42.昔の面影。
「ねぇ夜依、久しぶりに相手してよ。」
『……今何時だと思っている…』
夕飯が食べ終わり今から風呂に入ろうとした瞬間にいつものマイペースさで雲雀が自分の相手をしろと言う。
つまりは手合わせの修行だ。
今日はもう遅いからまた今度な、と軽い返事を返すと雲雀は納得行かないとゆう顔をしていた。
それを見た夜依はくすりと笑い、
『私はここにいるんだ。いつだって手合わせは出来る。違うか?』
「!」
細い目を少し見開いてこちらを見る雲雀。
「…ずるいね、君は。」
『ふふっ。』
ソファーに腰を降ろしている雲雀を台所か見る。すると手招きをされこっちにこいと雲雀の目が語っていた。
『なに?』
「ん。」
近くまで来ると腕を広げて待つ雲雀…。
なにがしたいんだ?
雲雀は目の前まで来てはくれたものの、中々自分の考えに気付いてくれない夜依にムスッと口をへの字に曲げていた。
本当…こうゆうのに疎いよね…。
小さく息を吐き夜依の腕を軽く引っ張り膝の上に座らせる。
『!?な、なに?』
「嫌なの?」
僕の膝の上で横向きに座っている夜依の顔をじっと見つめる。
夜依は昔から人とのスキンシップに苦手だった。
『っお前、私がこうゆうのが苦手だと知っていてやっているだろ…。』
「さぁね。」
喉の奥で小さく笑う。
今夜依は僕の腕の中にいる。このままずっと抱きしめていて離したくない。
だけど、まだ、駄目なんだ。
力を入れていた腕を夜依の身体から解いて身体を離す。
「明日も早いからもう寝ようか。」
『あ、あぁ。そうだな。』
寝室に向かう雲雀の後を追うように席を立つとある気配に気が付き足を止める。
先に歩いていた雲雀は後ろの人物が歩みを止めたのに気付き後ろを振り返った。
「夜依?」
『……………先に寝ていろ雲雀。』
「!」
『安心しろ、出て行くわけじゃないよ。…リボーンに呼ばれただけだから。』
最初は疑っていたがリボーンの名を出した途端、信用したのか小さく息を吐き何故かこちらに来る。
私の目の前まで来ると目を合わせて。
「早く帰ってくること。…じゃないと家に入れないから。」
『それは手厳しいな、』
小さく笑うと眉間に皺を寄せたまま口を曲げているの雲雀を見て、その姿に昔の面影を見た。
五年前も、そうやって私が一人で出掛ける時は眉間に皺を寄せ口はヘの字に曲げていたんだよね。
懐かしいその光景に自然と雲雀の頭を撫でていた。前は目線にあった雲雀の頭を撫でていたが今では背が伸びた為、腕を上げている状態…。
「……もう子供じゃないんだけど。」
ムッスゥと不機嫌な顔。しかし頭にある手を退かそうとはせずそのまんまだから嫌ではないんだろう。
『そうか、それは悪かったね。』
頭を撫でていた手をそっと退かす。
『じゃあ出掛けてくる。すぐに戻るから。』
「……夜依。」
ん?と振り返ると頬に柔らかい感触が触れる。
『……。』
「クスッ…行ってらっしゃい?」
呆然と立ち尽くしている私を見て妖艶に笑む雲雀…。
『い、行って…くる。』
愛用のコートを羽織り、そのまま家を後にした。
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(びっくりした…)
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