引っ越し先はイッシュ地方。そして今日はボクらのはじまりの日だった。
なのに、
「ぁあああああああ!!寝坊したあああああ!!!ぶっ」
ぐちゃぐちゃの寝ぐせを手ぐしで直しながら廊下を走り回るジェマ。ボクはその顔に容赦なく水鉄砲を撃った。
ボクが考えていた通りジェマはどこぞの資産家の一人娘だった。そうとは思えない変態的な行動と言動が目に余るけれど。
まあ彼女のおかげでボクはボク専用のプールをもらえたのだが。
「うん、分かってますよパパ。私は大丈夫。ラプラスたんがついてるんすから!うふっ!」
頬を赤らめて惚気る彼女を見てボクは安心した。やっぱりジェマはジェマだ。
ボクを捕まえてからも彼女は変態的な言動を直す気はさらさらないらしく、むしろ拍車がかかっているようにも感じた。
ちなみにジェマの父親は彼女がそんな性格だったとは知らなかったらしい。目が点になっていた。母親はにこにこしていたが。
「ね、ラプラスたん!君は今日からユウくんですよー!」
彼女が言うには、ボクの名前を以前から考えてくれていたらしい。
ラプラスたんなんて呼ばれる以外ならなんでもいいと思っていたが、案外普通の名前だったし気にいったので一鳴きしておく。
「ユウくん。これからもよろしくっす」
ジェマとの二人旅が始まる。思っていたよりもずっと楽しみにしている自分がいた。
これからの君が見れるボクはきっと幸せなんだな。なんて。
(ユウたんユウたんユウたん!どうどう?この服!)
((ユウたんて………))
fin.