生まれてしまったから…」
「もしかして中二病?」
「………」

三日目になって、ボクは観察対象に気付かれた。不覚だ。それから四日目、五日目と、そいつとの雑談の毎日が続いている。そうして今日。六日目、馬鹿にしてはめずらしくボクに突っかかってくる日だった。それにしてもボクは、一体なぜこいつにこんな話を持ちかけたのだろう。最近ボクは、ボクが分からない。ボクがなにをしたいのかが、分からなくなっているようだった。きっと、こいつの馬鹿が移ってしまったんだ。じゃあ離れればいいのに、ボクにはそれができない。そしてこいつは馬鹿だから、意味不明なことばかり言ってボクを惑わせる。ボクは望んじゃいけないのに、こいつといると、それすらどうでもよくなってくる。ボクは、望みを叶える存在なのに。ボクの願い事が叶うなんてあってはならない、ということになっている……のだろうか。

「だめだなあ、君は頭がいいけど、堅すぎるね。そうだな、私の願いを叶えてくれますか?」

突拍子もなくそいつはそう言い放つ。自分がけなされたような気がしたが、願いをかなえるというボクの存在意義を思い出すことができて、それに救われたような気分だった。誰か、誰でも良いから、なんとかして、おかしくなったボクを元通りにして欲しかった。そのためならば、こんな馬鹿でも構わないのだ。さあ願い事を叶えてあげようじゃないか。そうしてさっさと眠りにつこう。

「私、これからもずっとあなたといたい」

ボクはずっと、そう言ってくれる人を待っていたのかもしれない。