αベット | ナノ





びっくりしたって理解する前にびっくりした。







メイドさんの最後のポケモンであるフシデが倒れてピチューの勝利が決まった。わあ勝っちゃったよすごいなピチュー生まれたてなのに。私の感想なんてものはそんなものだった。本人は疲れたかなんか知らんけど私の頭という定位置に乗り眠りはじめた。「おまたせでーすポケモン勝負の栄光をお持ちしましたー」と決まりきったセリフを言ったメイドさんは私が先に進めるよう電車の座席に座った。ああなんていうかすごく知ってるなあ。今見たことすべてが私の知っていることで、知っていることのはずなのにどこか線で区切られたような感覚がするのは私の世界とこっちの世界の境界線なのだろうか。どっちにしろ私がこの世界に認められることはないということである。なぜか今、それがはっきりとして心がからっぽだ。とりあえず私は先にあるパソコンを見て、迷わず「リタイア」を選択した。だってほら、もともとピチュー一体での参加とかルール違反でしょ。しかしそれは建前であり、本音のところは疲れた無性にパンの耳が食いたい、である。私は静かにメイドさんの隣に座った。

「?あれ、帰るんですか?」
「あ、はい」
「ええー!?強かったのにいー!」
「すいません」
「もったいなあーい!」

大げさな動作つきで話すメイドさんはとても可愛かった。私も自然と笑みがこぼれる。おかげで帰り道は癒されそうである。私可愛い女の子は世界遺産だと思ってるタイプの人間ですから。今日一番のいいこと。そう思うのはピチューに失礼だろうかと思ったが眠ってる彼を見ていると申し訳ない気持ちがなくなっていった。まあいいか。とりあえずなんだかものすごく疲れた。明日あたりからハゲそうである。ハゲはなくとも白髪は増えるよな絶対。そんなことを思い、メイドさんと話しながら頭をかいた。



(死ぬより疲れた)