31.桜の人と委員長。
委員長に言われた「桜の人」で思い出した。
あれは、俺が調度風紀副委員長を任されて間もない日の事。
桜が咲く季節。
そして新しい生徒が並盛に入学してくる季節。
それは春。
その日は委員長に桜並木に行って人を近付けないようにしてくるようにと任務付けられて他の奴らを連れて追い払っていた。
一通り追い払った後に委員長に報告するために俺は委員長を求めて桜並木を歩いていた。
「委員長…何処にいるんだ?」
誰もいない桜並木を歩いて行くと立派な桜木が目に映る。
多分この場所で一番立派な桜だろう。
見惚れているとその桜木の下には桜と違った黒い存在。
「!(あれは…)」
桜の下の黒い存在。
それは我等が慕うべき存在の雲雀恭弥がいた。
声を掛けようと口を開ける…が、
!委員長のあんな表情………初めて見た…
あの太くて立派な桜を見詰めている委員長の表情は、何処か悲しげに見えた…。
まるで、あの桜を通り超して誰かを想っているかのように…
「……さっきから何?」
「!」
ぼっーとしていたのか委員長がこちらを向いていた事に気が付かなかった。
「さっきからじっとこっち見て…喧嘩売ってるの?咬み殺すよ」
「!す、すみません!!」
殺気の含まれた瞳に身体が揺らぐ。
頭を下げればやる気が失せたのか俺から視線を外してまた桜を見る委員長。
やはり表情は悲しげに。
思うよりも先に俺は口を開いていた。
「委員長、この桜に、何かあるのですか?」
「…!」
ばっと外された視線がまた俺を映す。
それと同時にしまった、と思った。
あの委員長に意見をするなど言語道断…!
サッと顔色を青ざめていてももう遅い。
委員長は不快な顔をしてトンファーを振り上げていた。
「っ…!!」
咬み殺される!と覚悟を決めるが一行に痛みは来ない……
「……?」
目を開けると目の前で寸止めされた白く光る銀色の棒。
何故、咬み殺されなかったんだ?と不思議に思っていると、
「いいよ。教えてあげる…。君は弱い草食動物の中でもマシな方だからね。」
そう言いながら出されたトンファーを見詰め始める。
「……かれこれ四年かな、此処で人を待っている。」
サァアア…と風が吹き桜の花びらが散る。
落ちてきた花びらを手の平に乗せて見る委員長。
「待ち人…ですか?」
「………」
委員長が四年とゆう月日、ここで待ち続けているとゆう…。
一体その人と委員長とはどのようなご関係だ?
「その人は…御親族で?」
「違う。」
「え…では……」
「僕に、トンファーの戦い方を教えてくれた人だよ。」
手の平に乗った花びらが風に乗って委員長の手から離れてゆく。
「てことはその人、いや、お方と申しますと………い…委員長のお師匠様ですか!?」
「直接的に言うとそうだね。」
それから委員長は話は終わりだとゆうように口を開くことは無かった。
委員長はこの五年、毎年春になるとあの桜の下にいた。それは委員長の待ち人であるお師匠様を待ち続けての事。
そのお方が今俺の目の前にいる…!
てことは、ついに委員長が待ち続けていたお師匠様が帰ってらっしゃったんですね委員長!!!
初めて委員長の悲しげな表情を見た時、痛々しい委員長の姿に俺は驚いていた。
桜を見てはまるで捨てられた猫のような表情…。
委員長にとってこのお方は絶対的な存在なのだろう。
委員長が#ame1#さんの襟元を直しているその表情は……あの日見た悲しげな表情ではなく、
凄く安心し、嬉しそうな穏やかな表情だった。
委員長のその表情を初めて見て驚いた俺だが、この二人にはこれが自然で当たり前な事なんだと感じた。
委員長、闇市さんが委員長の側に帰って来て……良かったですね。委員長が嬉しいなら部下の俺としても喜ばしい事です!
「なにニヤニヤしながら見てるの…気味悪い…」
「いぇ、あ。委員長…待ち人が帰ってらして、良かったですね。」
「!」
『?なにを二人で訳の分からん事を話ている?』
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