αベット | ナノ





私は殺されて気がついたら某RPGゲームの世界に居ました。なんて笑えねえ。







結局私はササキさんのお世話になりササキさん自慢のマイホーム(ブルーシート小屋)に泊まって一夜を過ごした。ぶっちゃけササキさんのマイホームは少し風が吹いただけでガサガサいうもんだから不気味だった。それでも熟睡することができたのはいろいろあって私の精神がかなり疲労していたということだろう。朝になって外に出たはいいものの眠い。もっと寝ていたい。自然と欠伸がでた。ふと腕に抱いているたまごに目をやる。ここが本当にポケモンの世界ならばこのたまごからはポケモンが生まれるだろう。何のポケモンが生まれるのだろうという期待と不安。たとえこのたまごが孵っても育てることはできないだろう。一文無しだし、なによりゲーム画面上でしかポケモンのことを知らない私にできることなど限られているのだ。現にライモンシティにササキさんたちみたいな存在があることを知らなかったのだから。

「育てられないのなら…どこかに売るしかないなあ」

朝起きてササキさんに言われた言葉を思い出した。たまごを売れば、どこかの金持ちが高値で買ってくれるし、その方がたまごから生まれるポケモンにとってもいいだろうと。確かにそうなんだろうなあと私はたまごを撫でた。私がここに来たときからなぜか腕に抱いていたたまご。きっと何かの縁があるものだと思っていたけれど、それは切るしかないのだ。今の私は、生まれたポケモンにパンの耳しか食べさせてあげられないのだから。私は公園に群れを作っていたマメパトが飛んでいくのを見て、ここはあのゲームの世界なんだとあらためて思い知らされた気がした。



(ワルツでも踊りますか)