38.二人目。
「タワケがぁッ!!!」
スリッパに変身したレオンがツナの手に渡り雲雀の頭部を叩く。
それはもう素晴らしい音で…。
夜依はツナがヒバリに一撃を入れた事に表情にこそ出さないが内心ではかなり驚いていた。
『(あの雲雀に…一撃入れるとは……これが…10代目候補とされた沢田綱吉…。)』
死ぬ気の沢田に力一杯頭を叩かれて軽く脳震盪を起こしたのだろうか、雲雀の身体がフラ、フラ…と揺れる。
そして揺れが止まったと同時に溢れ出す殺気。
『(プライドが人一倍高い奴だ。隙を作ってしまい相手の攻撃を許してしまった事にキレてるな。)』
「ねぇ…」
「殺していい?」
「そこまでだ。」
トンファーを構える雲雀にリボーンが終止符を打つ。
戦いを止められた事にその人物を見る。そこには窓際にいるリボーンと夜依の姿。
雲雀は仲よさ気に並んでいる二人の姿に、眉間に皺を寄せる。
「君が何者かは知らないけど僕は今イラついているんだ。それに君、さっきから夜依の隣に居るよね……。」
「(!こいつ…夜依の事を名前で呼んでるのか…。さっき、夜依は偶然ここを通り掛かっただけだと言っていたが…ヒバリとは知り合いなのか?)」
「横になって待っててくれる?」
『!まっ……』
―ガキィンッ
止めようと一歩前に踏み出すがそれよりも早く雲雀はリボーンに襲い掛かった。
赤ん坊だろうが容赦なくトンファーを振り降ろす。
――しかし、その攻撃はリボーンの武器によって軽々と止められる。
衰えていない、リボーンの力。
雲雀は自分の攻撃を軽々と受け止めた赤ん坊に目を見開く。
が、それもすぐに楽しそうに口角を吊り上げて変わる。
まるで、新しい標的や獲物を見つけたかのように……。
「ワォ…すばらしいね君。」
さっきから夜依の隣にいたこの赤ん坊。
ひたしげに彼女の名を呼んでいた。
それに胸の辺りがもやもやとしてあの赤ん坊を咬み殺してやろうと思ったが自分の攻撃を片手で軽々と止めた…。
……僕の攻撃を受け止めたのは君で二人目だ。
しかも赤ん坊…。
おもしろい…。
「勝負したいな。」
「また今度な。」
そう言うと片手に爆弾を持ちニヤリと笑うリボーン。
「!!」
『!雲雀ッ!!!』
爆発音と一緒にリボーンや沢田達の気配が遠ざかっていくのと同時に雲雀の腕を引いて爆風から守る。
ちっ、リボーンめ……余計な事ばかりしてくれるな…
後少し引くのが遅ければ私や雲雀、ましてや沢田達とて無事ではすまないだろうに……。
危険な賭け事ばかりする。
「………夜依。」
『ん?あ、あぁすまない。』
腕を掴んだまま窓の外を睨み付けていた。
雲雀の顔を見ると何処か浮かない顔をしている。
『雲雀?』
「………失望した?」
『は?』
「…………あんな草食動物に一撃入れられた僕に…。」
さっきの事か。
浮かない顔の雲雀に手を伸ばし、沢田に殴られた頬に優しく触れる。
『馬鹿だね。失望なんかする訳ないよ。寧ろ、お前を鍛え直す修行のしがいがある。』
「……!そう…。」
雲雀は添えられた手の上に自分の手を重ねた。
暖かい、夜依の手。
「夜依…」
『?』
今だに思い詰めた顔をしている雲雀に夜依は顔を傾げる。
何か言いたげに口を開けるが…
「………いや、なんでもない。」
『そうか?…私は少し行く所があるから。』
そう言うと夜依はすぐ戻る。と残して此処を去った…。
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