そうあれは洞窟内がいつもよりよく湿気てる日だった。
ボクはうれしくて、上機嫌で歌を歌っていたんだ。

そんなときだった。







「いだぁっ!ちょ、クラブやめてっ!はさまないでっ!だがこの湧き上がる気持ちはなんだろう、気持ちいいとか思ってないんだからね!」







静かな洞窟内に甲高い声が響いた。しかも内容が普通じゃない。ボクはすぐに変態だと思った。
やがてその声も途切れて、ゼエハアという息使いだけが聞こえてきて、しかもそれはボクのいる方に近づいてきているではないか。
変態なんか(しかも人間)を見たくはなかったので、ボクは背を向けて早々に泳ぎ去ろうとしたんだ。なのに、







「待ってくだ、さい」







先ほどの変態と同じ声色がそう言った。ボクは思わず振り向く。その声に必死さが滲んでいたから。
よく響く声だなあ、とか思いながら。







「あなたですよね?あの、歌。はっきりいって、あなたに惚れました!」
「私、ポケモンマニアのジェマ!あなたと一緒に旅がしたい!あなたに乗って!」







そのときは正直いってボクは嬉しかったんだ。そんなこと言われたのは初めてだったし。
ボロボロのずぶ濡れになってまでボクに会いに来てくれたことがうれしかった。
変態かもしれないけど、悪い人間ではないのかもしれない。この人間にならついていっても良いかも知れない。そう、思ったときだった。







「ブーーーーー!!!」
「?!?!」
「あ、やべ…ラプラスたんに跨るところ妄想したら鼻血が……」
「ぞわわわわ(サブイボが出る音)」







ボクの泳いでいる水面にまで赤が漂ってきたのは今でもトラウマだ。







(ああっ?!待ってくださいラプラスたん!いっしょに旅を…)
((くるなくるなくるな!鼻血を止めろ!))















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